中古車戦線異状あり! “フツーのクルマ”がなぜ高い?
2022.02.28 デイリーコラム6年落ちのホンダですら
世界的な原材料価格の高騰により、住宅の建材から牛丼、カップ麺にいたるまで値上げが相次ぎ、深刻なインフレの懸念、いや「ハイパーインフレ発生」への不安すら高まっていることは、いまさらご説明するまでもないだろう。
そして今、その良しあしや好き嫌いはさておき、「とにかく価格的に手ごろである」という点こそがコアバリューだった中古車にも、インフレの波は押し寄せつつある。このところの中古車価格が、けっこう高いのだ。
「知ってるよ。アメリカの25年ルールの関係でR34型『スカイラインGT-R』が3000万円とか、そういう話でしょ?」とおっしゃる方もいるかもしれないが、私が言っているのはそうではない。ごくフツーのミニバンやら軽自動車やらの中古車相場も、妙に上がっているのだ。
具体的には――あくまで一例にすぎないが――現行型の「ホンダ・フリード」である。
決してマニアックで超高品質なクルマというわけではないが、何かと“ちょうどいいミニバン”として普通に人気が高い、ホンダ・フリードの標準グレードである「G Honda SENSING」。そのFF車の登場初年度(2016年)の新車価格は210万~212万1600円だったので、1年に10%ずつ普通に値下がりしていくと仮定した場合の中古車価格は2022年現在、おおむね110万円前後になっているはずだ。
しかし2022年2月中旬の時点で、走行5万km台の2016年式ホンダ・フリードG Honda SENSINGの中古車価格は139万~188万円。ボリュームゾーンは150万~160万円付近といったところだ。決してバカ高いわけではないが、「6年落ちの5ナンバーミニバンなんて、100万円ちょいも出せば買えるでしょ?」と思ったら大間違いの相場状況になっているのだ。
ごく普通の中古車の相場が妙に上がっている原因は、要するに「需要は増えているのに供給量は増えてないというか、むしろ減少しているから」だ。
ご存じのとおりCOVID-19のさまざまな影響により新車の納期が大幅に長期化したことと、いわゆる巣ごもり需要に類するニーズにより、即納が可能な中古車の人気は高まった。しかしながら「COVID-19を遠因とする新車販売の落ち込み→下取り数の減少→タマ数減少」と「だが中古車の輸出は堅調」という状況が重なったことで、中古車の国内市場への供給がやや逼迫(ひっぱく)してしまったのだ。そしてそのために、ごくごく普通な、例えば、ホンダ・フリードG Honda SENSINGの相場が上がってしまったのだ。
“国内のタマ”が減っている
供給量の減少に関する具体的なデータを例示しよう。
日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会がそれぞれ2022年1月に発表した統計によれば、2021年の中古車登録・届け出台数は前年比2.0%減で、2年連続の前年割れ。2021年12月の単月実績も前年同月比7.3%減で、6カ月連続の前年割れとなった。
日本自動車輸入組合(JAIA)によれば、2021年の「輸入中古車登録台数」も前年比3.1%減で、7年ぶりに減少に転じている。
そして中古車オークションの最大手であるユー・エス・エスのデータによれば、2021年12月の中古車出品台数は前年同月比3.4%減の20万台にとどまったいっぽう、オートオークションでの成約単価は21.1%高となり、19カ月連続で前年同月実績を上回る結果となった。
このほか、国際自動車流通協議会が財務省貿易統計をもとにまとめた「2021年の日本からの中古車輸出台数」は前年比15.3%増とのこと。……こういった各種状況では、つまり「供給減」「輸出増」「需要増」という3つの要因が見事に重なれば、R34型スカイラインGT-Rのようなモノではない「ごく普通な車種」の中古車相場が上がるのも、当然すぎるほど当然の帰結なのだ。
問題は「この高値傾向がいつまで続くのか?」ということと、「続くどころか“フツーの中古車のハイパーインフレ”が起きてしまうのではないか?」ということだろうか。
それについての答えは、筆者にはわからない。答えが知りたい人は、筆者ではなく“先生”と呼ばれるような方々に尋ねていただきたい。まぁそういった先生方も未来を正確に予測できるわけでもなかろうが、筆者の見解よりは何倍もマシであろう。
筆者のごとき凡人にできることといえば、COVID-19の一刻も早い世界的な収束と、正常な自動車流通の回復を祈りつつ、「今、手元にあるクルマ」と「今、買えるクルマ」とを、静かに深く愛するのみである。
(文=玉川ニコ/写真=荒川正幸、webCG/編集=関 顕也)

玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。
-
BMWの新世代BEV「i3」の姿からエンジン搭載の次期「3シリーズ」を予想するNEW 2026.4.30 「iX3」に続き、完全な電気自動車として登場した新型「i3」。BMWはノイエクラッセをプロジェクトの御旗に電動化を推進しているが、同社の伝統たる内燃機関搭載車「3シリーズ」のゆくえやいかに。 i3の成り立ちからその姿を予想する。
-
「シビック タイプR」は入手困難 北米生産の「インテグラ タイプS」はその需要を満たせるか? 2026.4.29 ホンダが北米生産の「アキュラ・インテグラ タイプS」の国内導入を発表した。エンジンなどのスペックから、それが「シビック タイプR」にほど近いクルマであることがうかがえる。果たしてタイプSは入手困難なタイプRの代替になるのだろうか。
-
頓挫してしまった次世代EV「アフィーラ」は、本来どうあるべきだったのか? 2026.4.27 ホンダの電動化戦略見直しに伴い、ソニー・ホンダの次世代EV「アフィーラ」の開発・販売も凍結されてしまった。その成功には、何が足りなかったのか? アフィーラプロジェクトの頓挫から今後のEVのあるべき姿を考える。
-
軽油で行こう! いま狙い目の中古ディーゼル車はこれだ! 2026.4.24 燃料代が高騰している今、そのコストが抑えられるディーゼル車を選択してはどうだろう? 今回は、意外にお得な価格で買える、クルマ好きも納得の“狙い目ディーゼル車”をピックアップしてみよう。
-
MPVの新たなベンチマークか? メルセデス・ベンツの新型電動ミニバン「VLE」を分析する 2026.4.23 BEV専用のモジュール式プラットフォーム「VAN.EA」を初採用したメルセデス・ベンツの電動ミニバン「VLE」が2026年3月に発表された。日本導入が期待され、700kmの一充電走行距離をうたう最新MPVの特徴と開発の狙いを探る。
-
NEW
第959回:「うすらデカいフィアット」がもたらしてくれたもの
2026.4.30マッキナ あらモーダ!11年にわたりモデルライフを重ねてきた、フィアットのCセグメント車「ティーポ」が、ついに生産終了に……。知る人ぞ知る一台の終売の報を受け、イタリア在住の大矢アキオが、“ちょっと大きなフィアット”の歴史を振り返り、かつての愛車の思い出を語る。 -
NEW
BMWの新世代BEV「i3」の姿からエンジン搭載の次期「3シリーズ」を予想する
2026.4.30デイリーコラム「iX3」に続き、完全な電気自動車として登場した新型「i3」。BMWはノイエクラッセをプロジェクトの御旗に電動化を推進しているが、同社の伝統たる内燃機関搭載車「3シリーズ」のゆくえやいかに。 i3の成り立ちからその姿を予想する。 -
ディフェンダー110オクタP635(4WD/8AT)【試乗記】
2026.4.29試乗記「ディフェンダー」シリーズの旗艦「オクタ」が2026年モデルへとアップデート。メカニズム面での変更はごくわずかのようだが、その速さと快適さは相変わらず圧倒的で、それはオンロードでもオフロードでも変わらない。300km余りをドライブした印象をリポートする。 -
第110回:新型BMW i3(前編) ―BEV版「3シリーズ」のデザインはなぜ「ノイエクラッセ」から変節したのか?―
2026.4.29カーデザイン曼荼羅いよいよ登場した新型「BMW i3」。スポーツセダンのベンチマーク「3シリーズ」がついに電気自動車となったわけだが、そのデザインにはどんな見どころがあるのか? ショーカー「ビジョン ノイエクラッセ」から様変わりした理由とは? カーデザインの識者と考えた。 -
「シビック タイプR」は入手困難 北米生産の「インテグラ タイプS」はその需要を満たせるか?
2026.4.29デイリーコラムホンダが北米生産の「アキュラ・インテグラ タイプS」の国内導入を発表した。エンジンなどのスペックから、それが「シビック タイプR」にほど近いクルマであることがうかがえる。果たしてタイプSは入手困難なタイプRの代替になるのだろうか。 -
クルマの開発で「コストをかけるところ」と「割り切るところ」はどのように決まるのか?
2026.4.28あの多田哲哉のクルマQ&A車両開発において、予算配分は「顧客に最も満足してもらえるクルマ」をつくるための最重要事項である。では、それはメーカー内で、どんなプロセスで決まるのか? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。

































