GASGAS SM700(6MT)/ES700(6MT)
全開あるのみ! 2022.05.15 試乗記 トライアルやエンデューロなど、ハードなオフロード専用バイクをリリースしてきたGASGAS(ガスガス)。その初となるストリートモデル「SM700」「ES700」では、どんな走りが楽しめるのか? 同ブランドの母国スペインで確かめた。足まわりでキャラ分け
GASGASというブランドは、バイク乗りでもあまりなじみがないのではないだろうか。実はスペインの名門で、設立は1985年と歴史はそう長くないが、トライアルやエンデューロなど主にオフロード界で実績を残してきた。2019年からはKTMファミリーの一員となり、新たな体制でニューモデル開発を強化している。ちなみにGASGASとは「アクセル全開!」みたいな意味だとか。元気いっぱいなネーミングだ。
KTMファミリーの一員というのが、新生GASGASを知るうえでのキモになる。KTMはご存じダカールラリー18連覇を誇るオフロード界の巨人。そして今、グループ傘下にある3つのブランド「KTM」「ハスクバーナ」「GASGAS」を束ねることで、いわゆるプラットフォームの共有化によって開発スピードを加速させている。その証拠に、2020年のダカールではハスクがトップに迫る2位となり、直近の2022年にはなんとGASGASがダカールラリー初優勝を飾るなど、早くも世界トップクラスで戦える実力を見せつけている。
そして今回、地元スペインで“GASGAS初の”ストリートモデルが発表された。SM700とES700である。この2台はエンジンと車体を共有する、いわば双子の兄弟車。SMはスーパーモタードでESはエンデューロスポーツの位置づけだ。
エンジンは、排気量692.7ccの水冷4ストローク単気筒OHC 4バルブで、最高出力75PS(55kW)と、単気筒エンジンとしては超強力。車体はラリーマシンの流れをくむ軽量な鋼管トレリスフレームにWP製前後サスペンションとブレンボ製ブレーキを備えるなど本格的で、電子デバイスも2種類のライドモードとコーナリングABS&トラクションコントロールに加え、スリッパークラッチも装備するなど最新スペックを誇る。
異なるのは主に足まわりで、SM700はオンロード向きに前後17インチのキャストホイールにハイグリップタイヤを履くのに対し、ES700は同じWPのサスペンションでもオフロード寄りの設定。前21インチ/後ろ18インチのワイヤスポークホイールに本格的なオフロード走行に対応したブロックタイヤが標準装備されるなど明確にキャラクター分けされている。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
スーパースポーツ顔負けの俊足モタード
まずは、オンロードに軸足を置いたSM700からリポートしたい。
スペイン国内では、当たり前だがGASGASの人気が高い。試乗会用に真っ赤な「GASGAS」ロゴ入りパーカーを着ていると、こちらに気づいた若者たちが両手を高く上げてサムアップをしてくれた。海外、とりわけラテン系の国ではこうした熱い歓迎を受けることが多い。バイクを仕事とするバイク好きにとってはうれしい限りだ。オフ車ベースということで、またがってみるとシート高はかなり高めだが、車体がスリムなので見た目ほどに足つきは悪くない。自分の身長(179cm)では、足をついて軽くヒザが曲がる感じだ。
エンジンは単気筒らしい鼓動にあふれているが、現代のマシンらしく高回転域も1万rpm近くまでストレスなく伸びていく。足元が一般的なオンロードモデルと同じ17インチのキャストホイールなので、ハンドリングは軽く俊敏。ひとことで表現すれば、「軽くてスリムな足長ネイキッドバイク」といった感じだ。シフトタッチも節度感があってスムーズだし、アップ&ダウン対応のクイックシフターのおかげで街なかでの頻繁なギアチェンジも楽々こなせる。スイッチひとつで切り替わるライドモードも簡単に使えて楽しい。特にモード2(スーパーモトモード)では出力特性がよりスポーティーになり、リア側のABSが解除されるなど玄人好みの味つけにできる。
高速道路も走ったが、欧州レベルの速度レンジでも安定したスタビリティーで、ガチッとした剛性感からは単なるオフ車ベースでないことが分かる。ワインディングロードでは車重150kgを切る軽さとビッグシングルの瞬発力を生かしてスーパースポーツにも後塵(こうじん)を浴びせる走りを見せつけてくれるし、アトラクションとして参加したショートサーキットでは手だれのテストライダーがコーナーの進入から立ち上がりまで華麗なスライドを披露していた。
こう書くと、過激すぎる印象を持つかもしれないが、普通に乗れば実に素直で乗りやすいバイクでもある。ハンドル切れ角も十分あってUターンもこなせるし、大排気量ゆえに低中速トルクにもゆとりがあるため街乗りも苦にならない。唯一の弱点は、この手のモデルに共通するシートの高さだけだろう。ただ、それも含めてカッコ良く乗りこなすのがビッグモタードに乗る醍醐味(だいごみ)ではないだろうか。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
軽量トレールと冒険ツアラーの“いいとこ取り”
一方、オフロード寄りにつくられたES700は、車体がより大柄で車高も高く、まさにラリーマシンのようだ。低中速トルクと瞬発力に優れるエンジンと、がっちりとした鋼管トレリスフレーム、ストリートモデルとしては最大級のストローク量を持つ前後サスペンションにより、どんな難関も突破できると思える抜群の安定性を持っている。
今回の海外試乗でもGASGASが本拠を構えるジローナ近郊の山岳路に引っ張っていかれたが、普通だったら尻込みしてしまうようなガレ場やフロントをとられそうな砂地、ホイールが漬かりそうな渡河セクションでも、マシンに任せてスロットルを開けていけば難なくクリアできてしまう。まるで自分がうまくなったかと錯覚するほどだ。これは巨大で重いアドベンチャーツアラーや軽くてもパワーのない250ccトレールには到底まねできないことだろう。その意味でES700は、両方の“いいとこ取り”ともいえるのだ。
それでいて、新世代のLC4エンジン(KTM伝統の水冷単気筒ユニット)はスムーズで極低速から粘るし高回転までよく回る。特に低い速度域を使うことが多いオフロードマシンではこの低速域での扱いやすさが大事なのだが、例えば足場の悪い斜面をゆっくり登るときや林道のタイトコーナーなどでも、ES700は半クラをほぼ使わずにクリアできた気がする。従来型の同系エンジンを知っている身としては、このあたりの煮詰めはECUのプログラムも含め進化を実感した部分だ。
ともあれ、ES700はストリートモデルなので、ブロックタイヤではあるがオンロードでの使用に適したグリップと剛性が与えられているし、レーサーとは違ってゆとりのあるライポジやしなやかな乗り味のサスペンションなども公道での走りに適した設定になっている。きっと、高速道路と林道をつないだ冒険ツーリングでも楽しい時間を約束してくれるはずだ。
(文=佐川健太郎/写真=GASGAS、佐川健太郎/編集=関 顕也)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
GASGAS SM700
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:1476mm
シート高:898mm
重量:148.5kg
エンジン:692.7cc 水冷4ストローク単気筒OHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:75PS(55kW)/8000rpm
最大トルク:73.5N・m(7.5kgf・m)/6500rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:158万円(※国内における発売時の予定価格)
拡大 |
GASGAS ES700
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:1506mm
シート高:935mm
重量:147.5kg
エンジン:692.7cc 水冷4ストローク単気筒OHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:75PS(55kW)/8000rpm
最大トルク:73.5N・m(7.5kgf・m)/6500rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:158万円(※国内における発売時の予定価格)

佐川 健太郎(ケニー佐川)
モーターサイクルジャーナリスト。広告出版会社、雑誌編集者を経て現在は二輪専門誌やウェブメディアで活躍。そのかたわら、ライディングスクールの講師を務めるなど安全運転普及にも注力する。国内外でのニューモデル試乗のほか、メーカーやディーラーのアドバイザーとしても活動中。(株)モト・マニアックス代表。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。
-
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】 2026.6.3 「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。
-
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】 2026.6.2 かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
NEW
ホンダ・インサイト(FWD)【試乗記】
2026.6.5試乗記「ホンダ・インサイト」が電気自動車(BEV)として復活! ……というよりは中国工場製BEVにその名が与えられて日本にやってきた。さまざまな事情により、国内で販売されるのはわずか3000台のみ。日本人は“限定”に弱いとされるが、果たしてこの場合はどうか。 -
NEW
KTM 990 RC R(6MT)
2026.6.5JAIA輸入二輪車試乗会2026今年も開催された「JAIA輸入二輪車試乗会」より、魅惑のバイクを一挙紹介! 先陣を切るのは、この4月に発売されたばかりの「KTM 990 RC R」だ。オーストリアの雄が放つ最新鋭のスーパースポーツは、意外や“速さ”以外にも見どころの多い一台だった。 -
NEW
空冷の「スポーツスター」が復活!? ハーレーダビッドソンの定番商品はどんなバイクとなるのか
2026.6.5デイリーコラムハーレーダビッドソンが、一度は廃止した空冷の「スポーツスター」の復活を発表! 伝統の一台はなぜ絶版の憂き目にあい、そしてよみがえることとなったのか? ファンに愛される定番車種を刷新する難しさと、新型に課せられた使命、そして課題を考察した。 -
第290回:商用バンで砂漠を行く親子が向かうのは天国か地獄か 『シラート』
2026.6.4読んでますカー、観てますカー失踪した娘を探して親子はモロッコの砂漠へ。砂漠で開催されていたレイブパーティーが最高潮に達した頃、軍隊がやってきて中止させられる。親子が乗るFFの商用バンは次のパーティー会場にたどり着けるのか……。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(前編)
2026.6.4あの多田哲哉の自動車放談ひさびさに日本市場に戻ってきた、ホンダを代表するSUV「CR-V」。最新世代の仕上がりを、トヨタの車両開発者だった多田哲哉さんはどう評価する? まずは、ワインディングロードを走らせた第一印象から。 -
第964回:フィアットグッズのコレクターから学ぶ人生訓
2026.6.4マッキナ あらモーダ!イタリア在住の大矢アキオが、トリノで著名なフィアットグッズのコレクターを取材。若き日の苦労を経て大成した人物が語る、人生で大切なものとは? フィアットやイタリアの歴史を物語る、貴重なコレクションの数々とともに紹介する。
















