【F1 2022】カナダGP続報:フェルスタッペン、サインツJr.の猛攻をしのいでリード拡大
2022.06.20 自動車ニュース![]() |
2022年6月19日、カナダはモントリオールのサーキット・ジル・ビルヌーブで行われたF1世界選手権第9戦カナダGP。2度のバーチャルセーフティーカー、そしてレース終盤のセーフティーカーが、最後の緊迫した優勝争いをもたらした。
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“ポーポシング”解消に向けて
前戦アゼルバイジャンGPでは、ポーポシング(バウンシング)に苦しめられたルイス・ハミルトンがレース後に背中の痛みを訴え、また多くのドライバーからもマシンの激しい上下動が体に与える影響について懸念の声が上がったことで、FIA(国際自動車連盟)も調査に乗り出した。
今季40年ぶりにグラウンド・エフェクト・カーが復活したことで、程度の差こそあれ、各陣営ともポーポシングと呼ばれるマシンの上下動に頭を悩ませることになった。フロア下で大きなダンフォースを発生させるグラウンド・エフェクトの副産物であるこの現象の仕組みは、直線で速度が上がるとマシンの後ろ側を中心に車高が沈み込み、そしてフロアと路面が近づきすぎて空気の流れが滞ると、一瞬ダウンフォースが抜け車高が上がるというもの。こうした一連の動きが“跳ねる挙動”として現れるわけだ。
この問題を解消するひとつの方法は「車高を上げること」だが、そうするとダウンフォースも減少しパフォーマンスが下がるため、跳ねても速いフェラーリなど、大半のチームが許容するなかでシーズンが進展してきた。
特にひどいポーポシングと格闘してきたメルセデスによれば、ポーポシングについては第6戦スペインGPで持ち込んだアップグレードで解消への感触をつかんだというが、次のモナコGP、そしてアゼルバイジャンGPでは、路面の凹凸でマシンの挙動が安定しないメカニカルな「バウンシング」に手を焼いたという。車高を落とし、足まわりを硬くし、さらにコースがバンピーならば、突き上げがいっそう激しくなるのは想像に難くないだろう。
FIAは、まず技術指令というかたちで、フロア下のプランクやスキッドの摩耗具合などを調べ、その後対策を検討するとしているが、規則でこれらの現象を抑えることには懐疑的な意見も出ている。またシーズン途中にルール変更となれば、それがそれぞれの有利・不利につながる可能性もある。極めて政治的な駆け引きも繰り広げられるとなれば、早々に決着をみるということはないだろう。
コース上でのアクシデントを念頭に置いた安全性は年々向上してきたが、中長期的なドライバーへの健康への影響も大事な点ではある。慎重な議論を重ねたうえでの、適切なアクションが求められるのは言うまでもない。
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雨の予選、最前列にフェルスタッペン&アロンソ
新型コロナウイルスの感染拡大により2年連続で中止となっていたカナダGPが久々に復活。雨の予選では、滑りやすいコンディションに加え、フェラーリのシャルル・ルクレールがパワーユニット交換のペナルティーで降格、またレッドブルのセルジオ・ペレスがQ2中に痛恨のコースアウトで13位となったこともあり、上位グリッドには意外なドライバーやチームが並んだ。
出走150戦目を迎えたレッドブルのマックス・フェルスタッペンが、今季2回目、通算15回目のポールポジションを獲得。予選2番手は、なんとアルピーヌのフェルナンド・アロンソで、翌月に41歳になる2冠王者の大ベテランが、2012年ドイツGP以来となる最前列につけた。
フェラーリのカルロス・サインツJr.は3位、メルセデスのハミルトンは今季最高の4位につけた。3列目にはハースの2台が名を連ね、ケビン・マグヌッセン5位、ミック・シューマッハーはキャリアベストの6位。アルピーヌのエステバン・オコン7位、終盤ドライタイヤでのアタックが失敗に終わったメルセデスのジョージ・ラッセルは8位だった。そしてマクラーレンのダニエル・リカルド9位、そしてルーキーのジョウ・グアンユーが自身初Q3進出で10番グリッドからレースに臨んだ。
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フェルスタッペン&サインツJr.のトップ争い
快晴に恵まれた3年ぶりのカナダGP決勝は、2度のバーチャルセーフティーカー、そしてレース終盤のセーフティーカーにより、優勝を争う2台の間でタイヤ戦略が分かれ、終盤の緊迫した戦いの下地をつくることとなった。
まずは70周レースのスタート。最前列の新旧王者のうちフェルスタッペンが順当にトップでターン1に入り、2位アロンソ、3位サインツJr.、4位ハミルトンらが続いた。4周目にサインツJr.がアロンソを抜き2位に上がると、ファステストラップを更新しながら3秒先の首位フェルスタッペンを追走した。
「レッドブル対フェラーリ」という今季の構図が早々にできあがった直後、10位を走っていたペレスがトラブルでスローダウンしリタイアしたことで最初のバーチャルセーフティーカー。これで上位陣ではフェルスタッペンとハミルトンがピットに飛び込み、ミディアムタイヤからハードに履き替えた。
これでトップに立ったのは、タイヤを替えなかったサインツJr.で、同じくコースにとどまったアロンソが2位、フェルスタッペンは3位に落ちた。ハミルトンは6位となるも、早々にオコンを抜き去り5位にポジションアップを果たし、また15周目にはフェルスタッペンがアロンソをオーバーテイクし2位に上がった。
19周目、シューマッハーのハースがコース脇に止まり、再びバーチャルセーフティーカー。これでサインツJr.らがタイヤ交換を済ませ、フェルスタッペンが首位、タイヤ未交換のアロンソが2位、サインツJr.3位、ハミルトンは4位となる。この時点でアロンソのマシンはエンジンにトラブルが生じており、程なくしてサインツJr.、ハミルトンにあっさりとかわされ、予選2位から最終的には7位でレースを終えることになった。
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セーフティーカー後、緊迫したマッチレースへ
レースは折り返しの35周目を迎え、1位フェルスタッペンと2位サインツJr.のギャップは8秒。フェルスタッペンは、サインツより11周多く走ったハードタイヤのグリップが失われていることを無線で伝えており、実際、40周目にはリードが6.5秒まで削られていた。
当初は1ストップが予想されていたが、44周目にフェルスタッペンが2度目のタイヤ交換で再びハードを装着すると、ハミルトン、ラッセルらも新しいハードを求めピットに入り、上位は2ストップが大勢を占めた。そして49周目、角田裕毅のアルファタウリがウォールに突っ込んだことでセーフティーカーが出ると、この機会にサインツJr.が2度目のタイヤ交換を済ませるのだった。
55周目にレースが再開すると、ラスト16周は1位フェルスタッペンと2位サインツJr.のマッチレースに。フェルスタッペンより6周ぶん新しいタイヤを履くサインツJr.は、レッドブルの真後ろにつけてチャンスをうかがうが、フェルスタッペンはストレートが速いマシン特性を生かして先行を許さない。結果、0.993秒という僅差でレッドブルがトップを守り切り、フェルスタッペンは今季6勝目、通算ではジム・クラークとニキ・ラウダを抜く歴代9位の26勝目を飾った。
サインツJr.は2位となり、惜しくも初優勝を逃した。しかし、僚友ルクレールの活躍の陰に隠れ、いまひとつ調子に乗れなかった今季の流れからすれば、今後の自信につながるリザルトとして評価したいところだろう。
自信回復といえば、3位でフィニッシュしたハミルトンも同じ。7回もタイトルを勝ち取ってきた彼がポディウムで満面の笑みを浮かべるのだから、メルセデスにとって、いかに2022年シーズンが苦戦続きなのかが分かるというものだ。
ドライバーズランキング2位のペレスが無得点、そして同3位のルクレールは、19番グリッドから5位入賞でダメージを最小化したものの、フェルスタッペンはペレスに対するリードを46点とし、ルクレールにはおよそ2勝ぶんの49点もの差をつけてしまった。フェルスタッペンのタイトル防衛を阻止するために、ライバルの奮起が期待される。
次の第10戦イギリスGP決勝は、7月3日に行われる。
(文=bg)