【F1 2022】フランスGP続報:フェルスタッペン独走優勝 ルクレールはミスに泣く
2022.07.25 自動車ニュース![]() |
2022年7月24日、フランスのサーキット・ポールリカールで行われたF1世界選手権第12戦フランスGP。熱波到来のヨーロッパ、暑い南仏での戦いは、レースリーダーの突如の脱落により優勝争いは興ざめとなったものの、苦戦を続けた王者の好走が光った。
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来季に向けたポーポシング/バウンシング対策
夏を迎え、来る2023年シーズンに向けたレギュレーション変更をにらんでパドックがざわついている。眼目は、グラウンド・エフェクト・カーならではの上下動として今季問題視されてきたポーポシング/バウンシング対策だ。
今季から導入されたグラウンド・エフェクト・カーでは、フロア下でダウンフォースを発生させるため、マシンのパフォーマンス向上のためには車高は低いほうが都合がいい。
ならばルールで車高を上げてしまえば、空力的なポーポシングも、フロアと路面が接触することで生まれる突き上げも起こらなくなるだろう。こうした考えをベースに、フロアのエッジを25mm上げること、ディフューザーの前端部分も持ち上げることが、先ごろのF1テクニカル・アドバイザリー・コミッティーで検討され、追って開かれるFIA(国際自動車連盟)の世界モータースポーツ評議会に出される予定となった。
またこれに先んじて、今年8月末の第14戦ベルギーGPからは、マシンの垂直方向の振動に規定(空力振動測定)を設け、その範囲を超える場合はチーム側に対策を求めることが決まっており、同時にルールのグレーゾーンを突く“フロアのたわみ”(フレキシブルフロア)問題を解消するための取り締まり強化も始まる。
バンピーなコースで多くのドライバーが上下動に苦しんだ第8戦アゼルバイジャンGPをピークに、ポーポシングの現象は鳴りを潜めているが、ドライバーの健康面や安全面での弊害を懸念するFIAは、中長期的に対策に取り組む姿勢を崩していない。
一方で、こうしたFIAの介入に反発するチームも出ている。今シーズン好調のフェラーリやレッドブル、アルファ・ロメオやハースといったチームにとっては、せっかく築いたアドバンテージをみすみす失うようなことにはしたくないし、また予算制限下で余計な開発コストをかけたくはないのだ。
夏を迎え、2023年型マシンの開発が進められているなか、ルールメーカーとチームのけん制が続いている。
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フェラーリの“作戦”成功、ルクレールがポール
気温30度、路面温度は50度を超えた酷暑のポールリカールでは、フェラーリ対レッドブルの熱い戦いが予選から繰り広げられた。
シケインで分断されたとはいえ、1.8kmもある「ミストラル・ストレート」攻略が重要とみたフェラーリは、パワーユニット交換で最後尾スタートが決まっていたカルロス・サインツJr.をQ3まで進出させ、僚友シャルル・ルクレールにスリップストリームを使わせる役割を与えた。
赤いマシンの見事に息の合った引っ張り合いもあり、ルクレールが第8戦アゼルバイジャンGP以来となる今季7回目、通算16回目のポールポジションを獲得。予選2位となったレッドブルのマックス・フェルスタッペンとの差は0.304秒だった。
3位にはセルジオ・ペレスがつけ、ルクレールの真後ろにはレッドブル包囲網が張られた。フェラーリ、レッドブルの2強に次ぐメルセデス勢は、出走300戦目を迎えたルイス・ハミルトンが今季ベストタイの4位、マクラーレンのランド・ノリスを間に挟み、ジョージ・ラッセルは6位だった。
アルピーヌのフェルナンド・アロンソ(7位)の後ろには、今季最高タイの8位につけたアルファタウリの角田裕毅。サインツJr.と、同じくパワーユニット交換で降格したハースのケビン・マグヌッセンに代わり、マクラーレンのダニエル・リカルド9番グリッド、アルピーヌのエステバン・オコンが10番グリッドに繰り上がった。
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首位快走のルクレール、痛恨のミスでクラッシュ&リタイア
決勝日も南仏は熱波に見舞われ、53周のレースは灼熱(しゃくねつ)の争いとなった。
ルクレールがスタートでトップを守ると、2位フェルスタッペン、3位に抜群の加速を見せたハミルトンが上がり、4位に落ちたペレスが続いた。オープニングラップでは、角田のアルファタウリがオコンのアルピーヌにはじき出されてしまい、角田は一気に最後尾まで脱落。しばし周回を重ねるもフロアにダメージを負っていたため、惜しくもリタイアせざるを得なかった。
フェルスタッペンは先頭のルクレールとのギャップを1秒前後にキープするが、双方タイヤをセーブしたいのは同じで、無理はできない。6周目を過ぎるとレッドブルがフェラーリの真後ろにつけ、しばし1秒以下で接近した状態が続くも、フェルスタッペンは抜けないと判断したか、ペースを緩めタイヤを温存することに切り替えた。
抜けなければ作戦で勝負に出ようと、レッドブルは16周目にフェルスタッペンをピットに入れ、ミディアムタイヤからハードに履き替えさせた。先んじてタイヤを交換して前に出る「オーバーカット」を狙ったのだ。
これにフェラーリがどう反応するか、注目が集まった直後の18周目に、首位ルクレールがリアを滑らせスピン&クラッシュ、タイヤウォールに突っ込んでリタイアを喫した。前戦オーストリアGPで3カ月ぶりの勝利を飾ったルクレールは、自らのミスで目の前にあった優勝=25点を取り損ね、落胆を隠さなかった。
これでセーフティーカーの出番となり、各陣営が一斉にタイヤ交換に踏み切った。1位フェルスタッペン、2位ハミルトン、3位ペレス、4位ラッセル、5位アロンソといったオーダーで21周目にレース再開すると、先頭のフェルスタッペンに敵は現れなかった。
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フェルスタッペン7勝目、メルセデスは2-3フィニッシュ
優勝争いがほぼ決着した状態となっては、その後ろの動きが気になるところ。2位ハミルトンまでは安泰だったが、3位は3人が絡む白熱した争いとなった。
まずペレスに挑んだのは、最後尾から追い上げてきていたサインツJr.だった。41周目に2台目のレッドブルを抜いて3位にまで上がるも、セーフティーカー中のピットインの際にアンセーフリリースをとられ、5秒のペナルティーとタイヤ交換のためにピットイン。サインツJr.は最終的に5位でゴールすることになった。
次にペレスを攻め立てたのはラッセル。激しいつばぜり合いでペレスが押し出されコースアウトするシーンも見られたが、なんとかレッドブルが3位をキープし続けていた。だが50周目、ジョウ・グアンユーのアルファ・ロメオがコース脇に止まったことでバーチャルセーフティーカーが出ると、この徐行明けの隙を突いてラッセルがオーバーテイクに成功。復調著しいメルセデスは、見事今季最高の2-3フィニッシュを飾ったのだった。
今季12戦して7勝目を記録したフェルスタッペンは、チャンピオンシップで2位ルクレールに63点ものリードを築き、またレッドブルは2位フェラーリに対して82点上回ることとなった。「もちろんこのリードは素晴らしいが、さまざまなことが起こり得るのだから集中を切らさないことだ」とはレース後のフェルスタッペンの弁。「一戦一戦でポイントを取り続けることが大事」と語るポイントリーダーは、着実にその言葉を実行に移している。
次の第13戦ハンガリーGP決勝は、7月31日に行われる。
(文=bg)