FF系「クラウン」の登場はトヨタ車の生態系にどんな影響を与えるのか?
2022.09.21 デイリーコラムクラウンの歴史が変わった
「FF系『クラウン』の登場は、トヨタ車の生態系にどんな影響を与えるのか? について述べよ」
webCG編集部も、ずいぶんと難しいお題を投げてきたものだ(笑)。ザッと状況を説明すると、先日発表された16代目の新型クラウン(のうち少なくとも最初に発売する「クロスオーバー」)は、脈々と受け継がれてきたエンジン縦置きの後輪駆動シャシーではなく、クラウンの歴史上初めてエンジンを横置きとするFF系プラットフォームでつくられた。これは確かに、クラウンの歴史を変える変革と言っていいのは間違いない。
ただし駆動方式はFFではなく全車とも後輪をモーターで駆動する電気式4WDなので、ニュアンスとしては「FRにこだわるBMWからFFベースの4WDとするアウディになった」くらいの感覚かもしれないけど。
拡大 |
トップの大転換で何が起きるのか
編集担当者は「トヨタのモデルラインナップに大変革が起きるかもしれません。同じGA-Kプラットフォームを使う『カムリ』は割を食うのでしょうか。もしくは希少な後輪駆動のサルーンとして残る『ミライ』の躍進があるのでしょうか?」と鼻息が荒い。
だが、好き勝手に予想させてもらうと「あんまり影響ないんじゃないかなぁ?」というのが筆者の見立てだ。
だって考えてみてほしい。クラウンを買っている人は、FRプラットフォームだからあえてクラウンを買っているというのだろうか。いやそうではないだろう。クラウンという、トヨタブランドの頂点に立つセダンだから買っているわけであって「FFベースならカムリでもいいじゃん!」とはなりそうもない。
逆にカムリを買っている人も車体サイズと居住性と価格のバランスからカムリを選んでいるわけであって「クラウンがFFベースになった? じゃあ次はカムリをやめてクラウンにしよう」とはならないだろう。
同様に「よーし、クラウンがFFベースになっちゃたから後輪駆動のミライを買っちゃうぞー!」なんていう人もいそうにない。つまり、何も変わらないのである。
拡大 |
きちんとセダンも残す周到ぶり
ただ、FFプラットフォーム化というよりは、コンベンショナルなセダン像からあまりにも離れた新型クラウンのスタイルに関しては受け入れられないと考える従来型クラウンオーナーも少なくないだろう。
しかしそれはトヨタだって織り込み済みで、だから新型はこれまで以上に海外に力を入れ、「(日本国内で販売減でも)グローバルでたくさん売れればいい」と狙っているのだ。クラウンのユーザー平均年齢はハイペースで高齢化が進み、それもあって需要もこれまでの路線を継承する限り先細りは否めなかった。そこで「ユーザー年齢層の上昇とともにクラウンブランドを消すわけにはいかない。だから世界に目を向けつつ若返りを図る」というのが、今回のフルモデルチェンジの狙いとみていい。
とはいえ、企業の役員車や公用車としてクラウンを指名するニーズも根強くあるのだから、そこはなんとかしないといけない。それをフォローする役割として用意されるのが今後登場する予定の「セダン」なのだろう。
筆者の気のせいでなければ、公開されたクラウン セダンの形は燃料電池車のミライによく似ている。シルエットだけでなくトランクリッドの仕切り線まで同じだ。燃料が水素なのかガソリンなのか、もしくは電気自動車なのかは分からないけれど、このクラウン セダンのプラットフォームはミライと同じ、つまり従来型クラウンや「レクサスLS」とも同じ「GA-L」と考えるのが自然だ。つまり後輪駆動である。どうしても後輪駆動でなければ、フォーマルなセダンでなければ……というユーザーはこれを選べばいい。
拡大 |
駆動方式なんてささいなこと!?
「トヨタのモデルラインナップで選べるRWD車は『センチュリー』『ミライ』『スープラ』『GR86』そして『クラウン セダン』……ある意味で特殊なクルマばかりになります」と本コラムの編集担当はいうが、それはそれで結構なことではないかと思う。後輪駆動の希少性が高まるのは悪いことではない。「より特別なクルマ」としてキャラづけていけばいいのだから。
それにしても、クラウンがクロスオーバーSUV中心のラインナップとなる日が来るなんて夢にも思わなかった。
それに比べたら“いま振り返れば”ではあるが先日まで売っていた15代目が登場した際の「大胆な変化」なんて大したことがなかったし、実は「前輪駆動だ、後輪駆動だ」という議論も大して意味がないように思う。
だって、「BMW 3シリーズ」を選ぶ人も「メルセデス・ベンツCクラス」に乗る人も、大多数は「後輪駆動ベースだから」といって買っているわけではないでしょ?
(文=工藤貴宏/写真=トヨタ自動車/編集=藤沢 勝)
拡大 |

工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
-
北米産の800万円級SUV「トヨタ・ハイランダー」「日産ムラーノ」「ホンダ・パスポート」で一番“買い”なのはどれか?NEW 2026.9.4 特例により国内導入されることになった北米生産のジャパニーズSUVは、3車種ともにサイズと価格帯が接近している。では、そのなかで最も“買い”なのは? それぞれの仕様を見比べてみた。
-
ホンダがコンセプトモデル「アキュラ・ネクセラ ビジョン」を発表 次世代デザインを読み解く 2026.9.3 本田技研工業の米国現地法人アメリカン・ホンダモーターが、アキュラブランドの次世代デザインを示すというコンセプトモデル「ネクセラ ビジョン」を初公開した。バタフライドアを採用するこのスポーツカーは、次世代アキュラの何を表現しているのか。
-
復活の決め手はこっくりさん!? 新生「三菱パジェロ」誕生の経緯とその狙い 2026.9.2 5年間の沈黙を経て、ついに登場した新型「三菱パジェロ」。スリーダイヤモンドが誇る荒野のフラッグシップは、いかにして復活を遂げたのか? 開発の経緯や内外装デザインの詳細、パワートレインに見るクルマの“狙い”をリポートする。
-
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの? 2026.8.31 自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。
-
酷評もされたBEVのフェラーリが4000万ドル!? 「ルーチェ」の初物に誰が、なぜ大金を出したのか? 2026.8.28 フェラーリ初の電気自動車として話題になった「ルーチェ」。その特別仕様の生産0号車が、米国内のカーオークションにおいて4000万ドル(約64億円)という衝撃価格で落札された。その背景について、事情に詳しい西川 淳がリポートする。
-
NEW
ホンダがコンセプトモデル「アキュラ・ネクセラ ビジョン」を発表 次世代デザインを読み解く
2026.9.3デイリーコラム本田技研工業の米国現地法人アメリカン・ホンダモーターが、アキュラブランドの次世代デザインを示すというコンセプトモデル「ネクセラ ビジョン」を初公開した。バタフライドアを採用するこのスポーツカーは、次世代アキュラの何を表現しているのか。 -
NEW
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(後編)
2026.9.3あの多田哲哉の自動車放談ワインディングロードで新型「BMW iX3」のステアリングを握った多田哲哉さんは、その走りに感心した様子。どんなところが優れているのか、トヨタのエンジニアの視点で語ってもらおう。 -
新型「三菱パジェロ」の外装・内装を写真でチェックする
2026.9.2画像・写真5年間のブランクを経て、三菱のフラッグシップSUV「パジェロ」がついに復活! 「グランドカリスマ -泰然自若-」をコンセプトにデザインされた本格クロスカントリーモデルは、どのような姿をしているのか? 内外装の詳細を、写真で紹介する。 -
復活の決め手はこっくりさん!? 新生「三菱パジェロ」誕生の経緯とその狙い
2026.9.2デイリーコラム5年間の沈黙を経て、ついに登場した新型「三菱パジェロ」。スリーダイヤモンドが誇る荒野のフラッグシップは、いかにして復活を遂げたのか? 開発の経緯や内外装デザインの詳細、パワートレインに見るクルマの“狙い”をリポートする。 -
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。

































