【F1 2022】第21戦サンパウロGP続報:ラッセル&メルセデス初優勝、レッドブルに垂れ込めた“暗雲”
2022.11.14 自動車ニュース![]() |
2022年11月13日、ブラジルはサンパウロにあるアウトドローモ・ホセ・カルロス・パーチェで行われたF1世界選手権第21戦サンパウロGP。残り2戦となって復調著しいメルセデスがシーズン初勝利を飾った一方で、チャンピオンチームのレッドブルは後味の悪いレースを終えた。
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“金曜予選”でマグヌッセン&ハースが初ポール
今年3回目にして最後のスプリントの舞台はブラジル。過去2回のスプリントを制したマックス・フェルスタッペンは「より多くのポイントを取れるレースを前にすれば、スプリントではリスクをおかすことはできない」と、本番レースの3分の1の距離で争われる短期決戦を否定的にみているようだが、来シーズンは6回に増える予定で、つまりは通常より忙しくなる週末が倍になるということである。
たった1回のプラクティスの後に行われた金曜日の予選は雨がらみ。予選開始前の降水でハーフウエットだった路面は徐々に乾き始めていたものの、トップ10グリッドを決めるQ3では再び天候が崩れる予報だった。ドライで走れるセッション冒頭に真っ先にコースインし、ミスのないドライビングで最速タイムをたたき出したのはハースのケビン・マグヌッセン。その直後、メルセデスのジョージ・ラッセルがコースオフ、グラベルにつかまり赤旗が出ると、いよいよ雨脚は強まり始め、到底タイムアップなど望めないコンディションとなってしまった。
これでマグヌッセンが自身140戦目にして初ポールポジション、2016年からF1で戦っているハースにとっては、143戦して初めての予選P1を獲得となった。運も味方につけたとはいえ、ハースのピットガレージが歓喜に沸いたのは言うまでもない。
ラップをうまくまとめられなかったレッドブルのフェルスタッペンは2位となり、ラッセルは3位、マクラーレンのランド・ノリス4位、フェラーリのカルロス・サインツJr.は5位だった。その後ろにはアルピーヌの2台が続き、エステバン・オコン6位、フェルナンド・アロンソ7位。メルセデスのルイス・ハミルトン8位、レッドブルのセルジオ・ペレス9位、そしてQ3でただひとり雨用インターミディエイトタイヤに賭けるも失敗したフェラーリのシャルル・ルクレールがノータイムで10位となった。
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今季3度目のスプリント、フェルスタッペンを抜いたラッセルが制す
距離にして100km、周回数にして24周のスプリントでは、タイヤ選択が勝敗を分けるファクターとなった。
マグヌッセンのリードは3周しかもたず、フェルスタッペンにトップを奪われると、翌周にはラッセルにも抜かれ3位に後退。最終的に8位でチェッカードフラッグを受け、1点を手にして終わる。順位は落としたが、チャンピオンシップでアルファタウリと1点差というハースにしっかりポイントを献上できたのだから、及第点といっていい結果ではあった。
フェルスタッペンのスプリント3連勝を阻止したのはラッセル。レッドブルがミディアムタイヤで苦戦する一方、ほとんどのドライバーが選んだソフトタイヤで快調に飛ばしていたメルセデスの若手は、残り10周で首位を奪うとスプリントの1位に与えられる8点を追加した。
2位7点を獲得したのはフェラーリのサインツJr.、3位で6点を追加したのはハミルトン。フェルスタッペンは、サインツJr.と接触しウイングを壊しながら4位でゴールした。ペレス5位、ルクレール6位、ノリス7位、そしてマグヌッセン8位までが得点。アストンマーティンのセバスチャン・ベッテルは9位、アルファタウリのピエール・ガスリーは10位だった。
なおサインツJr.はパワーユニット交換による5グリッド降格で7番グリッドに落ちることになり、メルセデスの2台がフロントローからスタートすることとなった。
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ラッセル首位キープ、フェルスタッペンとハミルトンは接触
最前列に復調著しいメルセデスの2台、2列目に今季王者のレッドブル勢と、昨季激しいタイトル争奪戦を繰り広げたトップ2チームが上位グリッドを分け合った今回。真っ向勝負が期待されたレースでは、シルバーアローの優勢が際立つことになった。
71周レースの幕開けは、1位ラッセル、2位ハミルトン、3位フェルスタッペン、4位ペレスらが順当にスタートを切るも、ダニエル・リカルドのマクラーレンがマグヌッセンのハースに追突し両者がクラッシュ、早々にセーフティーカーの出番が回ってきた。
7周目に再開すると、ターン1で2位ハミルトンに並びかけたフェルスタッペンが続くコーナーで接触、マシンを壊したレッドブルは緊急ピットインを余儀なくされ、またハミルトンも8位までダウンした。さらにノリスとルクレールも接触し、ノリスは4位をキープするも、バリアーに当たったルクレールは大きく後退。フェルスタッペンとノリスには5秒ペナルティーが科されることになった。
トップのラッセルを追うのは2位ペレスと3位サインツJr.。このなかで最初にピットへ飛び込んだのはサインツJr.で、18周目にミディアムタイヤからソフトに交換すると、遅れを取り戻したハミルトンが3位に上がり、メルセデスがレッドブルをサンドイッチするかたちとなる。このトップ3は同じソフトタイヤを履きながら、しかしペレスは徐々にラッセルから離され、20周を過ぎると3秒のギャップができていた。
レッドブルは24周目にペレスをピットに呼び、ソフトからミディアムへ交換。翌周にはラッセルもこの動きにならい、ハミルトンは30周目までタイヤ交換を伸ばした。最初のピットストップを終え、1位ラッセル、4.7秒差で2位ペレス、そこから2.9秒離れて3位サインツJr.、そして4位ハミルトン。「タイヤはどう?」と無線で聞かれたラッセルは「いいよ」と答えるほど順調に周回を重ね、ペレスとのギャップを広げていくのだった。
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113人目のF1ウィナー誕生、レッドブルの“後味の悪さ”
2度目のタイヤ交換は、やはりフェラーリが口火を切り、37周目にサインツJr.がソフトからミディアムへ交換。3位に上がったハミルトンはペレスとの差をどんどん詰め始め、45周目のターン1で2位の座を奪うと、48周目にペレス、翌周ハミルトン、続いてラッセルと2度目のタイヤ交換に踏み切った。
これで順位は、1位ラッセル、2位サインツJr.、3位ハミルトン、4位ペレス。52周目にノリスのマクラーレンがコース脇にストップしたことでバーチャルセーフティーカー、後にセーフティーカーが出ると、チャンス到来とばかりにフェラーリはサインツJr.にソフトを与え、ペレスの後ろで戻した。
これで旗色が悪くなったのはペレスだ。温まりの悪いミディアムタイヤを履き続けなければならず、60周目にリスタートすると、ソフトのサインツJr.の猛攻を受けることになる。サインツJr.は63周目に前に出てペレスを表彰台から引きずり下ろし、またその後ろにいたルクレールもレッドブルをかわし、これでラッセル、ハミルトンのメルセデス1-2の後ろにフェラーリが3-4で続くオーダーとなり、このままレースは幕を閉じるのだった。
81戦目にして初優勝、史上113人目のF1ウィナーとなった24歳のラッセルは、「言葉もない」と喜びをかみしめていた。弱小チーム、ウィリアムズでの3年間の修行期間を経てメルセデスに移籍した今シーズン。ニューマシンの出遅れに足を引っ張られたものの、7冠王者のチームメイトを出し抜いてメルセデスに今季初勝利を献上することができ、今後の自信につながる1勝となった。また、3戦連続で2位となったハミルトンも満面の笑みを浮かべ、チームメイトの勝利とチームの躍進を素直に褒めたたえていた。
快勝に歓喜するメルセデス勢の陰では、レッドブルが後味の悪いレースを終えていた。終盤にペレスはアロンソにも抜かれ、速いソフトタイヤでポジションを回復していた僚友フェルスタッペンにはチームオーダーで道を譲り、7位まで落ちていた。チームはフェルスタッペンにアロンソ追撃を任せたのだが、アロンソの攻略が難しくなったとみるや、ペレスに再び6位を返すようフェルスタッペンに指示。しかしチャンピオンはこれに従わず、6位のままゴールしてしまったのだ。フェルスタッペンは「(ポジションを返さなかったのは)自分なりの理由がある」とだけ語っているが、おかげでペレスはドライバーズチャンピオンシップでルクレールと同点となり、勝利数でランキング2位の座を失ってしまったのだから始末が悪い。
今季散々苦しんだチームが復活し、勝ち続けてきたチームに暗雲が垂れ込めた、そんなレースだった。
いよいよ2022年シーズンは1レースを残すのみ。第22戦アブダビGP決勝は、1週間後の11月20日に行われる。
(文=bg)