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キーワードは「インド」と「EV」「中国・韓国」 激動の2022年を“数字”で振り返る

2023.02.17 デイリーコラム 森口 将之

韓国の現代自動車グループが世界第3位に

毎年1月は、前の年の統計がいろいろと出てくることで話題が盛り上がる。自動車業界ではメーカー別や国別の販売台数が出され、この1月にもメディアを賑(にぎ)わせた。

トヨタは子会社のダイハツや日野を含めたグループ全体の世界販売台数が、前年比0.1%減の1048万台だったと発表。一方、2016年から4年間にわたってトヨタを抑え、トップに君臨していたフォルクスワーゲン(VW)グループは、約7%減の826万台だったというアナウンスがあった。

どちらも世界的な半導体不足の影響を受けたが、トヨタが2021年に続き、コロナ禍前の水準をキープしているのに対し、VWは2020年以降、下落が止まらない。トヨタの最大のマーケットは北米で、続いて中国、日本、日・中を除くアジアとなっているのに対し、VWは中国、西欧、北米、南米という順。中国のゼロコロナ政策に加えて、おひざ元の欧州におけるロシアのウクライナ侵攻が影響したのだろう。

また上位3社の顔触れで2021年と違うのは、ヒョンデとキアからなる現代自動車グループが、3%増の685万台を販売して3位に入ったことだ。それまで3位だったルノー・日産・三菱アライアンスは、前年比20%減の615万台となり、4位に転落した。ルノーはフランスに次ぐマーケットだったロシアから撤退したこと、日産は中国からの部品供給が滞ったことが、大きな理由といわれている。

ヒョンデの新型EV「アイオニック6」。2022年のグローバル販売台数で、韓国の現代自動車グループは世界第3位にランクアップ。EVマーケットでも攻勢を強めている。
ヒョンデの新型EV「アイオニック6」。2022年のグローバル販売台数で、韓国の現代自動車グループは世界第3位にランクアップ。EVマーケットでも攻勢を強めている。拡大

伸長を続ける「EV」と「インド」

また2022年は電気自動車(EV)の世界シェアが10%に達したことも話題になった。販売台数は780万台で、2021年から68%も増加したという。なかでも伸びが著しいのが中国で、新車販売に占めるシェアは20%。次いで欧州の11%となる。米国はこの2地域には後れをとっているものの、それでも5.8%に拡大しており、日本の1.7%とは大差がある。

メーカー別のEV販売台数を見ると、首位は131万台を売ったテスラだが、比亜迪(BYD)や上海汽車集団(SAIC)が猛追している。BYDの91万台は前年比で言えば3倍以上だったそうで、2023年はテスラを抜いてトップになると予想する人もいる。また欧州のEVシフトの主役的存在であるVWのEV販売は、前年比26%増となる57万台で世界4位だが、こちらも47%増の36万台を記録した現代グループに追われるかたちだ。

次に、国や地域別にマーケットの様子を見てみよう。ここで大きな話題となっているのがインドで、自動車販売台数は25.7%も増えて473万台となり、前年比5.6%減だった日本(420万台)を50万台以上も上回って第3位となった。2023年に中国を抜いて人口世界一になることが確実といわれる国に、本格的なモータリゼーションが到来したということだろうか。

インドといえば、スズキの子会社マルチ・スズキが強いことで知られているが、そのシェアは縮小しつつあり、現在は4割強という状況。逆に伸びているのが2位の現代グループ、3・4位の地元タタとマヒンドラで、トヨタは5番目のメーカーになる。

EVマーケットで急成長を続ける中国のBYD。2023年にはいよいよ日本でも同社のEVが販売されることとなる。
EVマーケットで急成長を続ける中国のBYD。2023年にはいよいよ日本でも同社のEVが販売されることとなる。拡大

古い見方では実情も未来も見えてこない

こうして見ていくと、メーカー別では韓国と中国の企業、エネルギー別では電気、マーケット別ではインドに伸び代がありそうだという感じがする。

だからだろう。トヨタは次期社長の佐藤恒治氏が先日の新体制発表会見で「EV(トヨタはBEVと表現)を重視する」と説明し、ルノー・日産・三菱は、アライアンス再構築の記者会見で「インド市場に注力する」と発言した。

メディアは今も欧州の動きを取り上げ、「トヨタ対VW」の構図を好むが、それ以外の動向にも目を向けるべきだ。またいろいろな理由をつけてEVを否定する一部のユーザーの声にメーカーが従ってしまうと、マーケットをどんどん失うことになるだろう。

とはいえ、EVなら何千万台つくっても環境に優しいというわけではないし、地方における中心市街地の衰退など、自動車に過度に依存した社会の弊害は、環境負荷の増大以外にもある。成熟した社会で極端に自動車の数が多いのは、健全なことではない。絶対数よりシェアを重視し、表層的な数字だけでなく対人口比や分布なども考慮する見方のほうが、現代社会の実情にふさわしいのではないだろうか。

(文=森口将之/写真=newspress、BYD、日産自動車/編集=堀田剛資)

提携関係の再構築に乗り出したルノー・日産・三菱アライアンスは、同じ記者会見でインド事業に注力することも表明した。インドはマーケットとしても生産拠点としても、これから大きく伸長する可能性が高いのだ。
提携関係の再構築に乗り出したルノー・日産・三菱アライアンスは、同じ記者会見でインド事業に注力することも表明した。インドはマーケットとしても生産拠点としても、これから大きく伸長する可能性が高いのだ。拡大
森口 将之

森口 将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車は「シトロエンGS」と「ルノー・アヴァンタイム」。

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