トヨタが今後の企業方針を説明 新たな電気自動車のプロジェクトも発表

2023.04.07 自動車ニュース webCG 編集部
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トヨタの新体制方針説明会で登壇した3人。中央が佐藤恒治社長、写真向かって右が中嶋裕樹副社長、同左が宮崎洋一副社長。
トヨタの新体制方針説明会で登壇した3人。中央が佐藤恒治社長、写真向かって右が中嶋裕樹副社長、同左が宮崎洋一副社長。拡大

トヨタ自動車は2023年4月7日、新たな経営陣が掲げるビジョンを説明する、新体制方針説明会を開催した。

2023年4月1日に就任したばかりの佐藤社長。基本的には「もっといいクルマをつくろうよ」を標語にしていた豊田章男前社長の方針を踏襲しつつ、モビリティーカンパニーへの転換を図るとした。
2023年4月1日に就任したばかりの佐藤社長。基本的には「もっといいクルマをつくろうよ」を標語にしていた豊田章男前社長の方針を踏襲しつつ、モビリティーカンパニーへの転換を図るとした。拡大
カーボンニュートラルの実現へ向けては、多様なソリューションを通して脱炭素化を追求する、これまでの方針を受け継ぐとしている。
カーボンニュートラルの実現へ向けては、多様なソリューションを通して脱炭素化を追求する、これまでの方針を受け継ぐとしている。拡大
長らく車両の開発に携わってきた中嶋裕樹副社長。“電動化”“知能化”“多様化”の3つのアプローチを通してクルマを進化させると述べた。
長らく車両の開発に携わってきた中嶋裕樹副社長。“電動化”“知能化”“多様化”の3つのアプローチを通してクルマを進化させると述べた。拡大
2026年の投入を予定している、次世代BEVについても言及。長い航続距離に加え、デザイン性や動的質感など、クルマ本来の魅力も併せ持つ同車を、中嶋副社長は「クルマ屋が創(つく)るBEV」と表した。
2026年の投入を予定している、次世代BEVについても言及。長い航続距離に加え、デザイン性や動的質感など、クルマ本来の魅力も併せ持つ同車を、中嶋副社長は「クルマ屋が創(つく)るBEV」と表した。拡大
アジアなど海外での営業に従事してきた宮崎洋一副社長は、これまでの地域軸経営の成果を強調。同時に、地域課題に貢献する取り組みについても言及した。
アジアなど海外での営業に従事してきた宮崎洋一副社長は、これまでの地域軸経営の成果を強調。同時に、地域課題に貢献する取り組みについても言及した。拡大
クロージングに登壇した佐藤社長。2人の副社長のプレゼンテーションを踏まえ、「グローバルかつフルラインナップのトヨタだからこそ目指せるモビリティーの未来がある」「クルマの未来を変えていくことこそ、モビリティーカンパニーを目指す私たちのテーマ」と述べた。
クロージングに登壇した佐藤社長。2人の副社長のプレゼンテーションを踏まえ、「グローバルかつフルラインナップのトヨタだからこそ目指せるモビリティーの未来がある」「クルマの未来を変えていくことこそ、モビリティーカンパニーを目指す私たちのテーマ」と述べた。拡大
プレゼンテーション後の質疑応答では、欧州委員会による「2035年以降のエンジン車廃止」の撤回についても言及。それを現実的な決定であると評しつつも、エンジン車継続の前提であるe-fuelの実用性については、「生産のプロセス、エネルギー変換効率の点で課題がある」とコメント。現実的な選択肢とするためにも、さらなる技術開発が必要だろうと述べた。
プレゼンテーション後の質疑応答では、欧州委員会による「2035年以降のエンジン車廃止」の撤回についても言及。それを現実的な決定であると評しつつも、エンジン車継続の前提であるe-fuelの実用性については、「生産のプロセス、エネルギー変換効率の点で課題がある」とコメント。現実的な選択肢とするためにも、さらなる技術開発が必要だろうと述べた。拡大
写真向かって左から宮崎洋一副社長、佐藤恒治社長、中嶋裕樹副社長。
写真向かって左から宮崎洋一副社長、佐藤恒治社長、中嶋裕樹副社長。拡大

基本姿勢は「継承と進化」

トヨタでは、14年にわたり経営を指揮してきた豊田章男社長が2023年4月1日付で退任し、代わってレクサスやGAZOO Racingの事業に携わってきた佐藤恒治氏が社長に就任(参照)。今回の説明会では佐藤社長に加え、新たに副社長に就任した中嶋裕樹氏、宮崎洋一氏が壇上に立った。

会ではまず佐藤社長が登壇し、今後のトヨタの方針を「継承と進化」と表現。これまで同様、よりよいクルマを世に送り出すことを一丁目一番地の使命としつつ、「クルマの未来を変える必要がある」とも述べ、新しい取り組みへの前向きな姿勢を強調した。

2050年のカーボンニュートラル実現へ向けた施策は、基本的にこれまでと同様で、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、燃料電池車(FCEV)、水素自動車、カーボンニュートラル燃料と、多様なソリューションを通して環境負荷の低減を図る「マルチパスウェイ」の姿勢を踏襲。新車一台が発生するWell to Wheel(走行時だけでなく燃料等の生成時にも発生する量も含んだ二酸化炭素排出量の指標)での二酸化炭素(CO2)排出量を、対2019年比で2030年までに33%以上、2035年までに50%以上低減させるという。

さらに、車両ソフトウエアプラットフォーム「Arene(アリーン)」の実装や、それにともなうコネクティビティーの強化、豊富な車種バリエーションと「C+walk」などといった新しいモビリティーの導入により、「クルマの価値の拡張」「モビリティーの拡張」「社会システム化」を実現。既存の自動車メーカーの枠を超えた、モビリティーカンパニーへの脱皮を果たすとした。

10モデルのBEVを投入し、年間販売150万台を目指す

続いて登壇した中嶋副社長は、製品の観点から今後のトヨタの指針を説明。車両電動化の領域では、2026年までに新たに10モデルのBEVを投入し、年間150万台の販売を目指すとした。さらに同年には、魅力的な走りとデザイン、既存のモデルの2倍の一充電走行距離を併せ持つ、新世代のBEVを投入すると発表。さらに、この新世代BEVの実現へ向けた専任組織の設立も明らかにされた。

この組織は一人のリーダーのもとに開発・生産・事業のすべてを統括するものとなっており、生産に際しては作業のオートメーション化を推し進めることで工程を2分の1に短縮。サプライヤーの協力のもとにグローバルで最適な部品調達も実現するという。これにより、次世代BEVでは開発原単価および内製投資を、これまでの50%に抑えるとしている。

一方、HEVやPHEVについても開発を継続。後者については200kmの電動走行距離を実現することで、「プラクティカルなBEV」として訴求すると述べた。さらにFCEVについては、商用車を軸に量産を実現。各事業者とも協力し、航続距離と積載効率の観点からFCEVが好適とされる中・大型トラックなどから普及を進めていくと述べた。このほかにも、他社とも協業してe-fuelの研究開発を進め、新車の約20倍もの数が出回っている既納のクルマにおいても、カーボンニュートラルを実現するとしている。

またソフトウエアの進化に代表されるクルマの知能化の領域では、車載のミドルウエア「Arene OS(アリーンOS)」の開発を推進。先進安全装備やマルチメディアのアップデートだけでなく、走る・曲がる・止まるといった動的質感のカスタマイズまで可能にしたいと述べた。さらにコネクティビティーを強化し、配送トラックのリアルタイムマネジメントや、駐車場や電動車用充電器といったインフラとの連係も実現。システムの社会実装ならびにそこでの課題検出と、テストコースやウーブンシティーでの実証を繰り返すことで、社会の知能化も促進すると説明した。

これらの施策に加え、マイクロモビリティーや“空飛ぶ自動車”を含むモビリティーの多用化、およびカーボンニュートラル燃料や水素といったエネルギーの多用化も追求。これら“電動化”“知能化”“多様化”の3つのアプローチにより、モビリティーの価値を広げていきたいと述べた。

社会問題の解決にも取り組むモビリティーカンパニーへ

続いて登壇した宮崎副社長は、まずはグローバルに展開される地域軸経営の成果について説明。販売台数の増加(2005年の726万台から2022年は956万台へ)だけでなく、TNGAの導入とも相まって収益能力も大幅に強化しており、「未来への投資をしながら稼げる体質」へと進化したという。

一方、今後についても上述の地域軸経営を継承し、マーケットに応じた好適な商品展開を重視するとしている。注目されるBEVの展開も同様で、先進国では「bZ」シリーズの性能強化とラインナップ拡充で対応。さらに米国では2025年に3列シートSUVを投入し、ノースカロライナのバッテリー工場も生産能力の増強を図るとした。一方、中国では既存の「bZ4X」「bZ3」に加え、2024年に2車種の現地開発モデルを追加。新興国ではBEVのピックアップトラックを年内にも生産開始するとともに、コンパクトカーのBEVも導入するとしている。

こうした製品の販売に加え、これまでのノウハウを生かして地域社会の課題解決にも積極的に参加。タイにおける、モビリティー(電動車)、データ(コネクテッド技術)、エネルギー(水素をはじめとする再生可能エネルギー)の各ソリューションを同時に提供するモビリティーコンセプトの取り組みを紹介し、日本のみならず海外でも、モビリティーカンパニーとしての施策が始まっていることを強調した。

(webCG)

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