【F1 2023】第9戦カナダGP続報:フェルスタッペン、セナに並ぶ記録でレッドブルに100勝目をプレゼント
2023.06.19 自動車ニュース![]() |
2023年6月18日(現地時間)、カナダはモントリオールのサーキット・ジル・ビルヌーブで行われたF1世界選手権第9戦カナダGP。レッドブル&マックス・フェルスタッペンが完勝する一方で、アストンマーティンとメルセデスがしのぎを削った。
![]() |
![]() |
メルセデス対アストンマーティン、第2勢力の戦い
空前のF1人気を背景に、マイアミGP、アメリカGP、ラスベガスGPと年間3レースも開催されるようになったアメリカだが、同じ北米で行われるカナダGPも長年愛されてきたレースである。1967年にモスポート・パークで初開催、1978年にモントリオールへと舞台を移してからは、アメリカGPが途絶えた1990年代を含めほぼ毎年のように開催されており、今年で52回目を数える。現行の契約も2029年まで残っており、F1カレンダーになくてはならないGPとして根付いている。
カナダの英雄ジル・ビルヌーブの名を冠した、セントローレンス川の人工島につくられた半公道のサーキットは、ストレートをヘアピンとシケインでつないだストップ・ゴーの特徴を有し、特にブレーキングと加速にたけたドライバーやマシンが強さを発揮することで知られる。
ここを得意とするのは、ミハエル・シューマッハーと並び最多7勝を誇り、デビューイヤーの2007年にはここで初ポール&初優勝を飾ったルイス・ハミルトンである。前戦スペインGPでは、大幅にアップデートされたマシンで2-3フィニッシュを遂げ復活ののろしを上げたメルセデス。今シーズン序盤は“伏兵”アストンマーティンの後塵(こうじん)を拝してきたものの、スペインでのダブル表彰台でコンストラクターズランキング2位にまで躍進しただけに、その勢いのままカナダでも表彰台を目指したいところだった。
今季唯一のカナダ人ドライバーであるランス・ストロールにも期待がかかった。同じアストンマーティンには5回ポディウムにのぼるフェルナンド・アロンソがいる一方、最高4位、ノーポイント3回と地味な結果しか残せていないストロール。2冠王者アロンソを倒すのは楽ではないが、常に上位につけコンスタントにポイントを稼いでいかないと、メルセデスほかライバルとの総力戦には勝てない。
コースのみならず開発競争にも後れをとりたくないアストンマーティンは、カナダにアグレッシブな改良を加えた「AMR23」を持ち込んだ。レッドブル全勝が続いてきた2023年シーズンは3分の1を終えようとしていたが、一強に食らいつかんとする第2勢力同士の争いは熱をおびてきた。
![]() |
雨の予選、フェルスタッペンが3戦連続ポール
雨絡みの予選は、最初のQ1でこそ小康状態を保っていた空模様が、Q2途中から雨脚が強まるという難しいコンディションのなか行われ、コース状況に翻弄(ほんろう)されたドライバーと、逆に味方につけたものとの違いがグリッド順位に反映された。
トップ10グリッドを決めるQ3は、マクラーレンのオスカー・ピアストリがウォールにヒットしたことで赤旗中断。再開後は既に天候が悪化しており、セッション冒頭の数分のうちにしっかりとタイムを出していたレッドブルのマックス・フェルスタッペンが3戦連続、今季5回目、通算25回目のポールポジション獲得に成功した。
2番手は、ハースのニコ・ヒュルケンベルグという番狂わせが起きたものの、赤旗で減速しなかった違反により3グリッド降格ペナルティーを受け5番グリッドにダウン。アストンマーティンのアロンソがフロントローにつき、3位ルイス・ハミルトン、4位ジョージ・ラッセルとメルセデス勢が後ろに並んだ。
アルピーヌのエステバン・オコン6位、マクラーレンのランド・ノリスは7位。フェラーリのカルロス・サインツJr.は8位だったものの他車を邪魔したとして3グリッド降格となり、マクラーレンのピアストリ、健闘したウィリアムズのアレクサンダー・アルボン、そしてフェラーリのシャルル・ルクレールがトップ10内からスタートすることとなった。
![]() |
![]() |
ハミルトンとアロンソの2位争い
決勝日はドライコンディション。一周4.3kmというコンパクトなコースを70周するレースは、フェルスタッペンが独走する一方、アロンソとハミルトンによる2位争いに注目が集まった。
スタートでトップをキープしたフェルスタッペンの後ろには、素晴らしい加速で2位に上がったハミルトンが続き、アロンソは3位に転落。4位ラッセル、5位オコン、6位ヒュルケンベルグといった順位でオープニングラップを終えた。
ハミルトンに先を越された3位アロンソだったが、アストンマーティンのエースはメルセデスに引き離されることなく、1秒以下で食らいついていた。さらに4位ラッセルも僅差でトップ3を追いかけていたのだが、12周目にドライビングをミスしウォールにヒット、セーフティーカーを呼び込んでしまった。
これを機に、首位フェルスタッペンをはじめ各車続々とピットへとなだれ込んだ。タイヤをミディアムからハードに交換したのは、1位フェルスタッペン、2位ハミルトン、3位アロンソまで。その後ろ、4位ルクレール、5位サインツJr.、6位セルジオ・ペレスと後方スタートだったドライバーは、このタイミングで交換せずに周回を続けた。予選で失敗したフェラーリ勢は、ここで順位を取り戻し、最終的にポディウム直下の4-5でフィニッシュすることになる。
17周目にレースが再開すると、フェルスタッペンはスタート後と同様に後続を引き離し、2位ハミルトンと3位アロンソは再び接近戦を繰り広げることになる。21周目、最終コーナー手前のストレートでアストンマーティンがメルセデスの横をすり抜け、アロンソが2位の座を奪還することに成功すると、2台のギャップは徐々に開き始めるのだった。
![]() |
![]() |
フェルスタッペン4連勝、レッドブルは記念すべき100勝目
41周目、3位に落ちたハミルトンが2度目のタイヤ交換に踏み切り、ハードからミディアムに交換すると、翌周には2位アロンソもピットに入り、こちらはハードを装着してコースに復帰。43周目にはフェルスタッペンもミディアムタイヤにスイッチした。
これで1位フェルスタッペン、4.5秒間隔を開け2位アロンソ、5.4秒ギャップで3位ハミルトンというトップ3のオーダー。その後ろには既にハードに換装していたフェラーリ勢が並び、4位ルクレール、5位サインツJr.、そして6位にペレスがつけていた。結果的にトップ6の順位はゴールまで変わらなかったが、レース終盤になるとハミルトンがペースを上げ1秒台にまで差を詰めるなど、最後まで第2勢力の争いは続いたのだった。
8戦して6勝、5月のマイアミGPから4連勝と破竹の勢いで勝利を重ねるフェルスタッペン。通算41勝目は、アイルトン・セナの勝利数に並ぶ歴代5位の記録だ。これでドライバーズランキング2位ペレスとの差は69点にまで拡大し、もはや誰も手が届きそうもないほどの大量リードを築いている。
さらにレッドブルは100勝目を飾ったことになり、こちらも5番目に成功したチームとして歴史に名を刻んでいる。加えて開幕から8連勝中であり、次も勝てば2019年のメルセデスを抜く記録、この先4連勝すれば、1988年にマクラーレンが打ち立てた11連勝を抜く計算になる。
こうしてチャンピオンシップを席巻しているフェルスタッペンだが、その後ろでは「全周にわたって予選アタックのように走った」と充足感を漂わせるアロンソと、「マシン開発は正しい方向に向かっている」と自信を深めるハミルトンの激しい攻防があった。レッドブルを除けば、今シーズンはなかなかシビアな戦いが繰り広げられているのである。
次はレッドブルの地元で行われる第10戦オーストリアGP、今季2度目のスプリントウイークだ。決勝は7月2日に行われる。
(文=bg)