ハーレーダビッドソンCVOストリートグライド(6MT)/CVOロードグライド(6MT)
巨竜、富士を舞う 2023.09.11 試乗記 ハーレーダビッドソンのなかでもハイエンドに位置するアメリカンクルーザー「CVOストリートグライド/CVOロードグライド」で、まさかの富士スピードウェイを疾走! コーナーを攻め込むことで見えてきた、モダンなパフォーマンスクルーザーの実力を報告する。職人の手になるハーレーのハイエンドモデル
突然だが、「グランド・アメリカン・ツーリング」をうたうハーレーダビッドソンの巨大なツアラーは、果たしてスポーツライドも可能なのだろうか?
2023年モデルのCVOストリートグライドとCVOロードグライドは、ハーレーダビッドソン史上最大となる1977ccに排気量がアップされ、トルクもパワーも増した新型エンジン「Milwaukee-Eight(ミルウォーキーエイト)VVT 121」を搭載している。
ベースとなるストリートグライド/ロードグライドは、ハーレーのなかでもいわゆる“ツーリング・ファミリー”にカテゴライズされる、ロングクルーズに適したモデルだ。さらに、今回の試乗車は“CVO(Custom Vehicle Operation)”の冠が付けられていることからもわかるように、クラフトマンシップを込めて一台ずつ手組みされる特別なモデルで、当然のこと生産台数も限られる。
そのような特別なマシンを、富士スピードウェイという日本屈指の高速サーキットでテストする機会を得た。
なんととっぴな話と思われそうだが、実はそうでもない。ロードグライドは米国で行われるツアラーによるロードレース「キング・オブ・ザ・バガーズ・レース(King of the Baggers Race)」のベースマシンとして活躍している。この巨大なマシンを、いかにスポーツライディングしているのか? 身長160cmで短腕短足の私だが、普段はロードレースをたしなんでいるので、レーシングレザースーツで張り切って確かめることにした。
フェアリングに見るキャラクターの違い
ところで、キング・オブ・ザ・バガーズ・レースの“バガー(Bagger)”とは何か。これは、フェアリングとバッグを備えたツアラーのカスタムモデルを指す。ストリートグライド/ロードグライドもそれにならったモデルだが、リアに備わるのはサドルバッグのみで、トップケースはない。ともに風洞実験から導き出された特徴的なデザインのフェアリングを備えており、そこからテールに向けて優美な流線形を描くフォルムが印象的だ。また、そのフェアリングもストリートグライドはヒストリックな「バットウイングフェアリング」、ロードグライドは現代的にアレンジされた「シャークノーズフェアリング」と、それぞれ異なるフロントマスクをまとっている。
異なるのはデザインだけではない。ストリートグライドはフェアリングがハンドルマウントで、ハンドルは低めのポジション。対してロードグライドは、フェアリングがフレームマウントでハンドルはやや高めのポジションとなっている。結果的に、これが両車のキャラクターを大きく分けていた。
身長160cmの私からすると、さすがに両車とも車体は大きく感じる。軽量化されたとはいえ車両重量はストリートグライドが380kg、ロードグライドが393kgで、普段せいぜい250kg程度のスポーツバイクに乗っている私にとって、これを乗りこなせるかは未知の領域だ。思ったとおり、やや軽いストリートグライドのほうが乗車してバイクを直立させる動作はやりやすかった。車重だけでなく、ロードグライドに比べてハンドル位置がやや低く、幅も若干スリムなので、力を入れやすいライディングポジションとなっているからだ。
サーキットでも想像以上に楽しめる
既に述べたとおり、エンジンはどちらも1977ccという乗用車並みの排気量を持つ新型水冷Vツインで、スペック情報によれば183N・m(約18.7kgf・m)という圧倒的なトルクを3500rpmで発生。さらに115HPの最高出力は5020rpmで発するという。
スロットルを開けたら即、強烈なトルクに襲われることを想定して慎重にコースインするが、すぐにそんな心配は無用なことが伝わってきた。エンジンの吹け上がりも、トランスミッションの入り方も、スロットルの入力に対するサスペンションの呼応も、すべてが洗練されていてスロットルワークにリニアに反応してくるのだ。
ならば、と遠慮なく回転を上げるが、すぐにエンジンから「ちょっと落ち着けよ」とさとすような反応が返ってきた。1気筒あたり約1リッターもあるビッグツインは、もともと鼓動感を楽しむエンジンなので、レブリミットが5500rpmあたりに設定されている。つまりサーキットでのスポーツライディングでは、常にエンジン回転が最大トルクと最大パワーの発生回転数を行ったり来たりしているような状態なのだ。
それでも、巨大な車体にビッグトルクをたたえたツアラーでスムーズにコーナリングを楽しめたのは、優れた出力特性を実現するエンジンチューニングと、緻密な足まわりの電子制御機能のおかげだろう。アンチロックブレーキシステム(ABS、C-ABS)に、エレクトロニックリンクドブレーキング(ELB、C-ELB)、トラクションコントロールシステム(TCS、C-TCS)、ドラッグトルクスリップ制御システム(DSCS、C-DSCS)……と、現代のモーターサイクルにおいて最高の機能がすべて網羅されたハーレーの「Rider Safety Enhancements(ライダー・セーフティー・エンハンスメンツ)」は、介入に気づかないくらいジェントルな作動だった。
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高速クルーズで実力を発揮する
せっかくのサーキット走行なので、少し強めにスポーツライドを仕掛けるも、グライド兄弟は実に穏やかに応答するのみ。思い切りよく車体を寝かし込んでも、少々乱暴にスロットルを開けても、手加減せずにブレーキをかけたとしても、「そんなことはお見通しだよ」とばかりに、実に穏やかで安定した挙動でライダーをなだめる。
それでいて、少しずつペースを上げていくと、おのおのの“顔つき”からくるハンドリングの違いが明確になっていった。ストリートグライドのほうが、より体重移動の入力を大きくかけて走るような、スポーティーなライディングを楽しめるのだ。いっぽうロードグライドでは、風の流れが巧みにフェアリングの外に流され、まるで上質なスポーツカーのごとく、静かにシートに腰を預け、素直なステアフィールのコーナリングを楽しめた。
バガー・レースをも征するグライドシリーズが持つスポーツ性能は、ここ数年で最高速度規制が引き上げられ、上限110km/h、120km/hの区間が増えている日本の高速道路でも感じられることだろう。古い“大陸横断車”のイメージで、グライドシリーズをバイク選びから避けているとしたら、実にもったいない。そんな印象を持ったサーキットでの試乗だった。
(文=小林ゆき/写真=ハーレーダビッドソン/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
ハーレーダビッドソンCVOストリートグライド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2410×--×--mm
ホイールベース:1625mm
シート高:715mm
重量:380kg
エンジン:1977cc水冷4ストローク V型2気筒OHV 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:115HP(86kW)/5020rpm
最大トルク:183N・m(18.7kgf・m)/3500rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:6.0リッター/100km(約16.7km/リッター、EU134/2014)
価格:549万7800円~621万2800円
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ハーレーダビッドソンCVOロードグライド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2410×--×--mm
ホイールベース:1625mm
シート高:720mm
重量:393kg
エンジン:1977cc水冷4ストローク V型2気筒OHV 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:115HP(86kW)/5020rpm
最大トルク:183N・m(18.7kgf・m)/3500rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:6.0リッター/100km(約16.7km/リッター、EU134/2014)
価格:549万7800円~621万2800円
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◆画像・写真:「ハーレーダビッドソンCVOストリートグライド/CVOロードグライド」発表会の会場から

小林 ゆき
専門誌への寄稿をはじめ、安全運転セミナーでの講習やYouTubeへの出演など、多方面で活躍するモーターサイクルジャーナリスト。ロングツーリングからロードレースまで守備範囲は広く、特にマン島TTレースの取材は1996年から続けるライフワークとなっている。
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