【F1 2023】第19戦アメリカGP続報:フェルスタッペンが通算50勝目、角田は初ファステストラップを記録
2023.10.23 自動車ニュース![]() |
2023年10月22日(現地時間)、アメリカはテキサス州オースティンのサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)で行われたF1世界選手権第19戦アメリカGP。6番グリッドから優勝したレッドブルのマックス・フェルスタッペンだったが、いつもの圧勝というわけにはいかなかった。
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2戦連続のスプリントウイーク、金曜予選ではルクレールがポール
残り5戦となった2023年シーズンは、アメリカ、メキシコ、ブラジルと続く怒涛(どとう)のトリプルヘッダーに新顔ラスベガスを加えた、アメリカ大陸縦断の4レースへ突入。さらにアメリカGPは前戦カタールGPから2戦連続となるスプリントウイークで、ブラジルGPでもスプリントが予定されている。F1サーカスも、最終戦アブダビGPに向けて最後の踏ん張りどころを迎えている。
今年で11回目となるCOTAを舞台としたアメリカGPでも、金曜日の1時間だけのプラクティス後に慌ただしく予選がスタート。すでに今季のタイトルを手中におさめているレッドブル&マックス・フェルスタッペンに加え、フェラーリ、マクラーレン、メルセデスによる激しいポールポジション争いが繰り広げられた。
予選Q3を最速で駆け抜けたのはシャルル・ルクレール。跳ね馬を巧みに操ったモナコ人ドライバーは、今季3回目、通算21回目のポールを獲得。スプリントウイークに限れば今年4回目のフロントローとなり、このフォーマットを得意としていることがうかがえた。
0.130秒差でマクラーレンのランド・ノリスが2位につけ、今季3回目の最前列スタート。2列目以降はメルセデスとフェラーリが交互に並び、フロアを改良したマシンに手応えを感じたルイス・ハミルトンが3位、カルロス・サインツJr.4位、ジョージ・ラッセルは5位につけた。
プラクティスでは1位だったフェルスタッペンは予選でつまずき、トラックリミット違反によりポールタイムを抹消され6位だった。ピエール・ガスリー7位、エステバン・オコン8位とアルピーヌ勢が続き、不調にあえぐレッドブルのセルジオ・ペレスは9位。そしてトップ10最後のグリッドに滑り込んだのは、マクラーレンのオスカー・ピアストリだった。
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フェルスタッペンがスプリント今季3勝目
明くる土曜日、スプリントのグリッドを決めるスプリント・シュートアウト(SS)では、フェルスタッペンが今季3回目の1位につけ、ルクレール2位、ハミルトン3位、ノリス4位、ピアストリ5位、サインツJr.6位、そしてペレス7位と続いた。8位だったラッセルが進路妨害による3グリッド降格で11位に落ちたことで、ウィリアムズのアルボンが8位、ガスリー9位、骨折から復帰したアルファタウリのダニエル・リカルドが10位に繰り上がった。
19周のスプリントが始まると、スタートでフェルスタッペンがルクレールに対しかなりディフェンシブなラインをとり、フェルスタッペンはトップを守ったもののルクレールは3位に落ち、2台がやり合う隙をついてハミルトンが2位に上がった。
結局トップ3のオーダーは変わらず、フェルスタッペンは9.465秒のリードを築き、今季スプリント3勝目、ポイント8点を追加した。意外にもスプリント未勝利のハミルトンがベストタイの2位、ルクレールは3位でこの短期決戦を終えた。
大勢がミディアムタイヤを選択したなかで、ソフトタイヤに賭けたサインツJr.は6番手スタートから4位にジャンプアップしたものの、周回を重ねるにつれてタイヤが厳しくなり結局6位に戻ってゴール。ノリス4位、ペレスは5位でチェッカードフラッグを受けた。
ガスリーは7位、ラッセルはコース外の走行でアドバンテージを得たとして5秒加算ペナルティーを受け8位でフィニッシュし、ここまでがスプリントでのポイントを獲得した。
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ノリスがトップ奪取、フェラーリはずるずると後退
ポールのルクレールはフェラーリでの100戦目、2番手ノリスと5番グリッドのラッセルにとってはF1出走100戦目の記念レース。それぞれのメモリアルウィンを成し遂げるには、3列目からスタートする王者フェルスタッペンを抑え切るという難しいタスクが課されていた。
56周レースのスタートでは、抜群の出だしを見せたノリスがトップ奪取に成功。ルクレールは2位に落ち、サインツJr.3位、ハミルトン4位、フェルスタッペンは5位でオープニングラップを終えた。
1位のノリスにとって、ペースが思わしくないフェラーリをスタートで出し抜いたことは大きく、5周して2.8秒のマージンを築いてしまう。一方で2-3位を走る赤い編隊は、黒いマシンのハミルトンの進撃を前に崩れ、ハミルトンは4周目に3位、6周目に2位へと駒を進めた。
フェルスタッペンもサインツJr.をオーバーテイクし、これで順位は1位ノリス、2位ハミルトン、3位ルクレール、4位フェルスタッペン、5位サインツJr.。11周目になるとフェルスタッペンはルクレールも抜き去り、ついにフェラーリは表彰台からも引きずり下ろされた。
2ストップが予想された今回、上位陣で最初にピットに飛び込んだのはフェルスタッペン。17周目にミディアムタイヤから再びミディアムを選択すると、翌周にはノリスがミディアムからハードに交換した。
フェルスタッペンはファステストラップを刻みながら、ノンストップで走る暫定首位のハミルトンとの差を縮めていった。21周目にようやくハミルトンがミディアムからハードに履き替えると、フェルスタッペンがメルセデスの前に出て2位へと浮上した。
6番グリッドから2位、ここまで順調にポジションを上げてきていたフェルスタッペンは、レースの早い段階からブレーキのトラブルに見舞われていた。無線で「ブレーキが昨日とは感じが違う」と伝えるチャンピオンは、それでもノリスとのギャップを少しずつ削り取り、ちょうどレースの折り返し地点である28周目にようやく1位の座まで上り詰めた。
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フェルスタッペン通算50勝目、ハミルトンは失格、角田は初ファステストラップ
チームとの無線で1ストップを匂わせていたノリスだったが、35周目に2回目のタイヤ交換に踏み切り、再びハードタイヤを装着。36周目にフェルスタッペンもハードに履き替えると、フェルスタッペンが首位、ノリス2位と順位変動はなかった。
しかし、パパイヤオレンジのマシンの後ろからは、黒い影がひたひたと迫ってきていた。39周目にハードからミディアムに交換した3位ハミルトンが猛追、49周目にはついにノリスをかわし2位へとポジションアップを果たした。この日のマクラーレンは、上昇した気温と路面温度の影響もあり、タイヤの性能劣化(デグラデーション)に苦しんでいたのだ。
2位に上がったハミルトンの勢いは止まらず、ブレーキに手を焼くトップのフェルスタッペンのテールが近づく。残り周回数からすれば、レッドブルの真後ろにつけたとしてもチャンピオンを抜くことは現実的ではなかったが、それでもフェルスタッペンが圧勝を飾るのをメルセデスが阻止したことは事実であった。
フェルスタッペンは、2.225秒のリードを保ち真っ先にチェッカードフラッグを受けた。今シーズン15勝目は、昨季の最終戦で自身が更新した年間最多勝記録に並ぶ記録。通算でいえば50回目の記念すべき勝利であり、ハミルトンの103勝、ミハエル・シューマッハーの91勝、セバスチャン・ベッテルの53勝、そしてアラン・プロストの51勝に次いで“オーバー50勝組”の仲間入りを果たしたことになる。またスプリントの8点とレースでの優勝分の25点を加え、今季のポイントを466点とし、自らが保持する年間最多ポイント記録を更新。2023年シーズンを数々のレコードで埋め尽くしている。
優勝こそできなかったものの、力走による2位に上々の手応えを感じていたハミルトンだったが、レース後に思わぬ番狂わせが起きる。ハミルトンと、6位のルクレールに失格が言い渡されたのだ。バンピーで知られるCOTAのコースで、路面とマシン下のスキッドパッド(プランクとも呼ばれる)が擦れてしまい、許容範囲を超えて減ってしまっていたのだ。
この結果、ノリスがシーズン5回目の2位に繰り上がり、サインツJr.は3位表彰台へ。さらにペレスは5位から4位となったばかりか、自身のドライバーズランキング2位の座を脅かしていたハミルトンが無得点に終わったことで、ポイント差を39点にまで開くことができた。
そして10位だったアルファタウリの角田裕毅は、この失格裁定により8位入賞を果たし、キャリア初のファステストラップを記録していたことで1レースで合計5点を獲得。コンストラクターズランキングで最下位に沈むアルファタウリは、1点でも多くポイントが欲しいところだったが、角田による値千金の5点追加で、ランキング9位のハースまで2点差に迫り、ビリからの脱出も夢ではなくなってきた。
悲喜こもごものテキサスをあとにしたF1は、すぐさま次のレースへ。次の第20戦メキシコGP決勝は、10月29日に行われる。
(文=bg)