【F1 2022】アブダビGP続報:フェルスタッペン面目躍如の勝利、ルクレールは雪辱を果たす
2022.11.21 自動車ニュース![]() |
2022年11月20日、アブダビのヤス・マリーナ・サーキットで行われたF1世界選手権第22戦(最終戦)アブダビGP。王者は王者らしい勝ちっぷりでシーズンを締めくくり、連戦連敗のライバルは最後に名誉を挽回する好走を見せた。
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レッドブル“チームオーダー騒動”の後、ベッテル引退への花道
2022年のF1はようやくラストレース、アブダビGPまでたどり着いた。1年前の最終戦では、ルイス・ハミルトンとマックス・フェルスタッペンが同点で臨んだ頂上決戦となり、セーフティーカー明けのファイナルラップでフェルスタッペンが大逆転勝利を飾ったのだが、今年はフェルスタッペンの2連覇も、レッドブルの王座奪還も確定済み。とはいえ話題に欠けたかといえばそうではなかったのだから、F1に消化試合はないというものだ。
話題の矛先は、前戦サンパウロGPで6-7フィニッシュとなったレッドブルに向けられた。ブラジルでのレース終盤、ミディアムタイヤで苦戦する6位セルジオ・ペレスに代わり、ソフトで速いフェルスタッペンを前に行かせ、5位フェルナンド・アロンソ攻略に打って出たものの成功せず。最終周にペレスに6位を返すよう指示を受けたフェルスタッペンは、そのチームオーダーに従わず6位のままゴールした。結果、ドライバーズチャンピオンシップでフェラーリのシャルル・ルクレールと2位を争うペレスはルクレールに同点で並ばれ、チーム初のランキング1-2で終わりたいレッドブルにとっては好ましくない状況となってしまった。
その後レッドブルは、すべての責任はチームにあったとする声明を発表。フェルスタッペンに対して十分な情報を与えずに出した指示だったこと、またフェルスタッペンが譲らなかった理由についても納得済みであること、そしてSNSを中心とした誹謗(ひぼう)中傷を非難するといった内容を明らかにしたのだが、フェルスタッペンの“譲らなかった理由”については明言を避けた。ちまたでは、5月の第7戦モナコGPの予選でペレスが故意にクラッシュし、フェルスタッペンのポール争いを邪魔したことが発端になっているのではないかとの臆測が流れているものの、真実は密室の中にとどめられた。
アブダビでは心温まるシーンも見られた。レッドブルで一時代を築き、4年連続でチャンピオンとなったセバスチャン・ベッテルは、このレースを最後にF1の世界を去る。通算勝利数53勝は歴代3位、ポールは57回で同4位といった数々の功績以上にわれわれの記憶に刻まれているのが、誰からも愛される彼の人柄だ。共に覇を競い合ったハミルトンをはじめとするドライバー仲間や、栄冠を共に勝ち取った古巣のレッドブルのメンバー、2015年から6年間在籍したフェラーリのチームクルー、そして世界中の多くのファンが「DANKE SEB(ありがとう、セバスチャン)」と感謝と惜別の言葉を送り、引退への道に花を添えていた。
また今季限りでマクラーレンを離れるダニエル・リカルド、来季はニコ・ヒュルケンベルグにハースのシートを譲るミック・シューマッハー、3年間在籍したウィリアムズを去るニコラス・ラティフィなど、それぞれが慣れ親しんだ仲間たちとの別れを惜しみ、新たな旅立ちに思いを新たにしていた。
激闘のシーズンと長いキャリアの終着点、そしてそれぞれの節目となる、2022年最後のレースウイークが幕を開けた。
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フェルスタッペン&ペレスでレッドブル最前列独占
ルクレールとペレスによる同点で迎えた2位決戦、さらにフェラーリとメルセデスの19点を挟んだコンストラクターズランキング2位争いの行方を占う予選は、レッドブルが持ち前のストレートスピードを生かして最前列を独占する一方、フェラーリが2列目、また復調著しかったメルセデスが3列目と明確にグリッドが分かれる結果となった。
最速タイムを記録したのはフェルスタッペン。アタック直前にパワーユニットがシャットダウンし一瞬ひやりとしたが大事には至らず、今季7回目、通算20回目のポールポジションを獲得した。ペレスは0.228秒遅れで2位となり、レッドブルはチーム通算25回目、2014年からのターボハイブリッド規定下では2回目となるフロントロー独占に成功した。
2列目のフェラーリは、ルクレール3位、カルロス・サインツJr.は4位。ランキング2位のためにはペレスを抜かなければならないルクレールは「早々に抜くチャンスはある」と自信をのぞかせていた。メルセデスが並んだ3列目には、ブレーキトラブルに苦しんだハミルトン5位、前戦サンパウロGPで初優勝したジョージ・ラッセルは6位となった。
マクラーレンのランド・ノリスは7位、アルピーヌのエステバン・オコン8位、ベッテルは最後のレースでアストンマーティンを9位に導いた。マクラーレンのリカルドは10位につけたものの、前戦の接触のペナルティーで3グリッド降格となり、アルピーヌのフェルナンド・アロンソが10番グリッドに繰り上がった。
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フェルスタッペン首位キープ、注目はランキング2位争いに
今年で14回目の開催となったヤス・マリーナでのアブダビGPではポール・トゥ・ウィンが多く、なんと過去7年間はすべてポールシッターが勝っていた。そんな統計を知ってか知らずか、今季すでに14勝しているフェルスタッペンは、2022年シーズンを象徴するかのようなレース運びで完勝するのだった。
夕闇迫るなか58周のレースが始まると、フェルスタッペンを先頭に2位ペレス、3位ルクレール、4位ハミルトン、5位サインツJr.といったオーダーでオープニングラップが終わる。その後、フェルスタッペンを脅かすドライバーは現れず、注目はペレスとルクレール、フェラーリとメルセデスのランキング2位争いに集まることとなった。
まずはコンストラクターズランキング2位争いだが、この日のメルセデスには1週間前のサンパウロGPほどの勢いはなく、スタートで出遅れ、またピットアウト時の危険なリリースで5秒ペナルティーを受けたラッセルが5位でフィニッシュするにとどまった。ハミルトンはといえば、1ストップで4位を走っていた残り3周でメカニカルトラブルが生じ18位、7冠王者はついに1勝もできずにシーズンを終えることとなった。
1回目のピットストップを終えた順位は、1位フェルスタッペン、2位ペレス、3位ルクレール、4位サインツJr.、5位ラッセル、6位ハミルトン。メルセデスが脅威でないことが分かったフェラーリだったが、真っ向勝負でレッドブルを攻略することが難しいことも明白だった。そこでスクーデリアは、第2スティントでギャンブルに打って出たのだった。
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フェルスタッペン15勝目、フェラーリ&ルクレールは2位確定
レースの折り返しを過ぎた頃から、フェラーリが揺さぶりをかけ始めた。3位ルクレールがペースアップし、2秒半あった2位ペレスとのギャップが少しずつ詰まってきたのだ。34周目にフェラーリは、アンダーカットを狙うそぶりを見せ、ルクレールにピットインを伝えるも、その無線に反応したペレスが先にピットに入ったことで、ルクレールをコースにとどめた。
ペレスは再びハードを装着し6位でコースに復帰。一方で2位にポジションを上げたルクレールは“プランC”、つまりこのままゴールまで走り切る1ストップ作戦に切り替えた。ライバルの作戦を察知し、レッドブルはペレスにペースアップを、トップのフェルスタッペンにはタイヤマネジメントを指示。先頭のフェルスタッペンに不安はなかったが、ペレスが再びルクレールの前に出られるかは微妙だった。
残り15周、2位ルクレールと4位まで挽回していたペレスの差は約10秒。ペレスはハミルトンをかわし3位に駒を進めると、9秒先の赤いマシンを追いかけた。レッドブルが1秒差を詰めれば、フェラーリも使い古しのタイヤで負けじと好タイムをたたき出す。残り5周で4.6秒、4周で3.5秒、3周で2.6秒、2周で2.2秒、そしてファイナルラップに入ると1.9秒と、ペレスが思うように差を縮められないまま、タイムアップとなった。
フェルスタッペンは年間最多勝記録を「15」に伸ばす、面目躍如の勝利でシーズンを締めくくった。そして開幕直後はチャンピオン候補と目されたフェラーリとルクレールは、連戦連敗の末にライバルに一泡吹かせ、ドライバーズ&コンストラクターズランキング2位を死守することができた。
そしてベッテルは、自身299戦目のラストレースで10位入賞を果たすことができた。レース序盤は9位をキープし、8位オコンと激しいつばぜり合いを演じるなど気迫のこもった走りを披露していたが、その後はチームが選んだ1ストップ作戦により我慢を強いられ、ハミルトンの脱落でなんとか手にした最後の1点だった。
今年最後の表彰台にのぼったフェルスタッペン、ルクレール、ペレス、そしてキャリア最後のレースを終えたベッテルのドーナツターンにより、2022年のF1シーズンは幕引きとなった。
(文=bg)