日本はまだ遅れている? EV用急速充電器の最新事情【2024年版】
2024.05.29 デイリーコラムコネクターの数も性能も大幅に進化
私が初めて電気自動車(EV)を手に入れたのは2020年11月のこと。クルマは「フォルクスワーゲンeゴルフ プレミアム」で、走行距離7000kmの認定中古車でした。当時も今も自宅に充電設備がない私は、EVの充電はほぼ公共の急速充電スタンドを利用していますが、この3年半の環境の変化には目を見張るものがあります。
eゴルフに乗り始めたころは、急速充電器のほとんどが出力50kW以下のものでした。eゴルフの充電能力は50kWで、30分間の充電で追加できる量は多くて20kWhくらい。条件によっては10kWhしか充電できないこともよくありました。充電器の数も今ほど多くなく、e-Mobility Power社によれば、2021年12月末時点の数が7304口(充電器ではなくコネクターの数)でした。これに対して、2024年3月末には9103口に。数が増えたのに加えて、充電器の性能が向上したことで、一気に利便性が高まったことを実感しています。
例えば、高速道路。これまでも主なサービスエリアには急速充電器が設置されていましたが、ここ1年くらいの間に充電器の口数が増えたり、高性能化していたりするのが目立ちます。首都高速の大黒パーキングエリアや新東名の浜松サービスエリアなどで、青く輝く充電器が並んでいるのを見たことがあるでしょう。“マルチコネクター充電器”といわれるこの急速充電器は、一度に4台から6台の充電が可能です。しかも、同時に充電するEVが少ない場合は80~90kWという高出力で充電ができるというもの。私がふだん使っている「フォルクスワーゲンID.4プロ」や「ボルボEX30」といったEVなら、30分で30kWh前後の充電が可能で、走行可能距離を一気に200kmほど延ばすことができます。
新東名の浜松サービスエリアや駿河湾沼津サービスエリアには、さらに高速の150kW充電器も登場。高出力の急速充電に対応するEVならさらにたくさんの電気を追加することができるのです。
街にも増える高出力充電器
一方、充電器が1基という場合でも性能がアップされている場所が多いのは見逃せません。これまで出力50kW以下だったものが、最高90kW、しかもコネクターの数が2口となり、単独なら90kW、2台同時でも45~56kWで充電できるところが増えました。
こうしたことから、休日など交通量が多いときでも充電待ちをすることが少なくなりました。以前は、「高速充電なび」というスマートフォンアプリでサービスエリアやパーキングエリアにある充電器の満空情報を常にチェックしていましたが、新東名など急速充電器が充実している路線では神経質になる必要はなく、おかげで高速道路の移動がとても楽になりました。
高速以外でも、自動車ディーラーをはじめとして90kW級の急速充電器が増えています。都内にある私の自宅近くでも、コンビニとホームセンターに90kW器が設置され、最近はその2カ所ばかり利用しています。90kWではありませんが、ガソリンスタンドに設置された急速充電器にも重宝しています。セルフ洗車後、拭き取りしながら充電できるのが便利なのです。つい忘れがちなタイヤのエアチェックができるのも助かります。
誰でも利用できる150kW器も少しずつ増えてきました。先日、取材からの帰りに立ち寄ったのが那須塩原市にある観光施設の那須千本松牧場。ここにはパワーエックス社の急速充電器があり、単独なら150kW、2台同時でも120kWの急速充電が可能です。スマホのアプリで予約ができるうえ、利用料金は時間制ではなく、充電した電気の量に応じてというのもユニーク。充電予約は30分、45分、60分から選ぶことができるので、充電中に食事や買い物がゆっくり楽しめるのもうれしい点です。
ガソリンスタンド並みとはいえませんが、設置数が増え、充電能力も高まっている急速充電スタンド。「家に充電器がないからEVはムリ」という言い訳は、そろそろ終わりにしてもいいのでは!?
(文と写真=生方 聡/編集=藤沢 勝)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
ベテランも若者も大興奮!? まだ見ぬ次期「日産GT-R」はきっとこうなる! 2026.5.11 日産自動車のイヴァン・エスピノーサCEOは、2026年4月14日に開催された長期ビジョン発表会において「将来的に新型『GT-R』を投入する」と明言した。それは一体どんなクルマになるのか、これまでの情報から推測し得る将来像について語ろう。
-
新型「スカイライン」はこうなる! 各発表情報から日産の伝統的セダンの未来を探る 2026.5.8 日産が、正式にその存在を明らかにした新型「スカイライン」。1957年からの歴史を誇り、熱心なファンを抱える日産伝統のスポーツセダンは、次期型でいかなる姿となるのか? 日産が発表したさまざまな情報をもとに、その未来像を考察した。
-
世界遺産・高野山で大型電動バス「BYD K8」の営業運行がスタート その狙いとは? 2026.5.7 和歌山の南海りんかんバスが、世界遺産・高野山でBYDの大型電動バス「K8」の運行を開始した。現地にPHEV「BYDシーライオン6」で向かい、実際に高野山を巡るルートで電動バスに乗車しながら観光地における電動バスの役割を考えた。
-
バンコクモーターショー訪問記 「ランドクルーザー“FJ”」目当てに出かけた先で起きた大事件 2026.5.6 年に2度開催され、毎回盛況のバンコクモーターショーをライターの工藤貴宏が訪問。お目当てはついに正式発表&発売の「トヨタ・ランドクルーザー“FJ”」だったのだが、現地では数十年ぶりとなる大事件が起きていた。会場の様子とともにリポートする。
-
業績不振は想定内!? 名門ポルシェはこの先どうなってしまうのか? 2026.5.4 2025年から思わしくない業績が続くポルシェ。BEVの不振やMRモデルの販売終了などがその一因といわれるが……。果たして、名門に未来はあるのか? 事情をよく知る西川 淳が、現状と今後の見通しについて解説する。
-
NEW
“うまく運転するための電子制御”に限界はあるか?
2026.5.12あの多田哲哉のクルマQ&A運転のプロは、トラクションコントロールなどの電子制御システムを利用しないほうが速くクルマを走らせられる? 運転の楽しさとの関係は? 現在のシステムの到達点や開発の難しさについて、元トヨタの多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
マセラティMCプーラ チェロ(MR/8AT)【試乗記】
2026.5.12試乗記イタリアの名門が放つ、ミドシップのオープンスポーツ「マセラティMCプーラ チェロ」。スーパーカーの走りとグランドツアラーのゆとり、そしてぜいたくなオープンエアドライブを同時に楽しめる一台からは、マセラティがクルマに込める哲学が、確かに感じられた。 -
第335回:水平尾翼が効いてるのかな
2026.5.11カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。フルモデルチェンジで2代目となった「シトロエンC5エアクロス」で、夜の首都高に出撃した。最新のデザイン言語を用いて進化した内外装とマイルドハイブリッドの走りに、元シトロエンオーナーは何を感じた? -
ベテランも若者も大興奮!? まだ見ぬ次期「日産GT-R」はきっとこうなる!
2026.5.11デイリーコラム日産自動車のイヴァン・エスピノーサCEOは、2026年4月14日に開催された長期ビジョン発表会において「将来的に新型『GT-R』を投入する」と明言した。それは一体どんなクルマになるのか、これまでの情報から推測し得る将来像について語ろう。 -
ロールス・ロイス・ゴースト エクステンデッド(4WD/8AT)【試乗記】
2026.5.11試乗記「ロールス・ロイス・ゴースト」が「シリーズII」へと進化。先進性の強化とともに目指したのは、ブランド史上最もドライバー志向のサルーンだという。ロングホイールベース版の「エクステンデッド」で雲の上の世界を味わってみた。 -
ランボルギーニ・テメラリオ(後編)
2026.5.10思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。前編ではレブリミット1万rpmの4リッターV8ツインターボエンジンを絶賛した山野。後編ではレースカーさながらのシャシーによるコーナリング特性を聞いてみよう。



































