フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)
本音を言えば悔しいです 2023.12.19 試乗記 「フォルクスワーゲンID.4」の最新モデルは、従来型から1割以上の一充電走行距離の延長を実現している。電池容量はこれまでどおりとのことだが、一体どんなカラクリを使っているのか。初期導入モデルのオーナーがおそるおそる試してみた。“ローンチエディション”じゃない標準グレード
フォルクスワーゲンの最新電気自動車(EV)は「ID.ファミリー」と呼ばれ、その世界戦略モデルであるSUVのID.4が日本に上陸したのは2022年11月のこと。エントリーグレードの「ライト」と上級グレードの「プロ」が用意されるが、発売当初は導入記念特別仕様車の「プロ ローンチエディション」と「ライト ローンチエディション」のみを販売。発売と同時にID.4を手に入れたいと思っていた私はすぐにID.4プロ ローンチエディションをオーダーし、オドメーターの数字はすでに2万kmを超えている。
このローンチエディションはすぐにほぼ完売となり、翌12月にはフォルクスワーゲン ジャパンが2023年生産の標準グレードを正式に発表。この“ローンチエディションじゃない”モデルがようやく試乗できるようになったということで、プロ、ライトの両方を試してみることにした。
ID.4プロ ローンチエディションのオーナーだけに、知りたいことがいろいろあった。ひとつは、初めて試乗するID.4ライトが、どんな実力なのか。また、2022年生産モデルに対して一充電走行距離が延びた2023年版では走りがどう変わったのかも興味津々である。
バッテリー容量は変わらないのに航続距離が増加
2023年生産モデルの話をする前に、ID.4について簡単におさらいしておこう。ID.4は、他のID.ファミリー同様、EV専用プラットフォームである「MEB(モジュラーエレクトリックツールキット)」を用いたSUVタイプのEVだ。全長×全幅×全高=4585×1850×1640mmのボディーには、前後アクスル間の床下に駆動用バッテリーを搭載するとともに、リアアクスルに電気モーターを一体化した駆動ユニットを配置し、後輪を駆動している。
日本では搭載されるバッテリーとモーターが異なる2グレードを設定。ID.4ライトには容量52kWhのバッテリーと最高出力125kW(170PS)のモーターが組み合わされる一方、ID.4プロではバッテリーが77kWh、モーターが150kW(204PS)にそれぞれアップする。一充電走行距離は、2022年生産モデルのローンチエディションではID.4ライトが388km、ID.4プロが561kmであったのに対して、2023年版ではそれぞれ435kmと618kmに向上している。バッテリー容量自体は変わらないものの、回生ブレーキの制御などを変更したことで航続距離が延ばせたのだという。
カタログを見るかぎり、それ以上の変更はなく、搭載される装備はほぼ同一。細かいところでは、ID.4プロ ローンチエディションには、全車に「モビリティータイヤ」が装着されていた。これは、クギなどでできた穴なら、タイヤ内部のシーラントが穴をふさいで空気漏れを防ぎ、そのまま継続して走行が可能という便利なものだ。一方、2023年版のID.4プロにはモビリティータイヤが装着されない仕様も混在しているそうで、通常のタイヤが装着される場合にはパンク修理キットが搭載される。
違いが分からなかったプロ
まずは、慣れ親しんでいるID.4プロから。2022年版と2023年版では装備に差がないといったが、試乗した「キングスレッドメタリック」のボディーカラーは新色で、さらに「グラナディラブラック」も追加となった。私のID.4は「ブルーダスク」と呼ばれる濃い青だが、レッドがあればそちらを選んでいたかもしれない。
デザインについては、新色の追加以外に変更はなく、ルーフアーチがシルバーに彩られる特徴的なエクステリアはいままでどおり。インテリアも、茶色のレザレット(人工皮革)で覆われたダッシュボードをはじめ、レザレットとマイクロフリースのコンビネーションシート、「ドライバーインフォメーションディスプレイ」と呼ばれる小ぶりなメーターパネル、ダッシュボード中央に位置するタッチパネルなど、これまでと変わらぬデザインである。
ブレーキペダルを踏みながら、ドライバーインフォメーションディスプレイの右側にあるドライブモードセレクターを操作すれば発進の準備完了。前進には「D」モードと「B」モードがあり、前者が回生ブレーキなし、後者がありということで、Bモードを選んで早速走りだす。
軽くアクセルペダルを踏むと、動きだしこそ穏やかだが、スピードが乗るにしたがって加速に力強さが見られるようになるのはこれまでどおり。EVらしさを前面に押し出すのではなく、エンジン車から乗り換えても違和感なくドライブできるようしつけられているのがID.4の持ち味なのだ。走行中にアクセルペダルを戻したときの回生ブレーキは操作からワンテンポ遅れるのが気になるものの、強さ自体は絶妙で扱いやすい。乗り心地は、多少タイヤの硬さが気になることがあるものの、おおむね快適で、走行時の挙動も落ち着いている。
肝心の2022年版と2023年版との乗り味については、正直なところ違いが分からなかった。これで航続距離が約1割延びているというのだから、2022年版のオーナーとしてはうらやましいかぎりである。
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ライトでも走りは十分だが……
プロ以上に関心があったのがライトの実力である。エクステリアでは、プロが20インチタイヤとアルミホイールを装着するのに対して、18インチタイヤとスチールホイールを採用し、ルーフアーチとホイールキャップが黒いのがライトの特徴だ。一方、インテリアはダッシュボードやシートの素材などはプロに準じており、ダッシュボード中央のタッチパネルがひと回り小さくなる程度の違いしかない。
早速ドライブすると、プロに比べて車両重量が190kg軽いライトは出足が軽く、25kWの出力差はあまり気にならない。動きだしたあとの加速はプロに比べると穏やかだが、それでも十分な加速性能を備え、日本の道路環境であればストレスなく運転が楽しめるレベルである。タイヤサイズが2インチダウンされたことで、プロより乗り心地がマイルドなのもうれしいところ。プロ同様、広々とした後席やラゲッジスペースもこのクルマの見どころである。
航続距離はプロの618kmに対してライトは435kmと短く、長距離移動の機会が多い人にはプロをお薦めするが、ほとんどが短距離移動という人には130万円以上安く手に入るライトが、より魅力的に思えるはずだ。
一方、プロに標準のLEDマトリックスヘッドライト「IQ.LIGHT」や、渋滞時に重宝する同一車線内全車速運転支援システム「トラベルアシスト」といった日常の運転に役立つ機能が搭載されないのが残念なところで、せめてオプションで選ぶことができるようになれば、ライトの魅力はさらにアップするのではないだろうか。
(文=生方 聡/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
フォルクスワーゲンID.4プロ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4585×1850×1640mm
ホイールベース:2770mm
車重:2140kg
駆動方式:RWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:204PS(150kW)/4621-8000rpm
最大トルク:310N・m(31.6kgf・m)/0-4621rpm
タイヤ:(前)235/50R20 100T/(後)255/45R20 101T(ハンコック・ヴェンタスS1 evo3 ev)
交流電力量消費率:153Wh/km(WLTCモード)
一充電走行距離:561km(WLTCモード)
価格:648万8000円/テスト車=654万3000円
オプション装備:フロアマット<テキスタイル>(2万2000円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:2563km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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