メルセデス・ベンツEQB350 4MATIC(4WD)
意のままに 上質に 2024.09.09 試乗記 マイナーチェンジしたメルセデス・ベンツの電気自動車「EQB350 4MATIC」が上陸。メルセデスのピュアEVに共通する最新のデザインをまといブラッシュアップされた内外装と、4WDを採用するシステム最高出力292PSのパワートレインが織りなす走りを確かめた。最新モードで内外装を更新
“EQ”の2文字から始まる車名が与えられたメルセデス・ベンツのピュアEV群のなかにあって、「EQC」「EQA」に続く第3弾として2022年7月から日本で販売されているのがEQBである。
EQシリーズにはピュアEV専用の骨格を用いるモデルと、エンジン車との共有骨格を採用するものの双方が混在するが、このモデルは後者に該当。2020年に日本上陸を果たした初代「GLB」がベースとなる。
実際、大面積のグロスブラックパネルを用いたフロントマスクや左右のコンビネーションランプを細い発光ラインで結んだリアビューなど、最新のEQ各モデルに共通するディテールデザインは採用するものの、2830mmというホイールベースはGLBと同一でボディーサイズやスクエア基調のプロポーションもほぼ同様だ。
そんな両者で特徴的なのは輸入SUVのなかにあってはコンパクトと表現できるサイズの中に、3列シートのレイアウトを成立させていること。特にピュアEVであるEQBの場合には、そうしたこと自体が「いまだ稀有(けう)な存在」というフレーズを用いて紹介しても差し支えのない状態にある。
というわけで、今回試乗したのはメルセデス・ベンツ日本が2024年6月に導入を発表したEQBの改良バージョンである。
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ブランドを象徴するフロントフェイス
日本に導入されるEQBが、FWD仕様と4WD仕様でそれぞれ1モデルずつというのはこれまでと同様の構成。EQB350 4MATICという後者の正式名称に変わりはないが、駆動用バッテリー容量を66.5kWhから70.5kWhへと増やしWLTCモードでの一充電走行距離を520kmから557kmへと伸長させた前者ではそうした性能向上を明確にする目的からか「+」の記号が加えられ、「EQB250+」とされている。
そんな最新モデルと従来モデルとの識別ポイントは、外観上では前述のブラックマスク部分にこのブランドを象徴する「スターパターン」が新たにちりばめられたことや、テールランプのグラフィック変更など。こうしたポイントを押さえておけば、遠目には難しくても新旧の違いは明瞭だ。
それと同時に、ナビゲーションシステムやメーターパネル内表示の各種設定、さらにはADAS機能の設定変更を手元の操作で完結でき、ハンズオフ状態の検出に静電容量式センサーを用いることで表示の正確性も向上させたという「新世代ステアリングホイール」や、ダッシュボードのパッセンジャー側正面部分に無数のスリーポインテッドスターをバックライトで浮かび上がらせる「スターパターンインテリアトリム」が新たに採用されたことも報告したい。
一方で、上記ステアリングホイールの採用に伴いセンターコンソール上にあったタッチパッドが廃止され、「すっきりとしたインテリアデザイン」がうたわれているが、これは操作者をドライバーに限定することでもありユーザーによっては評価が分かれそうである。
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7人乗りの3列シートがセリングポイント
テスト車はEQB350 4MATICに、スポーツシートや電子制御式可変減衰力ダンパー、標準仕様よりも2インチ増しの20インチシューズなどからなる「AMGラインパッケージ」、さらには「パノラミックスライディングルーフ」やシートが本革仕様となる「AMGレザーエクスクルーシブパッケージ」などをオプション装着したモデル。ちなみに、こちらのモデルの場合は駆動用バッテリー容量やWLTCモードで467kmという一充電走行距離の変更は報告されておらず、ランニングコンポーネンツには変わりがないと思われる。
クーペSUVやらクロスオーバーやらと、スタイリッシュであることを売り物とするSUVが増殖する昨今にあって、フラットなフードとやはりフラットで長いルーフ、そこにほぼ垂直に立ったリアウィンドウとテールゲートを組み合わせたスクエア基調のルックスは、何ともシンプルで正統的。3列シートのレイアウトを特徴としながらも、パッと見ではそれを表から連想させない点ももちろんこれまでと変わることのないEQBならではの印象だ。
ただし、4.7mに満たない全長のなかでは3列すべてでゆとりある空間が得られるわけではないことも事実。端的に言って3列目はあくまでもテンポラリーシートにすぎず、2列目シートにはウオークイン機能が備わるものの乗降性も楽々とはいかない。それゆえ通常時はたたんでおき、5シーター+広いラゲッジスペースという状態で使うのがこのモデル本来の姿。すなわち、ミニバンの代役にはなり得ないことは心しておくべきだろう。
とはいえ、いざという場面で合法的に7人が移動できるのは大いなる魅力。そして、それをピュアEVで成立させている点も「EQBならでは」であるだろう。
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出来のいい回生ブレーキプログラム
走り始めると、スタートの瞬間から好印象が続く。静かで滑らかかつアクセル操作に対するレスポンスに優れる、というのはいわばEVに共通する“3大特徴”。ただし、このモデルの場合、そうしたポイントを生かしながら人間の期待に対して先んじてしまう印象が皆無であるという点を高く評価したい。
たとえば、特にアクセル操作時のレスポンスが敏感に過ぎず、加速シーンで不快な飛び出し感を覚えることがないのはリラックスしたドライビングを可能とするための重要なポイント。そして、それはたとえドライブモードで「スポーツ」を選択してもまたしかりなのである。
一方で、ペダルを深く踏み込むシーンでは十二分以上の速さを示してくれる点が頼もしい。車両重量は2.2t近いが、最高出力は290PS以上。スタートと同時に発せられる最大トルクも、自然吸気のガソリンエンジンであれば5リッターユニット級に相当する520N・mに達するので、それも当然といえば当然なわけだが。
同時に「通常」→「強力」→「最大」とパドルで瞬時に回生力が選択・変更可能であることに加え、左パドルの長引きによって前方の状況を読み取りながら自動で調整される「インテリジェント」のモードでの回生減速力も、いかにも「実際に走り込んでプログラミングした」と連想させるような設定でなかなか使いやすい。
かくしてさまざまな条件下でドライバーの意に沿い、自然で扱いやすく感じられることが印象に残ったのがこのモデルの走行性能だった。
さらに、前述のように20インチという大径のシューズを履きながらも鋭い突き上げ感などがなく、望外とも思えたフラット感を提供してくれたフットワークも、上質な走行テイストを生み出してくれた主要因。これならば、見た目に負けてAMGラインパッケージをチョイスしても、荒っぽい乗り味に後悔することはなさそうだ。
かくも短い周期でアップデートが繰り返されるとなると、「やっぱり今すぐEVを買う気にはなれない」という意見も十分に理解はできる。さりとて、それが今という時代なのだろうと、やはりこのモデルでもそう思わされることになった最新のEQBなのである。
(文=河村康彦/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
メルセデス・ベンツEQB350 4MATIC
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4685×1835×1705mm
ホイールベース:2830mm
車重:2160kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流誘導電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:194PS(143kW)/5800-7600rpm
フロントモーター最大トルク:370N・m(37.7kgf・m)/0-3600rpm
リアモーター最高出力:98PS(72kW)/4500-14100rpm
リアモーター最大トルク:150N・m(15.3kgf・m)
システム最高出力:292PS(215kW)/0-4500rpm
システム最大トルク:520N・m(53.0kgf・m)
タイヤ:(前)235/45R20 100T/(後)235/45R20 100T(ピレリPゼロELECT)
一充電走行距離:467km(WLTCモード)
交流電力量消費率:164Wh/km(WLTCモード)
価格:899万円/テスト車=1015万8000円
オプション装備:メタリックペイント<パタゴニアレッド>(11万4000円)/AMGラインパッケージ(59万8000円)/AMGレザーエクスクルーシブパッケージ(28万円)/パノラミックスライディングルーフ(11万4000円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:380km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(6)/山岳路(3)
テスト距離:299.0km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:5.1km/kWh(車載電費計計測値)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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