メルセデス・ベンツEQB350 4MATIC(4WD)/EQB250(FWD)
進化が止まらない 2022.08.16 試乗記 Dセグメントの「EQC」、Cセグメントの「EQA」に続くメルセデス・ベンツの電動SUV「EQB」が上陸。3列シート7人乗りのコンパクトSUV「GLB」をベースとする純電気自動車(EV)の特徴と、先行する2モデルからの進化を報告する。見どころ満載のコンパクトEV
CセグメントのEVが国内外の自動車メーカーから続々と発売になり、EVが一気に身近になってきた2022年。なかでも何かと気になる一台が、メルセデス・ベンツのEQBだ。
私自身が次の愛車としてこのセグメントのEVを狙っていることもあって目を光らせていたが、同セグメントで唯一7人乗車が可能な3列シートを搭載するEQBは、ぎりぎりコンパクトと呼べるボディーサイズに余裕ある室内空間を確保し、さらにFWDと4WDが選べるラインナップ。容量66.5kWhのバッテリーに最大100kWの急速充電に対応することなど、見どころは満載である。
見てのとおり、エンジン車のGLBをベースとしているEQBは、専用設計のモデルに比べるとデザインのインパクトは控えめだ。それでも、穴のない大きなブラックパネルが鎮座するフロントマスクや、ライトストリップで結ばれたリアコンビネーションランプなど、メルセデスEQならではの個性でさりげなくEVであることをアピールするのは、むしろ個人的には好ましいと思える。
ただ、FWDの「EQB250」が788万円から、4WDの「EQB350 4MATIC」が870万円からという車両本体価格は予算オーバーだなぁ……と思いながらも、興味津々。報道試乗会で2つのグレードをチェックすることにした。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
EQAから進化したFWD仕様
日本市場に投入されるメルセデスEQとしては第3弾のEQBは、先に発売されているEQAと基本設計をシェアする関係にあり、搭載されるバッテリーの容量は同じ。しかし、FWD仕様の「EQA250」とEQB250を比べると、最高出力はともに140kWでありながら、なぜか異なるタイプの電気モーターを搭載していることに気づく。
具体的にはEQA250が誘導モーター(非同期モーター)を採用するのに対し、EQBでは永久磁石同期モーター(PMモーター)が使われている。メルセデスはより効率の高いPMモーターを新たに開発することで、航続距離を延ばすことに成功。EQA250の423kmに対して、EQB250では520kmに向上している。後発モデルの進化は止まらないのだ。
一方、4WDのEQB350 4MATICが、FWDのEQB250にさらに1基のリアモーターを追加しただけでないのも興味深い。EQB350 4MATICの場合、フロントは143kWの誘導モーターを搭載する一方、リアには72kWの永久磁石同期モーターを採用している。実は日本に未導入の4WD仕様のEQAがまさにこの構成である。
EQB350 4MATICでは、リアモーターが主役で、必要に応じてフロントモーターがアシストするのだが、アシストしない状態で回転しているときの損失が低いという理由からフロントに誘導モーターを搭載したものと考えられる。こうした工夫のおかげで、パワフルな4WDのEQB350 4MATICが、EQA250を上回る468kmの航続距離を実現するというわけだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
EVならではの魅力を堪能できる
そんなEQBの、まずは4WDのEQB350 4MATICから試乗。センターパネルのメディアディスプレイからエナジーフロー表示を選択して、前後モーターの動きをチェックしながらドライブすることにする。
ブレーキから足を離すと、クルマはゆっくりとクリープを始める。そこから軽くアクセルペダルを踏むと、リアモーターだけでスムーズな加速を始めた。街なかをおとなしく走るかぎりはリアモーターだけでこと足りてしまうほどだ。
少し急な加速が必要な場面でアクセルペダルを踏み増すと、フロントモーターがサポートに加わるが、その作動を感じ取ることはなかった。システムの動きは実に洗練されている。
高速道路の合流などでアクセルペダルを大きく踏み込むと、背中を押されるほどではないものの、スポーツモデル顔負けの素早い加速を味わうことができた。ここでもEQB350 4MATICの動きは荒々しさとは無縁で、このスムーズさ、静かさ、力強さこそがEVの醍醐味(だいごみ)であることを再確認する。
EQBでは回生ブレーキのレベルを4段階から選ぶことができ、回生レベルを最強にすれば、急ブレーキなどを除いて、アクセルペダルだけで速度がコントロールできるのが便利。完全停止にはブレーキペダルを踏む必要があるが、自分の意思で停止までもっていけるほうがむしろ安心に思える。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
おすすめはEQB350 4MATIC
EQB350 4MATICの試乗車にはオプションの「AMGラインパッケージ」が装着されており、これに含まれるアジャスタブルダンピングシステム(可変ダンピングコントロール)が快適な乗り心地を後押し。標準より2インチアップとなる235/45R20サイズのタイヤを履くにもかかわらず、乗り心地はマイルドで、加減速時の挙動も落ち着いている。
EQB350 4MATICからEQB250に乗り換えると、多少のんびりとした印象を受けるが、それでもEQB250単独で見れば加速には十分余裕があり、全長4685mmのボディーをストレスなく走らせることができる。ただ、トルクを4輪で受け止めるEQB350 4MATICのほうが、アクセルペダルの操作に対する加速がリニアでスムーズ。ピッチング方向の動きも抑えられるぶん、さらに洗練された印象だ。これには、アジャスタブルダンピングシステムの有無も影響しているだろう。
ということで、EVが誇るスムーズさや洗練されたマナーを楽しみたいなら、EQB350 4MATICとAMGラインパッケージの組み合わせは理想的。この時点ですでに900万円をオーバーしているのが悩みのタネだが、このクラスでトップレベルの満足感が得られるのは間違いない。
(文=生方 聡/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツEQB350 4MATIC
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4685×1835×1705mm
ホイールベース:2830mm
車重:2160kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流誘導電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:194PS(143kW)
フロントモーター最大トルク:370N・m(37.7kgf・m)
リアモーター最高出力:98PS(72kW)
リアモーター最大トルク:150N・m(15.3kgf・m)
システム最高出力:292PS(215kW)
システム最大トルク:520N・m(53.0kgf・m)
タイヤ:(前)235/45R20 100T/(後)235/45R20 100T(ピレリPゼロELECT)
一充電走行距離:468km(WLTPモード)
交流電力量消費率:163kWh/km(WLTCモード)
価格:870万円/テスト車=935万2000円
オプション装備:メタリックペイント<デジタルホワイト>(7万2000円)/AMGラインパッケージ(58万円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:939km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh
メルセデス・ベンツEQB250
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4685×1835×1705mm
ホイールベース:2830mm
車重:2100kg
駆動方式:FWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:190PS(140kW)
最大トルク:385N・m(39.2kgf・m)
タイヤ:(前)235/55R18 104T/(後)235/55R18 104T(ブリヂストン・トランザT005)
一充電走行距離:520km(WLTPモード)
交流電力量消費率:147kWh/km(WLTCモード)
価格:788万円/テスト車=795万2000円
オプション装備:メタリックペイント<ローズゴールド>(7万2000円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:497km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
スバル・レヴォーグ レイバック プレミアムS:HEV EX(4WD/CVT)【試乗記】 2026.10.6 「スバル・レヴォーグ レイバック」にストロングハイブリッド搭載モデルが登場。高効率なパワーユニットが積まれたのはもちろんのこと、既存の純エンジン車とはデザインやボディーサイズも違っているというから興味深い。上位グレードの「プレミアムS:HEV EX」を試す。
-
NEW
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
NEW
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
NEW
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。 -
間もなく正式発表 ミツオカの新型2シータースポーツカー「LA1」を予測する
2026.10.15デイリーコラム光岡自動車が2026年11月26日に正式発表を予定しているアメリカンスタイルの新型2シータースポーツカー「LA1」。現在公開されているLA1の画像とティーザーサイトに掲載された情報から、その特徴を分析する。

















































