目指すは世界初の“全域アイズオフ”! ホンダが次世代EV「Honda 0」の新技術を発表
2025.01.08 自動車ニュース本田技研工業は2025年1月7日(現地時間)、米ラスベガスで開催されているITとエレクトロニクスの見本市「CES 2025」において、次世代電気自動車(EV)「Honda 0」シリーズに採用する予定の新技術を公開した。
次世代モデルの頭脳をルネサスと共同開発
Honda 0シリーズは、ホンダが2026年より市場投入を予定している次世代EVであり、軽さや空間効率を突き詰めた車両設計および、高度に知能化された車両制御/運転支援/ドライバーアシストシステムを実現する、「Thin, Light, and Wise.(薄い、軽い、賢い)」というコンセプトのもとに開発が進められている。
なかでも今回発表された新技術は、“Wise(賢い)”の領域に関するもので、E&E(電気&電子)アーキテクチャーの上で車両を制御し、ドライバーとの仲立ちを務める新世代ビークルOS「ASIMO OS」(別記事参照)や、自動運転技術、高い演算能力を持つ専用SoCなどの概要が明らかにされた。
具体的な内容は、以下のとおり。
【自動運転技術】
2021年に世界で初めて「自動運転レベル3(アイズオフ):条件付き自動運転車(限定領域)」の機能を有する「Honda SENSING Elite(ホンダセンシングエリート)」を実用化した知見を生かし、より多くのユーザーに手が届く自動運転車を、グローバルで提供していく。
AIソフトウエアのスタートアップ企業であるHelm.aiの「教師なし学習」と、熟練ドライバーの行動モデルを組み合わせた独自のAI技術により、少ないデータ量でAIが学習し、効率よく自動運転・運転支援の範囲を拡大。加えて、ヒトやモビリティーの研究で培ったホンダ独自の協調AIを活用することで、人の運転でも難しい、他の交通参加者との「譲り合い」といった協調行動の精度を向上させる。これらの先進技術により、急な動物の飛び出しや落下物など、想定外の出来事にも素早く適切に対処する、信頼性の高い運転支援を実現する。
Honda 0シリーズでは、まずは高速道路での渋滞時アイズオフから自動運転技術を搭載し、通信による機能アップデートを通じて、運転支援・自動運転レベル3適用の範囲を拡大していく。
自動運転レベル3では、運転主体が人からクルマへと代わり、映画鑑賞やリモート会議など、これまでにはできなかった「ドライバーによる移動中のセカンドタスク」が可能となる。ホンダはこの技術を進化させ、世界に先駆けて全域アイズオフを実現する。
【Honda 0シリーズ専用SoC】
ルネサス エレクトロニクスと高性能SoCの開発契約を締結。2020年代後半に投入する、次世代のHonda 0シリーズに搭載予定のコアECU向けSoCを共同開発する。
Honda 0シリーズのE&Eアーキテクチャーは、将来的にクルマのシステム を制御する複数のECUを、ひとつのコアECUに集約するセントラルアーキテクチャー型となる。AD/ADASといった運転支援やパワートレイン制御、快適装備など、車両のさまざまなシステムを一元的管理するコアECUには、より高性能なSoCが必要となるが、これには高い処理能力が必要となるほか、それに伴う消費電力の高まりを抑制することが求められる。
これに対応するため、ルネサスの汎用(はんよう)車載半導体である第5世代SoC「R-Car X5」シリーズに、ホンダ独自のAIソフトウエア向けに最適化されたAIアクセラレーターを組み合わせたシステムを実現。これにより、AI性能としては業界トップクラスの2000TOPS(Sparse)を20TOPS/Wの電力効率で実現することを目指す。
北米で約10万口の充電ネットワークを構築
また、環境に負荷をかけることなくユーザーに自由な移動を提供するため、「ストレスフリーで自由な移動の実現に向けた充電網の構築」「EVバッテリーを活用したクリーンでスマートなEVライフの提供」という、2つの軸による新たなエネルギーサービスを展開することも発表された。
充電環境については、北米において自動車メーカー8社(アメリカン・ホンダモーター、BMWグループ、ゼネラルモーターズ、ヒョンデ/キア、メルセデス・ベンツグループ、ステランティスN.V.、トヨタ自動車)による合弁会社、IONNA(アイオナ)を通じ、2030年までに3万口の高品質な充電網を構築。さらにHonda 0シリーズの充電ポートに北米充電規格のNACS(North American Charging Standard)を採用することで、2030年にはHonda 0シリーズのユーザーが約10万口の充電網を使用できる環境を整えるとしている。
さらにHonda0シリーズの投入に合わせ、この充電網を活用した新たな充電サービスの提供も検討。ホンダの知能化技術にアマゾンウェブサービス(AWS)の生成AI「Amazon Bedrock」などの技術を組み込み、Honda 0シリーズの車両や広い充電網から得られるデータを分析することで、充電設備の検索や支払いのシンプル化など、さまざまな面で一人ひとりにパーソナライズされた充電体験を提供するという。
いっぽう、EVの充電シーンの約8割を占めるとされる自宅充電に関しては、Emporia Corp.と共同開発している「Home Energy Management System(ホームエネルギーマネジメントシステム)」に、ホンダとBMW、フォードの合弁会社であるCharge Scape(チャージスケープ)のVGI(Vehicle Grid Integration)システムを組み合わせ、北米で展開しているEV向け充電サービス「Honda Smart Charge」を一層進化させるとしている。これによる新サービスは2026年以降、順次北米市場などで開始される予定で、電気代の節約やCO2の削減に貢献するという。
この新サービスでは、Honda 0シリーズのEVは仮想発電所(Virtual Power Plant)として機能し、ユーザー一人ひとりに最適化された充電計画を実行するという。例えば電気代が安く、再生可能エネルギーを活用できる時間帯を選んで充電を行い、電気代が高い時間帯は家庭向けに放電することで、家庭全体の電気代をマネジメント。さらにグリッドの電力が不足しているときには、車載バッテリーの電力を電力系統へ供給することで、電力の安定化に貢献。オーナーはEVから収入を得ることも可能となるという。また、充放電を繰り返すことで懸念されるバッテリーの劣化は、ハイブリッド車で培ったバッテリーマネジメント技術により最小限に抑制するとしている。
(webCG)
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