「BYDシーライオン7」で立山黒部アルペンルートを目指す
2025.04.23 デイリーコラム「シーライオン7」の“追っかけ”現る!?
2025年4月14日、発売を翌日に控えた「BYDシーライオン7」で、中央道下り線の岡谷ジャンクション手前あたりを走っていたときのことだ。追い越し車線を走る「日産リーフ」から熱い視線が注がれていることに気づく。その後、リーフはシーライオン7のあとをつけ、電気自動車(BEV)2台のランデブー走行がスタート。「BEVのオーナーからは、かなり注目されているんだなぁ」なんてことを考えながら岡谷ジャンクションを長野道方面に分岐すると、くだんのリーフも行き先が同じ方向らしく、松本インターまでランデブー走行が続いた。
ここからは国道158号と471号を乗り継いで富山を目指すのだが、まずは腹ごしらえをしようとインター近くのそば屋にクルマを止めると、なんとあのリーフが駐車場に滑り込んできた。聞けば発売前のシーライオン7が気になり、30km以上も追いかけてきたというのだから驚きである。これはただ者ではないなと深掘りすると、リーフは社用車で、プライベートではテスラ(モデルは聞きそびれた)に乗っているというBEV好きだった。
これほどまでに熱心な人に会うのは初めてで、他人(ひと)様のクルマなのにちょっと鼻が高い(笑)。それでつい調子に乗って、お昼を食べすぎてしまったのはここだけの話である。
ところで、なぜシーライオン7で富山に向かっているかというと、翌日の4月15日、雪に閉ざされていた立山黒部アルペンルートが開通し、2025年からそのルートの一部をBYDの大型電気バス「K8」が走るというので、その晴れ姿をひと目見るのが目的である。せっかく行くならシーライオン7でロングドライブを楽しみませんか、というBYDからのオファーは、先日のメディア向け試乗会で乗り足りなかった私にはうれしい計らいだった。
ツアー初日の14日は、満充電のシーライオン7(RWD)で横浜を出発し、首都高速から東名、圏央道、中央道と乗り継ぎ、八ヶ岳パーキングエリアで最初の休憩。ここまで173kmを走り、バッテリー残量は62%。このまま富山まで走り切れそうだが、せっかくなので150kW出力の急速充電器にシーライオン7をつなぐと、9分弱で12.1kWh充電し、バッテリー残量は74%まで回復した。平均80kWh強で充電した計算になり、メーターでも一時100kWh超えの充電出力が確認できた。その後は冒頭の話のとおりで、富山市内まで372kmを走ってバッテリー残量は43%と、航続距離にはまったく不安がないドライブになった。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
トロリーバスから「BYD K8」にバトンタッチ
翌4月15日は、シーライオン7で、立山黒部アルペンルートの富山側の玄関口である立山駅に向かう。駅前に到着すると、観光バスから降りた大勢の乗客が、駅の中に吸い込まれていく。
実は私、立山黒部アルペンルートを訪ねるのは今回が初めて。4月から6月にかけて、「雪の大谷」と呼ばれる雪の壁の間を走り抜けるバスの様子はニュースなどでおなじみだが、それ以上の知識はない。そこで富山側から長野側に向かう場合のルートを調べてみた。
- 立山駅~美女平:立山ケーブルカー(1.3km/7分)
- 美女平~室堂:立山高原バス(23km/50分)
- 室堂~大観峰:立山トンネル電気バス(3.7km/10分)
- 大観峰~黒部平:立山ロープウェイ(1.7km/7分)
- 黒部平~黒部湖:黒部ケーブルカー(0.8km/5分)
- 黒部湖~黒部ダム:徒歩(0.6km/15分)
- 黒部ダム~扇沢:関電トンネル電気バス(6.1km/16分)
立山駅から長野の扇沢駅まではわずか37.2km。このルートをさまざまな移動手段を乗り継ぐことで、豊かな自然や絶景を目の当たりにできるのが立山黒部アルペンルートの魅力である。
ルートのうち、室堂と大観峰の3.7kmを結ぶ「立山トンネル電気バス」が今回のお目当て。これまでは29年にわたり日本最後のトロリーバスが運行していたが、2024年11月30日に惜しまれて引退。室堂と大観峰の間はすべてトンネルで、トロリーバス同様、走行中に排ガスを出さないBYD K8が新たな移動手段として選ばれた。
絶体絶命の危機
果たしてどんな走りを見せてくれるのか、期待を胸にツアー客でごった返す駅構内に入ると、何やら不穏な空気が流れている。美女平~室堂間で、前夜からの雪の除雪が間に合わず、立山高原バスが運行を見合わせていて、これに合わせて立山ケーブルカーも待機中。「早く動きださないかなぁ」という期待に反して、しばらくすると、立山高原バスの終日運休が発表され、目指す室堂への移動手段が断たれてしまった。
一方、室堂から先は通行が可能で、だったら長野側から向かおうという話になり、急きょ、立山駅から扇沢までクルマで約170km、約3時間の道のりをシーライオン7で移動することになった。さいわい私のクルマは、前日に富山市内で充電したおかげで、バッテリーは70%ほど残っていて、扇沢までは途中充電せずに走り切れるはずだ。
10時過ぎに立山駅を出発し、北陸道で途中1回休憩した以外は走り続けたおかげで、13時前には扇沢に到着。ここから、関電トンネル電気バスで黒部ダム近くまで登り、黒部ダムの上を徒歩で渡ったあとは、黒部ケーブルカー、立山ロープウェイを乗り継ぎ、ついに15時前、大観峰にたどり着いた。
大観峰のバスターミナルには、立山黒部の絶景や映画『おおかみこどもの雨と雪』のラッピングが施されたK8が待ち構えている。今回導入されたのは合わせて8台。実際の運行では3台が1組に連なり、2組がトンネル中央ですれ違いながら、折り返し運転を行う。残る2台はCHAdeMOタイプの急速充電器がある場所で待機している。ちなみに、急速充電器は8基あり、最大出力は35kW。バスの運行しない夜間の充電だけで、昼間の運行には十分間に合うそうだ。
さっそくバスに乗り込むと、運行初日だけにまさに新車の美しさだ。フロアがフルフラットで、後部への移動も楽である。ほどなくしてバスが動きだすが、スムーズな動きと静かさはさすが電気バスといったところ。最初に乗った関電トンネル電気バスに比べて乗り心地が格段に快適で、ボディーがしっかりしているのは、バスに関して素人の私でもわかった。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
待ち構えていたさらなる試練
トンネル内でのすれ違いのあと、間もなく室堂に到着。残念ながらターミナルの外はホワイトアウトの状態で絶景は楽しめなかった。しばらく駅構内で待機したあと、再び立山トンネル電気バスに揺られて(実際にはあまり揺れないのだが)大観峰に着くと、その後は行きと逆のルートをたどって17時過ぎに扇沢に戻ることができた。
ここから富山市内のホテルに帰るのだが、外を見るとまさかの吹雪で、しかもわずか3時間で道路は雪に覆われていた。これはまずい! 想定外の雪で、サマータイヤを履くシーライオン7は足止め。やむなく扇沢の駐車場にシーライオン7を置き去りにし、私たち取材班はタクシーで長野駅に向かい、そこから新幹線で富山駅に移動することにした。
3日目の16日、扇沢までの道路がすっかり除雪できているという情報を得た取材班は、前日と逆のルートで扇沢へと急いだ。駐車場で一晩を過ごしたシーライオン7は雪に覆われ、さっそく雪を落として扇沢をあとにする。
ここでAWDのシーライオン7に乗り換えるが、運よくバッテリーは50%ほど残っていて、帰りは安曇野のコンビニで15分、中央道上りの談合坂サービスエリアで30分、いずれも150kW器で充電しただけで約300kmを走破できた。横浜に到着した時点でバッテリーは55%残っており、シーライオン7の充電能力の高さや航続距離の長さがロングドライブには実に心強い。
予想外の事態にも負けず、なんとか目的が達成できた今回のツアー。心残りは、楽しみにしていた雪の大谷が見られなかったことで、降雪の心配がない時期に立山から扇沢まで、いつかぜひ通り抜けたいと思う。
(文と写真=生方 聡/編集=藤沢 勝)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
気づけばすでに4モデル スバルのBEV戦略と水平対向エンジンの未来を考えるNEW 2026.6.4 「ソルテラ」に続き、「トレイルシーカー」「アンチャーテッド」「ゲッタウェイ」と、いつの間にか4モデルが顔をそろえたスバルのBEV。伝統的な水平対向エンジンやシンメトリカルAWDはこの先どうなるのか? スバルの未来戦略を探る。
-
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感 2026.6.3 「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。
-
新生アルピナは成功するか? その将来とBMWとの関係について考える 2026.6.1 具体的なデザインスタディーも公開され、いよいよ市場展開が見えてきた新生アルピナ。将来的な成功の“確度”やいかに? BMWによる新たなアルピナ像について、両ブランドに詳しい西川 淳が詳しく解説する。
-
つまずきを糧に成功をつかみ取れ! 新型「CX-5」に宿るマツダの変革と覚悟 2026.5.29 既存のマツダ車とは一線を画す乗り味で、メディアをおどろかせた新型「マツダCX-5」。マツダの最量販車種は、なぜ3代目で大転換を迫られたのか? 賛否両論を巻き起こした“あのクルマ”との関係は? 新しくなったCX-5に宿る、マツダの覚悟と変革に迫る。
-
「日産テラノ」がPHEVで復活 往年のビッグネームを継承するSUVの特徴を分析する 2026.5.28 日産自動車が「北京モーターショー2026」で、往年のビッグネームを継承する新型SUV「テラノPHEVコンセプト」を世界初公開した。初代「テラノ」で採用された「3スロット」を想起させる車両のデザインに加え、日産が新型テラノで狙うグローバル戦略に迫る。
-
NEW
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
NEW
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。 -
NEW
第115回:メイク・アメリカ・グレート・アゲイン!(後編) ―デザインもサイズも規格外! 魅惑のアメリカ車はなぜ“主役”になれないのか?―
2026.6.3カーデザイン曼荼羅トヨタ&ホンダが発表した、米国生産車の日本導入計画。しかしアメリカには、規格外に面白いクルマがまだたくさんあるのだ! カーデザインの識者とともに魅惑の日本“未”導入車を探すとともに、魅力的なアメリカ車が、それでも主役になれない理由を考えた。 -
どうしてピアノブラックの内装材は多用されるのか?
2026.6.2あの多田哲哉のクルマQ&Aよく目にするピアノブラックの内装材は、「キズや脂汚れが目立つ」などネガティブな評価もしばしば。それでも多用されているのはなぜか? 車両開発者の多田哲哉さんに聞いてみた。 -
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】
2026.6.2試乗記かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。 -
レストモッドがイメージ 特別なオニツカタイガーの魅力に迫る
2026.6.1オニツカタイガーの新作ドライビングシューズを知る<AD>オニツカタイガーが、“レストモッド”と呼ばれるクルマのレストア&カスタム手法に着想を得たドライビングシューズを発表。4タイプ製作された、「MEXICO 66 DRIVING」のスペシャルバージョンの魅力に迫る。

















