ベンチャーからもEV続々【パリサロン2010】
2010.10.05 自動車ニュース【パリサロン2010】大メーカーだけじゃない、地元ベンチャー企業もEV多数出展
今回のパリショーでもっとも大きな変化をとげたのはホール2の1階だった。従来ここは小型商用車の展示スペースだった。それが今回は、EV(電気自動車)コーナーに変ぼうしていたのだ。といっても、ルノー、プジョー、シトロエンのEVは自分たちのブースに展示されている。ではどんなクルマがいるのか? 会場に足を踏み入れると、そこにはベンチャー企業が作り上げた「虫」たちがいた。
■マイクロカーはEVに向き
「虫」とは、フランスで独自の発展を遂げてきたマイクロカーのことだ。スマートと同サイズのボディを持ち、誕生は第2次世界大戦直後とかなり古い。これらは従来、スクーターやトラクター用エンジンを動力源としてきたのだが、近年の環境問題の高まりにともない、モーターにスイッチしつつある。
とくにサルコジ大統領が2007年の就任直後、「環境グルネル」という名前の大規模なエコプロジェクトを打ち出して以降は、官民を挙げてEV化に突き進んでいるのが現状なのである。
電動の「虫」もこうした世の中の流れに沿ったクルマだが、隣のホールに置かれた大メーカー製EVと比べると、良くも悪くもプリミティブである。モーターやインバーターに高度な制御は入っておらず、最高時速や航続距離はともに100km以下にとどまっており、近所の移動に徹している。
ただしEVの欠点であるバッテリーの重さ、航続距離の短さ、充電時間の長さは、マイクロカーなら目立たなくなる。ある意味「虫」は電動化に向いた車両といえる。近距離用としてはこれで十分であり、日本でも環境のために、軽自動車の下にこういうカテゴリーを作るべきじゃないかとさえ思えてくる。
■古風なフランスデザインが残る
しかもデザインが個性的だ。お世辞にもカッコよくはないけれど、草食系動物を思わせる憎めない顔や姿に、思わず笑みがこぼれてしまう。
そういえばこのカタチ、昔のフランス車に似ていなくもない。大メーカーのクルマが国際商品に成長していったのに対し、マイクロカーは電動化しても、基本的に国内の住民や商店、役所などの足に徹している。そんな立ち位置の違いが、フランス風味濃厚なデザインに表れているのかもしれない。
でもノスタルジーで語るべきクルマではないことを、資料を見て教えられた。このEV展示、フランス環境省(正式名称はエコロジー・エネルギー・持続可能な開発・海洋省)や電力公社(EDF)の後援を受けているからだ。
ホール内にはEDFのブースもあり、白いラリーレイド風競技車両が置かれていた。1990年から開催されている氷上レース「トロフェ・アンドロス」に、今年EDFの協力で新設された、EV部門を走るマシンである。電力事業者がレースをバックアップするなんて、世界でも珍しい例じゃないだろうか?
■ベンチャーの動きも見逃せない
またF1やル・マンに参戦経験のあるヴェンチュリは、ホール2にシトロエンやプジョーの小型商用車をベースとしたコンバージョン(改造)EVを展示したほか、ホール1にはオリジナルのEVスポーツカーの新作、ホール5には速度記録車などを置いていた。ひとつのブランドが3つのホールにブースを構えるという状況もあまり見たことがない。
メインホールとなるホール1のヴェンチュリの隣には、2年前にピニンファリーナとの共同開発車を出展して話題になった「ボロレ・ブルーカー」の新型が、コンパクトとマイクロの2台体制で発表されていた。
このブルーカー、来秋パリに導入されるEVシェアリング「オートリブ」への採用が有力視されている。パリは近年、環境対応型モビリティへの転換を積極的に進めていることで知られる。コミュニティサイクルの「ヴェリブ」はその代表だが、来年にはヴェリブのEV版が登場するのである。当初から3000台の車両と1000カ所のパーキングで展開するというから驚きだ。
フランスのEVを語る際、大メーカーの動向だけ見ていては、「木を見て森を見ず」である。国や都市からベンチャー企業まで、さまざまな組織が多彩な手法で、EV普及に取り組んでいるからだ。エコカーに興味があるなら、こういった部分にも目を向けてもらいたい。
(文と写真=森口将之)
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