ガス代は下落しハイブリッド好調 では“燃費の相場”はどうなっている?
2026.02.09 デイリーコラムまだまだ期待のエンジン車
エンジン車ユーザーには(多少の?)追い風が吹いているといえるだろうか。1974年、道路整備の財源不足を補うために「当分の間」として導入されたガソリン1リッターあたり25.1円の暫定税率が、2025年12月31日をもって廃止された。経済産業省が発表したレギュラーガソリン1リッターあたりの店頭小売価格は、2026年1月26日の調査で全国平均が155円40銭、ハイオクは166円30銭である。
筆者が行きつけにしているガソリンスタンドでは、2025年1月の最も高い時期に比べてリッターあたり30円下がった。筆者は個人の車両に限ると2025年の1年間に約600リッターのガソリンを消費したので、年間を通じて30円値下がりの恩恵を受けたとすると、1万8000円が浮く計算になる。リッターあたり17.1円の軽油引取税の暫定税率は2026年4月1日に廃止される予定で、同日以降はディーゼル車も小売価格引き下げの恩恵を受けることになるが、これに先行するかたちで2025年11月中にも補助金が支給され、すでに実質的な値下げが行われている。
「2035年に乗用車を完全なゼロエミッションにする」。すなわちエンジン車の販売を事実上禁止する規制を打ち出していた欧州連合(EU)は、2025年12月16日に規制を緩和し、「2021年規制比で90%削減まで認める」と発表した。全数を電気自動車(BEV)にしなくても済むことにはなったものの、11g/kmとされる企業別平均CO2排出量規制をBEVとハイブリッド車(HEV)でクリアするのは難しく、プラグインハイブリッド車(PHEV)やレンジエクステンダーEVなど、EV走行が主体のクルマでないと難しいと考えられる。
ただ、実現が難しいとなると、さらなる緩和措置がとられるものとも予想できるが……。いずれにしても、BEV一辺倒の流れが緩み始めているのは間違いない。
日本では経済産業省と国土交通省が2030年度までにメーカー平均で25.4km/リッター(WLTCモード)の企業別平均燃費達成を義務づけている。2016年度の実績値(19.2km/リッター)に対して32.4%の改善が必要であり、ハードルは高い。2030年度基準をクリアするにはBEVやPHEVなどバッテリーリッチな電動車が必要な状況なのはEUと同じ。だが、データを見ると(HEVを含む)エンジン車の燃費が年を追うごとに向上しているのがわかる。
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ふだん使いで30km/リッター
国土交通省が令和7年(2025年)3月に発表した「ガソリン乗用車のWLTCモード燃費平均値の推移」を参照すると、乗用車全体で令和2年(2020年)度に18.5km/リッターだった燃費は、令和5年(2023年)度には19.8km/リッターにまで上昇している。3年で7%も燃費が良くなっているのだ。発電用と走行用の2つのモーターを走行状況に応じて使い分けるストロングハイブリッドの性能進化とラインナップの増大が影響しているのだろうか。
1990年代半ばから2000年代半ばにかけて、欧州を中心に「3リッターカー」という言葉がもてはやされた。欧州では100km走行するのにどれだけの量の燃料を消費するかで燃費を表示するので、3リッターカーは3リッター/100kmを指し、日本風に表記すると33.3km/リッターになる。1999年にフォルクスワーゲンが発売した「ルポ3L TDI」(1.2リッター3気筒ディーゼルエンジンを搭載)がカタログ値で33.3km/リッターの燃費を達成した。1.4リッター直4ガソリン仕様の燃費が14.8km/リッター(10・15モード)だったと記せば、その燃費のすごさがわかるだろうか。
当時の欧州の人たちには実験車然としたキャラクターが受け入れられなかったのか、標準車より割高だったためか、ルポ3L TDIは商業的に成功したとはいえなかった。当時、夢のような燃費に思われた3リッターカーは四半世紀を経た現在、フツーに手に入る。1.5リッター3気筒ガソリンエンジンを組み合わせたハイブリッドシステムを搭載する「トヨタ・アクア」がその代表例だ。最上級グレード「Z」の燃費はルポ3L TDIの時代よりも厳しいモード(WLTC)で計測して33.6km/リッター。燃費のことなど気にせず日常的な使い方をして、メーター表示で30km/リッターを超える数値を実際、確認している。
筆者のなかでは、これが基準。現行トヨタ・プリウスは燃費よりも(決しておろそかにしたわけではない)スタイリングや走りを重視して開発されたが、それでも実燃費は20km/リッターを優に超える。走り方次第では25km/リッターを記録することも可能といった印象だ。
まさに隔世の感
「e:HEV(イーエイチイーブイ)」と呼ぶホンダのハイブリッドシステム搭載車は、気持ち良く走って燃費がいいのが特徴。全長4950mの立派な体格を持つ「アコード」(体格の割に軽く、車重は1580kg)が20km/リッター超の燃費を軽くたたき出すのには驚いた。2モーターのストロングハイブリッドシステム搭載車は20km/リッターを軽く超えて当たり前の印象だ。
ディーゼルエンジン車も同様。個人的に、ディーゼルエンジンの燃費の印象を変えたのは、マツダの「CX-60」や「CX-80」が搭載する3.3リッター直6である。例えば、「XD SP」(2WD)のWLTCモード燃費は19.7km/リッターだが、高速道路主体の走りだと20km/リッターを楽に超える(高速道路モード燃費は22.0km/リッター)。48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせるXDハイブリッドになると、1900kg台の車重にもかかわらずカタログ燃費を超える25km/リッターが視野に入る。輸入車も含め、ディーゼルエンジン搭載車は実燃費20km/リッターが良しあしの判断になる。
個人的には、だが、ディーゼルの燃費に関しては補正が入る。ガソリンよりも比重が約1割大きいからだ。ガソリンの1リッターよりも軽油の1リッターのほうが約1割重い。化石燃料が持つエネルギーは重量に比例するので、同じ1リッターでもガソリンより軽油のほうが多くのエネルギー量を持っていることになる。だから、ガソリンエンジン車よりディーゼルエンジン車のほうが1割程度燃費は良くなって当たり前。見方を変えると、1割差し引いてガソリン車と同等。ディーゼル車で20km/リッターの燃費なら、ガソリン車で18km/リッター相当ということだ。
さらに見方を変えると、ガソリンよりも安い値段でリッターあたり1割も大きなエネルギーを持った燃料が買えるのだから、軽油は大変お得ということになる。
現在ではオルタネーターによるエネルギー回生やアシストを行うシステム(BSG=ベルトスタータージェネレーター)の普及が進み、回生/アシストのデバイスを持たない純エンジン車を探すのが難しいくらいだ。BSGを持つマイルドハイブリッド車を含め、エンジン車に乗って「さすがにこの燃費は……」と苦い顔をしたくなるボーダーラインは、車両サイズや重量を問わず、個人的には15km/リッターだ。
30年前なら燃費が2桁に乗れば手をたたいて喜んでいた。それを思えば隔世の感があるし、技術進化には目を見張るものがある。
(文=世良耕太/写真=フォルクスワーゲン、トヨタ自動車、マツダ、webCG/編集=関 顕也)

世良 耕太
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