待望の7人乗りMPV「ルノー・グランカングー」を大解剖 ライバルにはない魅力はあるか?
2026.01.30 デイリーコラム日本導入は特別仕様車として
ルノー・ジャポンが、ロングボディー・3列シート7人乗りの「グランカングー クルール」を2026年2月5日に発売する。価格は459万円だ(参照)。
カングーをよく知る人なら“クルール”という名称にピンとくるだろう。そう、このグランカングーは「ボディーカラーが魅力の“特別仕様車”」という扱いで、要は常時ラインナップされるカタログモデルではないのだ。ルノー・ジャポンでは、今後も折を見ては、特別仕様車としてカラーの異なるグランカングーを導入していくとしている。
そもそもルノー・ジャポンは、クルール(フランス語で色の意味)と銘打って、これまでもカラフルなカングーを数多く日本に導入してきた。彼らはこの柔軟なカラー展開もカングーの強みとしているのだ。また日本におけるカングーの人気のよりどころが、フランスの商用車らしい機能的な姿、飾り気のない実用車然としたところにもあると分析。そこでこのグランカングーの第1弾も、ブラックバンパー、スチールホイールの質実とした仕様とし、またボディーカラーに過去のクルールで人気だったベージュサハラを採用。サハラ砂漠の砂の色をまとった、今回の導入モデルを仕上げた。
加えて、グランカングー クルールはリアにダブルバックドア(観音開き)を備えている点も特徴として挙げられる。カングーでは定番の装備であるし、既存の2列シート車もダブルバックドアなので、「グランカングーもそれで当然では?」と思われそうだが、実はこれは、日本のために用意された特別な装備なのだ。
日本のファンへの理解が進んだおかげ
そもそも、空間に制約の多い日本の使用環境を思うと、ロングボディーのMPVでは、ダブルバックドアの恩恵は少なくない。日本のミニバンでも競合する輸入MPVでも、リアゲートは跳ね上げ式が一般的だが、これでは扉を開ける際、車両の後方や上方にかなりの空間が必要となるのだ。対してカングーのダブルバックドアは、大きいほうでも横幅が875mm(もう片側は600mm)なので、車両後方にそれ+αのスペースさえあれば、荷物の出し入れが可能。跳ね上げ式と違い、開閉に力をほとんど必要としないという利点もある。
実はグランカングーは、日本でも2023年の「カングージャンボリー」でお披露目されていたのだが、それから2年もかかっての導入となった。その間、3列シートのMPVは日本でも伸長。2025年には、カングーを除く輸入MPVでは、2列シートと3列シートの販売台数がついに逆転した。カテゴリーの定番であるルノー・カングーだが、この一点では明らかに出遅れていた。
もちろん、ルノー・ジャポンも理由もなく競合の伸びを眺めていたわけではない。時間がかかったのは、このダブルバックドアをどうしても採用したかったからだ。本国でのグランカングーはすべてが跳ね上げ式のテールゲートのため、この部分は日本のためだけに改良しなければならなかったという。
当初、フランス本国では、なぜこんな“商用車仕様”が日本で人気なのか、理解ができなかったそうだ。そこでルノー・ジャポンでは、カングージャンボリーにカングーの担当者を招くなどして、日本におけるファンの好みやクルマの使い方を紹介。その結果、今日ではかなりの要望がかなえられるようになったという。
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本格的な7人乗りMPVとして
さてこのグランカングーだが、競合他車と並べてみると、ダブルバックドア以外にも大きな特徴がある。それがリアスライドドアのサイズだ。競合他車がボディーを延ばしてもスライドドアのサイズは変えていないのに対し、グランカングーは大型のスライドドアを採用。その開口部は前後方向で830mmと、2列シートのカングーより180mmも広くなった。さらに、2列目シートが独立してダブルフォールディングするため、3列目の乗降も競合よりかなり容易になっている。
いっぽうで、日本車では一般的な電動スライドドアは、残念ながら採用されなかった。理由はいくつかあるが、やはり本国で設定がないのが最も大きい。日本専用に用意することもできなくはないが、インポーターとして挟み込み防止などの安全性を担保できないこと、そして、そもそもスライドドアの操作に力がそれほどいらないことから、採用は見送られたという。ルノー・ジャポンによると、スライドドアの開閉時には通常12kgほどの力が必要なのに対し、グランカングーは7kg程度ととても軽いのだ。興味のある人は、ぜひディーラーで試してみてほしい。
また、多人数乗車のMPVといえば、気になるのが2列目と3列目の居住性だが、静態で見た限りではあるものの、グランカングーはとても好印象だった。2・3列目とも座席が前後に130mmスライドするので、乗員に合わせて空間を好適にシェアできる。また、その座席もベンチ式ではなく各シートが独立しているため、しっかりと乗員の体をサポートしてくれるのだ。
このあたりは、開発に際して「本格的な7人乗りMPVをつくる」という明確な目標をかかげ、本社の役員たちが積極的に3列目に座り、評価を行ったという。座り心地や快適性に関しては当初から重点が置かれていたそうなので、長距離でも疲れないシートに仕上がっているとのことだ。実際に走らせてどうかのチェックは今後のことになるが、このシート、1脚23kgもあって、しっかりつくり込まれているのは間違いない。取り外しも可能だが、その際は腰を痛めないようご注意いただきたい。
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この空間を使いこなせる人に薦めたい
最後にパワートレインだが、今回導入されるクルマは、1.3リッターガソリンターボエンジンに7段EDCの組み合わせだ。これは2列シート仕様のガソリン車と同じもので、ギア比なども共通となっている。これで1690kgのボディー(5人乗りは1570kg)を引っ張ると聞くと不安になる人もいるだろうが、このエンジンの最大トルクは240N・mと、自然吸気エンジンなら排気量2.4リッター並みだ。WLTCモードの燃費も14.7km/リッターと、2列シート・標準ボディーの15.0km/リッターよりわずかしか低下していない。こうした点を見ると、走りもそれほど悲観する必要はないかもしれない。それでも、日ごろから多人数乗車する人は、極力、試乗して確かめることをお勧めする。競合にはよりトルクフルなディーゼル車もあるので、試乗の印象次第では、そちらも視野に入れて検討するといいだろう。
以上が、グランカングーの概要と実車を見ての印象だ。日本ではミニバンや多人数乗車のMPVというと、大家族の例を除けば、年に数回の“もしも”や“いつか”の機会に備えて選ばれるケースが多い。そうした人にはもちろんだが、このクルマはぜひ、人も荷物もたくさん積んで、長距離のお出かけを楽しむ人にこそ試してみてほしい。コンフォート性においても、ロングホイールベース化による直進安定性や乗り心地の向上にインポーターが自信をみせている。このあたりは2列シートのカングーも合格点以上の実力だが、さらに快適な移動が期待できそうである。
また荷室は、2・3列目を取り外せば最大で3050リッターまで拡張でき、加えてこれらのシートは個別に取り外しができるので、アレンジも自由自在だ。2・3列目の片側だけ外して長尺モノを積めるようにしたり、大切な荷物を残ったシートの間に挟んで固定できるようにしたり、あるいは2列目の中央席だけ外して、6人乗車で前後ウオークスルーを可能にしたりもできる。各席のスライド、折り畳み、跳ね上げ、取り外しのパターンを組み合わせれば、そのアレンジは実に1024通りにもなるという。まさにMPV(マルチパーパスビークル)だ。グランカングーは、この室内を使いこなせるアクティブな人にこそ、ぜひお薦めしたいクルマだ。ただし、外したシートの置き場の確保は忘れずに。
(文=内田俊一/写真=ルノー・ジャポン、webCG/編集=堀田剛資)
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内田 俊一
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