日産は“再挑戦”でホンダは“終了” 新型「エルグランド」発売に見る、プレミアムミニバンの今
2026.07.20 デイリーコラムすっかり成功者の証し
ミニバンかいわいが騒がしくなっている。その中心となっているのは「エルグランド」。トヨタの「アルファード/ヴェルファイア」をライバルとする日産の大型ミニバンであり、上級ミニバンというジャンルを切り開いたパイオニアだ。そのエルグランドが16年ぶりにフルモデルチェンジしたというのだから、ざわつくなというほうが無理だ。
ご存じのように、昨今の上級ミニバン市場はアルファード/ヴェルファイア(以下、アル/ヴェル)の一人勝ち状態。しかも、両者合わせれば2025年通年で約12万台も売れたのだからスゴすぎる。あんな高額車種が月に1万台も売れるなんて、トヨタはとんでもない怪物を生み出してしまったものだ。
聡明(そうめい)な読者諸兄はその背景に「上級セダンから上級ミニバンへの移行」があることにお気づきだろう。日本ではフォーマルセダン需要が激減したが、その理由は、上級ミニバンがそのポジションを奪ったから。それがビジネス需要だけにとどまらず、もっとパーソナルな移動ツールとしても波及。かつて「いつかはクラウン」だったのが、今では「いつかはアル/ヴェル」となっているのである。残クレだろうと何だろうと、かつてのクラウンがそうだったようにアル/ヴェルを手にするということは成功者の証しのようなものだ。
「後席に座る」というビジネスニーズの話に戻ると、その気持ちは筆者もよく分かる。日本の道路事情だと、どうせ移動速度はたいしたことがないから、高速安定性うんぬんでセダンを選ぶよりも、少しくらい走行性能が劣っても、室内が広くて、快適で乗り降りも楽な大型ミニバンのほうがいい。だから大型ボディーの上級ミニバンは2列目のシートがどんどん立派になり、装備もメキメキと向上してきたというわけだ。当然の成り行きだろう。
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「16年ぶり」はたまたま
いっぽうで、市場を切り開いた先駆者でありかつてわが世の春を謳歌(おうか)したエルグランド(こちらは「セドリック/グロリア」や「シーマ」のポジションとなるのだろう)の近年の状況は、みなさんもご存じだろう。
2025年の販売台数は1500台程度。これはフルモデルチェンジ前という影響(2025年秋のジャパンモビリティショーで新型エルグランドを公開してから販売台数がさらに減った)があるとはいえ、その前年も2000台ほど。包み隠さずいえば「アル/ヴェルとは勝負にすらなっていない状況」だった。
気になるのは、そんなエルグランドがなぜ、どんな背景があって、このタイミングでのモデルチェンジを敢行したのかだ。どうして長きにわたってフルモデルチェンジしなかったのだろうか?
「確かに前回のフルモデルチェンジから16年がたちました。われわれも16年経過したタイミングでフルモデルチェンジという計画を立てていたわけではありません。会社の状況や経済の状況、半導体不足などがあり歯車が合わなかったのです」
新型エルグランドの商品企画責任者である中村智志チーフプロダクトスペシャリストはそう言う。どうやらフルモデルチェンジに関して社内で検討されたことはこれまで幾度となくあったものの、最終的に「ゴー」の判断が降りなかったらしい(自動車メーカーではよくあること)。そんな状況を経て、歯車がかみ合って、このタイミングでの新型登場につながったというわけだ。
日産が少し元気のない状況での、待望の「ビッグネームの新たな門出」となるだけに、中村氏と話していると「元気な日産を見せていこう!」という期待がかかっていることが伝わってきた。
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セールスは悪くなさそうだが……
ところで、出てくるクルマもあれば去っていくクルマもある。フェードアウトするといううわさがあるのがホンダの「オデッセイ」だ。同社の国内向け現行車種としては最上級となるミニバンである。
こちらは2025年には8025台とエルグランドを大きく超える販売台数を記録したものの、一部の報道によると「2026年度内で国内販売を終了」という。ご存じのように現行モデルは中国製で、国内では輸入車として扱われている。
ホンダ広報部に終了する背景を訪ねたところ「それに関しては当社から発表したものではございませんので」とのことで、販売終了の公式な理由は不明だ。
年間8000台を販売すれば、ほそぼそとはいえ商売になっている気もする(正直にいえば、むしろそれだけ売れていることに驚いた)のだが、中国での生産体制の都合などもあるのだろうか。これに関してはズバリと結論が出せず申し訳ないが、新しい情報が入ったら続報をお届けしたい。
ところで日産のやる気を感じたのが、残価設定ローン(残クレ)利用における残価率だ。今やクルマ選びの要素としてリセールバリューを重視する人が多く、しかも残価設定ローンを利用する人は増えている。そこで新車を多く売るためには残価率が重要になってくるわけだが、新型エルグランドのそれは「5年後で51%」だという。
驚異的としか言いようがないアル/ヴェルにはかなわないが、なかなかがんばった残価率といえるだろう。少なくとも「残価率が低いから選択肢には入らない」というレベルではないと筆者は思うのだが、いかがだろうか?
(文=工藤貴宏/写真=トヨタ自動車、webCG/編集=関 顕也)
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工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
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