マツダCX-5 L(FF/6AT)
勝負はここから 2026.09.08 試乗記 マツダの最量販SUV「CX-5」の最新モデルに試乗。計画外のフルモデルチェンジによって誕生した3代目は、走りや操作系などに、従来のマツダにはない新しい試みが見られる一台となっていた。失敗の許されない基幹モデルの仕上がりを報告する。プラットフォームは14年もの
マツダCX-5の刷新は9年ぶりだ。クルマのモデルライフが長期化傾向にある近年でも、さすがに9年は長い。ちまたでいわれているように、マツダがある時期まで、CX-5既納客の膨大な買い替え需要を、「CX-30」と「CX-60」で分散吸収しようとしていたのは、ほぼ間違いない。しかし、CX-5は先代の最後の最後まで“世界でいちばん売れるマツダ”であり続けて、マツダはあらためてCX-5の刷新を決意した。
新型CX-5がエンジンを横置きするFFレイアウトながら、新世代「スモール商品群」用のプラットフォームではなく、2012年発売の初代以来のそれを改良して使っているのも、CX-30やCX-60などを含む次世代商品計画に、CX-5が含まれていなかった証左といえる。関係者の話を総合すると、スモール商品群はそもそもCX-5より小さなクルマを想定している。なるほど、リアがトーションビームサスペンションとなるスモール~では、「トヨタRAV4」や「ホンダCR-V」「日産エクストレイル」「スバル・フォレスター」といった最新ライバルを相手にするのは厳しいのだろう。
ちなみに、北米(や中国)ではスモール商品群用プラットフォームを使って、新型CX-5より少し大きい「CX-50」が販売されているが、このクルマは明確に若者をターゲットとして、乗り心地や質感も割り切った商品らしい。関係者によると「上質な乗り心地を求めたCX-5とは、キャラクターからして別物」なのだそうだ。
プラットフォームはキャリーオーバーの改良型ながらも、ホイールベースで115mm、全長もそのまま115mm大きくなっているのは、後席や荷室の空間性能において、先述のライバルに水をあけられてしまったからだ。これまでのCX-5は9年間どころか、初代も含め約14年間にわたってパッケージレイアウトを変えなかった。ゆえに、このクラスとしては絶妙にコンパクトなサイズ感も魅力ではあったが、さすがに限界だったようである。
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刷新された内装の仕立てと機能操作のコンセプト
新型CX-5は先代と比較すると、長さ方面で明らかに大きく立派になっているが、ひと目でCX-5とわかる理由のひとつは、全長が伸びたぶん全高も大きくして、サイドビューの“縦横比”を大きく変えていないからだ。さらに、かさ上げされたフード高による、キャビンを小さく見せる工夫も凝らされているし、サイドウィンドウグラフィックやリアゲートの逆スラント処理は、歴代CX-5のデザイン的特徴の踏襲である。
それに対して、インテリアは大きくテーマを変えた。物理スイッチをできるだけ残す従来のマツダ流から一転して、インストゥルメントパネルから物理スイッチがほぼ消えた。また、これまでのマツダはセンターディスプレイもインテリアデザインと調和した“小さめ”が売り(?)だったが、上級グレードとなる今回の試乗車は、巨大な15.6インチ。室内機能はほぼすべてタッチパネルで操作できるが、走行中は音声入力で事を済ますのが、新たなマツダ流らしい。音声インターフェイスは基本的にGoogleということもあり、都合2日間の試乗では、その聞き取り能力に不満を感じることはなかった。
さらに、ステアリングホイールまで刷新されたインテリアの調度類は、マツダによると“最新高級ホテルや航空会社のプレミアムクラス”のような、良くも悪くもスッキリとしたあつらえとなった。空調吹き出し口を隠しデザインとして周辺のメッキ処理を不要とし、かつてのような隅々までステッチ入りのレザーパッドを必要とするデザインでもなくなった。そうしたハヤリは理解できても、インテリアにかけられる手間や物量が以前より省かれているのも事実。ただ、このクラスでスタート価格が330万円、今回の最上級グレードでもFFなら400万円強の本体価格を考えると、こうしたコスト抑制は不可避だろう。
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操作感覚にみるマツダの方向転換
新型CX-5が同クラスのSUVのなかでハッキリと手ごろな価格となっているのは、インテリアの仕立てや長く使われているプラットフォームに加えて、シンプルなパワートレインによるところも大きいはずである。
新型CX-5に用意されるのは、ひとまず、おなじみの2.5リッター自然吸気エンジン+6段ATのみで、そこに24Vマイルドハイブリッドが新たに組み込まれている。ただ、これはラージ商品群の「Mハイブリッド」とは別物のオーソドックスなマイルドハイブリッドで、Mハイブリッドのような低負荷時のEV走行はできない。
考えてみると、2.5リッターという大きめの自然吸気エンジンを、ほぼ素で味わう機会は今やなかなか貴重。低速トルクも細くはないが、直噴ターボのような図太さもなく、回転上昇とともにスカッと伸びていく自然吸気フィーリングは素直に気持ちいい。
先代よりエンジンのピーク性能は下がって車重も増えているのに、体感では小気味いいのは、アクセル特性が“早開け”方向に改変されているのも大きいと思われる。開発担当氏によると、CX-5のマイルドハイブリッドは、加速時などに高まる電装系の負荷をおぎなうのが主目的で、モーターによる駆動アシストは即座に体感できるレベルではないとか。
従来のマツダは“人馬一体”に求道的にこだわって、アクセル特性もシブめの傾向だったが、同じ開発担当氏によると、新型CX-5はあらためて「お客さま目線を起点としたクルマづくり」に立ち返ったという。そのコンセプトは、シャシーの調律にも貫かれている。
アクセルペダルはレスポンスだけでなく踏力自体も明らかに軽くなっており、同時にパワーステアリングもはっきり軽くなった。ペダルやステアリングも比較的重めの調律がお約束だったマツダとしては大きな方針転換だ。
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これまでのマツダとはひと味ちがう
サスペンションにも目立った新機軸はないが、ダンパー内部のバルブ構造、直径、内圧、あるいはサスペンションのコイル、バンプストッパー、スタビライザー、そしてタイヤ……という膨大な組み合わせから、マツダが長年取り組んできたモデルベース開発を駆使して設定を絞り込んでいったという。なかでも“開発の一番ピン”だったのはダンパーの初期応答だそうで、動き出しからしっかり減衰するダンパーが実現したことで、バネ類はソフトにできた。その結果、自慢の操縦安定性はさらに進化させながら、乗り心地も向上させられたそうだ。
実際、低速での乗り心地やフラット感は先代より好印象で、今回のFFは4WDより乗り心地が快適に感じられる瞬間が多かった。先述の軽くなったパワーステアリングともあいまった軽快でフレンドリーな手応え・肌ざわりは、これまでのマツダとはひと味ちがう。フットワークをしなやかにできたことで、車重が4WDより60~70kg軽いというFFのメリットが、乗り心地でもいい方向に転がっているのかもしれない。
新型CX-5はパワートレインやプラットフォームは従来改良型であるいっぽうで、インフォテインメントや先進安全をつかさどる電子プラットフォームは完全刷新された。先進運転システム(ADAS)のハードウエアは最新世代の「トヨタセーフティセンス」と共同開発(制御はマツダ独自)で、アダプティブクルーズコントロールや日常域から車間距離を検知する「プロアクティブドライビングアシスト」のこなれた作動感も、これまでのマツダとは一線を画す。
新型CX-5の販売立ち上がりは好調というが、本当の勝負は新車効果が落ち着いてからだろう。なるほど後席や荷室は明らかに広くなった新型CX-5だが、先代までの絶妙なサイズ感や、キレのいいスモールキャビンスタイルが少しばかり後退したのも否定できない。そのぶんを、今どきとしては明らかに手頃な価格と新しい乗り味、大型ディスプレイ、最新ADAS、そして(同じ2.5リッターならWLTCモード値で約1割)改善した燃費で補えるか……だ。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=堀田剛資/車両協力=マツダ)
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テスト車のデータ
マツダCX-5 L
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1860×1695mm
ホイールベース:2815mm
車重:1710kg
駆動方式:FF
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:6段AT
エンジン最高出力:178PS(131kW)/6000-6200rpm
エンジン最大トルク:237N・m(24.2kgf・m)/3800-4000rpm
モーター最高出力:6.5PS(4.8kW)/1000rpm
モーター最大トルク:60.5N・m(6.2kgf・m)/100rpm
タイヤ:(前)225/55R19 99V/(後)225/55R19 99V(ブリヂストン・アレンザ001)
燃費:15.2km/リッター(WLTCモード)
価格:407万円/テスト車=426万0300円
オプション装備:シートカラー|インテリアコーディネーション<スポーツタン>(4万4000円)/パノラマサンルーフ(12万1000円) ※以下、販売店オプション トノカバー(2万5300円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:1637km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(5)/山岳路(1)
テスト距離:580.8km
使用燃料:46.5リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:12.5km/リッター(満タン法)/12.8km/リッター(車載燃費計計測値)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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