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フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)

運転って楽しいんだぜ! 2026.10.13 試乗記 新井 一樹 電気自動車(BEV)からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
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あの言葉を思い出す

「若者は借金をしてでもこのクルマを買った方がいい」

今回無事に取材を終え、フィアット500ハイブリッドから降りたとき、その昔、ある自動車雑誌に書かれていた海外試乗記の一文をふと思い出した。

試乗記で取り上げられていたクルマはフランスブランドのBセグメントハッチバックで、アマチュア向けのモータースポーツへの参加も視野に入れたスポーティーな仕様、いわゆるホットハッチと呼ばれるモデルで、500ハイブリッド同様、パワートレインは自然吸気エンジンとMTの組み合わせで、いかにもクルマ好きの琴線に触れるようなクルマだった。書いたのは、『webCG』にも寄稿されている今尾直樹氏。今からちょうど33年前のことである。

なぜここまで鮮明に覚えているかというと、まだ自動車雑誌のいち読者だった私は、この今尾さんの記事と一文に感化され、そして背中を押され、このクルマを3カ月後に購入したからだ。日本市場に正規では導入されないことを知ると、車両価格の200万円を親から借りる算段を付け、並行輸入も手がけていた中古車屋に駆け込み、そしてハンコを押した。食い入るように今尾さんの記事を読み、懸命にショップを探し、不安を抱きながら契約し、今か今かとクルマが船で運ばれるのを半年以上待ち、小躍りするようにクルマを取りに行き、天にも昇る気持ちで帰路についたことを、今でもすべて鮮明に覚えている。昨日食べた晩ごはんの記憶ですら怪しいほど記憶力が低下しているにもかかわらずだ(笑)。

どうしてこの一文を思い出したか。その前に、まずはフィアット500ハイブリッドの紹介をしたいと思う。

2025年11月に発表された「フィアット500ハイブリッド」。もともとBEV専用車として設計された現行型の500をベースに、マイルドハイブリッド機構付きのエンジンを搭載したものだ。
2025年11月に発表された「フィアット500ハイブリッド」。もともとBEV専用車として設計された現行型の500をベースに、マイルドハイブリッド機構付きのエンジンを搭載したものだ。拡大
日本で正規輸入販売される現行型「500」は、BEVの「500e」のみ。今回の取材車両は、輸入車販売店のカーボックスの横浜店が、並行輸入したものとなる。
日本で正規輸入販売される現行型「500」は、BEVの「500e」のみ。今回の取材車両は、輸入車販売店のカーボックスの横浜店が、並行輸入したものとなる。拡大
インテリアの設計は基本的にBEVの「500e」と共通。センタークラスターからボタン式のシフトセレクターが廃され、代わりにMTのシフトノブが設置された程度だ。
インテリアの設計は基本的にBEVの「500e」と共通。センタークラスターからボタン式のシフトセレクターが廃され、代わりにMTのシフトノブが設置された程度だ。拡大
テールゲートを飾る「HYBRID」のバッジ。従来型では1.2リッター直4自然吸気の「ファイア」に、0.9リッター2気筒ターボの「ツインエア」と、さまざまなエンジンが設定されていた「500」だが、現行型に設定されるのは、マイルドハイブリッド機構付きの1リッター直4自然吸気のみとなる。
テールゲートを飾る「HYBRID」のバッジ。従来型では1.2リッター直4自然吸気の「ファイア」に、0.9リッター2気筒ターボの「ツインエア」と、さまざまなエンジンが設定されていた「500」だが、現行型に設定されるのは、マイルドハイブリッド機構付きの1リッター直4自然吸気のみとなる。拡大
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数奇ないきさつで生まれたハイブリッド

現行型フィアット500がデビューしたのは2020年。1936年にデビューした“トッポリーノ”の愛称でおなじみの初代から数えて、4代目となる。

この新型は、「2035年以降にエンジン車の販売を全面的に禁止する」「二酸化炭素の排出量を、2030年には2021年比で55%、2035年には同じく100%削減する」という欧州委員会(EU)の政策方針を先取りするかたちで、全モデルがBEVとなっていた。いずれ内燃機関をあきらめなくてはいけないなら、先手必勝ということだったのか。またはシティーコミュータ―として用いられることの多い500は、BEVと相性がいいという判断だったのか。理由は定かではないが、ハイブリッドを含むエンジン搭載車は継続販売された既存の3代目に一任し、新型は車名も「500e」としてBEV一本で勝負に出ることにしたのである。

ところが、その勝負は吉とは出なかった。2022年に導入された日本市場だけでなく、主力市場の欧州でも販売は低迷。生産を担っていたイタリア・ミラノのミラフィオーリ工場は、何度となく操業停止を余儀なくされる。内燃機関を積む3代目も継続販売していたものの、EUのサイバーセキュリティー法などにより、長きにわたって併売することは難しい状況で、こちらも2024年で生産終了せざるを得ないという、まさに八方ふさがりとなってしまったのだ。そこで企画、開発されたのが、この500ハイブリッドである。

先代の発展形では各種法規に対応できないということで、ハイブリッドモデルは新型でBEVの500eをベースに内燃機関仕様を仕立てる手法を採った。ボンネットの下にはモーターの代わりに、1リッター直3自然吸気(NA)エンジンにベルト駆動の12Vモーターを組み合わせたハイブリッドユニットを搭載。ボディーの床下には駆動用バッテリーを外して燃料タンクを積み、見事、BEV専用車からハイブリッド車をつくり出した。なお、変速機は6段MTのみで、デュアルクラッチ式自動MTをはじめ、2ペダル仕様の設定はない。

メーターパネルは7インチのフル液晶で、往年の“ヌオーヴァ チンクエチェント”の計器を思わせる速度計のセンター表示(写真)に、予防安全システムの作動状況、パワーフロー、トリップメーター連動の車速・燃費情報など、さまざまな表示機能が備わる。
メーターパネルは7インチのフル液晶で、往年の“ヌオーヴァ チンクエチェント”の計器を思わせる速度計のセンター表示(写真)に、予防安全システムの作動状況、パワーフロー、トリップメーター連動の車速・燃費情報など、さまざまな表示機能が備わる。拡大
10.25インチのワイドなセンターディスプレイ。インフォテインメントシステムはステランティス車でおなじみの「Uconnect」で、Android AutoやApple CarPlayといった、携帯端末との連携に対応している。
10.25インチのワイドなセンターディスプレイ。インフォテインメントシステムはステランティス車でおなじみの「Uconnect」で、Android AutoやApple CarPlayといった、携帯端末との連携に対応している。拡大
ステアリングホイールに備わるクルーズコントロールの操作スイッチ。同車のクルコンは、シンプルな車速固定式だ。
ステアリングホイールに備わるクルーズコントロールの操作スイッチ。同車のクルコンは、シンプルな車速固定式だ。拡大
日本でも人気を博しそうな「500ハイブリッド」。英国向けに右ハンドル仕様も用意されているのだが、トランスミッションの設定が3ペダルのMTしかないことから、わが国へは正規導入されていない。
日本でも人気を博しそうな「500ハイブリッド」。英国向けに右ハンドル仕様も用意されているのだが、トランスミッションの設定が3ペダルのMTしかないことから、わが国へは正規導入されていない。拡大

3種類のボディータイプと3つのグレードを用意

ハイブリッド化による変更は最小限で、構成部品の85%程度が500eと共通だという。フィアットとしては、ステランティスの小型車用主力ユニットである1.2リッター直3ターボのハイブリッドを搭載したかったようだが、500の小さなエンジンルームには収まらず、泣く泣く断念したという。

約2年という短い開発期間を経て、500ハイブリッドは2025年11月に生産を開始。拠点は500eと同じミラフィオーリ工場だ。生産規模は年間10万台。欧州向けの3代目はポーランドのティヒ工場製だったので、イタリア産業界から見ると500ハイブリッドの誕生は吉となった。もちろん、500eが売れていれば、それが一番よかったのだろうが……。

ボディーバリエーションは500e同様、「ベルリーナ」と呼ばれる3ドアハッチバックと、「3+1」というボディー右側に観音開きの2ドアを備えたモデル、さらにソフトトップの屋根とリアウィンドウが開閉できる「カブリオ」の3タイプを設定。グレードは「ポップ」「アイコン」「ラ・プリマ」の3種類で、いずれも違いは装備と見た目の装飾のみ。タイヤ&ホイールのサイズが異なる以外に走りに関する差はない。ボディーカラーには試乗車の「イエローゴールド」を含む、全7色が用意されている。

今回の取材車は「トリノ」と呼ばれる初版限定の特別仕様車で、3種類のカタログモデルとは別に設定されたものだ。「ミラノ」から「ジュニア」へと改名を強要されたアルファ・ロメオの例にもあるとおり、イタリアでは最近、製品への地名の使用に神経質になっているが、500ハイブリッドはまさにトリノで生産されるモデルだからトリノを名乗ることが許された。仮にポーランド製だったらこの名称は許されなかっただろう。ベースとなるのは中間グレードであるアイコンのベルリーナで、専用の表皮を持つファブリックシートを特別装備。リアサイドウィンドウ下には「TORINO」の文字も刻まれている。

今回、日本に正規導入されていないこの車両を貸してくれたのは、クルマの輸入や販売、整備を手がけるカーボックスの横浜店。ディーラーの新車も取り扱っている彼らだが、日本市場には正規で導入されていない、いわゆる並行輸入車の輸入と販売も得意としている。

リアサイドウィンドウのモールを飾る「500 TORINO」のロゴ。今回の取材車は、初版限定モデルの「500トリノ」で、そのモデル名は、現行型500がトリノのミラフィオーリ工場で生産されていることに由来する。
リアサイドウィンドウのモールを飾る「500 TORINO」のロゴ。今回の取材車は、初版限定モデルの「500トリノ」で、そのモデル名は、現行型500がトリノのミラフィオーリ工場で生産されていることに由来する。拡大
シート表皮はライトグレーのファブリックとブラックの合皮の組み合わせで、広範に施されたヘリンボーン柄と、背もたれに刺しゅうされた「500 FABBRICA ITALIANA AUTOMOBILI TORINO」のロゴが目を引く。
シート表皮はライトグレーのファブリックとブラックの合皮の組み合わせで、広範に施されたヘリンボーン柄と、背もたれに刺しゅうされた「500 FABBRICA ITALIANA AUTOMOBILI TORINO」のロゴが目を引く。拡大
先代の「500」や、設計を同じくする現行の「500e」と同様、リアシートの空間はかなり限定的。この後席の居住性は、片側観音開きドアの「3+1」仕様でも変わらない。
先代の「500」や、設計を同じくする現行の「500e」と同様、リアシートの空間はかなり限定的。この後席の居住性は、片側観音開きドアの「3+1」仕様でも変わらない。拡大
センタークラスターのオープントレーには、現行型「500」の生産拠点があり、フィアット創業の地でもあるトリノの景観がシルエットで描かれている。
センタークラスターのオープントレーには、現行型「500」の生産拠点があり、フィアット創業の地でもあるトリノの景観がシルエットで描かれている。拡大

パワーユニットは1リッターNA+マイルドハイブリッド

内外装における500eとの違いは最小限にとどまる。外観ではラジエーターを冷やすために、フロントマスクに備わる500のエンブレム下にグリルが新設されたくらいで、ボディーサイズも同一。内装でも6段のMTレバーがインパネの中央に追加された程度である。ちなみに、シフトレバーの意匠は先代のMTモデルと同じだ。

パワーユニットは既述のとおり、先代でも使用されていた1リッターNAエンジン「FireFly(ファイアフライ)」に12V電源のスタータージェネレーターを組み合わせたマイルドハイブリッド仕様。モーターはベルトを介してエンジンの始動と動力のアシスト、さらにエネルギーの回生を行う。エンジンのアウトプットは自然吸気の軽自動車とほぼ同じで、最高出力65PS、最大トルク92N・m。資料にモーターのアウトプットやシステム総合出力の記載を見つけることはできなかったが、48V電源を用いたマイルドハイブリッドでも加勢は数馬力程度だから、それ以下と考えるのが妥当だろう。システム総合出力の記載がないのも、モーターが加勢してもエンジンのアウトプットに影響を及ぼすほどではないからに違いない。

メーカー公表値の0-100km/h加速は16.2秒で、こちらは自然吸気エンジンを搭載した軽自動車といい勝負。最高速度は155km/hだ。WLTPの燃費は5.3リッター/100km、日本でおなじみのリッター当たりに換算すると18.9km/リッターとなる。ちなみに、220km程度走った今回の取材では18.2km/リッターを記録している。車両重量は「トヨタ・ヤリス」など日本のBセグメントモデルと同等の1090kg。駆動用の12Vバッテリーはリチウムイオン式で、運転席の下、左ハンドルなのでボディーの左側に搭載されている。

外装の意匠も基本的に「500e」と共通。フロントの「500」のロゴの下に、細いグリルが設けられた程度だ。
外装の意匠も基本的に「500e」と共通。フロントの「500」のロゴの下に、細いグリルが設けられた程度だ。拡大
パワーユニットは先代モデルにも設定のあった(ただし日本には未導入だった)、1リッター直3エンジン「ファイアフライ」と12Vマイルドハイブリッドの組み合わせ。レスポンス等を切り替えるドライブモードセレクターなどの機能・装備はない。
パワーユニットは先代モデルにも設定のあった(ただし日本には未導入だった)、1リッター直3エンジン「ファイアフライ」と12Vマイルドハイブリッドの組み合わせ。レスポンス等を切り替えるドライブモードセレクターなどの機能・装備はない。拡大
タイヤサイズは195/55R16。試乗車はグッドイヤーのコンフォートタイヤを装着していた。
タイヤサイズは195/55R16。試乗車はグッドイヤーのコンフォートタイヤを装着していた。拡大
センターコンソールには深底の収納ボックスを配置。内部にはUSB Type-A/Type-Cポートと、12Vの電源ソケットが備わる。
センターコンソールには深底の収納ボックスを配置。内部にはUSB Type-A/Type-Cポートと、12Vの電源ソケットが備わる。拡大

この盛り上がりは自然吸気ならでは

実際に走らせた感想は痛快のひと言。エンジンの出力と車両重量のとおり、加速力は軽自動車のそれ。つまり速くない(笑)。しかし、加速フィールがとてもいいのだ。2000rpmくらいからトルク感が増してきて、3000-4000rpmあたりでの回転の高まり方は、近年コンパクトカーでも主流となっているダウンサイジングターボでは到底味わえない、自然吸気ならではの気持ちよさを有していた。3気筒独特のビートが利いたエキゾーストノートも最高。走らせたいという気持ちをさらに高めてくれる。この回転域ではモーターの影響はかなり小さく、純内燃機関車の魅力を存分に楽しめるのだ。

モーターが効果を発揮するのは1000-2000rpm付近。トルク値と車両重量を考えれば、本来なら加速なんか期待できない領域だが、500ハイブリッドはスルスルと車速を上げていく。エンジン音も静かで、3000-4000rpm辺りでの走りとは印象が大きく異なり、別のクルマに乗っているかのようだ。また、興味深いのはシフトインジケーターで、2000rpmを超えるとシフトアップを促してくる。燃費的にはモーターがその効果を存分に発揮する1000-2000rpmの領域を使うのが正解なのだろう。

エンジンと同じくらいに心地いいのが6段MTだ。スコッ、スコッとシフトレバーが次のギアへと気持ちよく吸い込まれていく。操作感に節度があり、ストローク量も適切で、とくに2速から3速のフィーリングがサイコー。ビリヤードの玉のようにツルツルしていてちょっと大きめのシフトレバーを無駄に操作したくなるくらい、操りがいがあるのだ。

クルマの動きはショートホイールベース車の常でピッチングがちょっと多め。初期ロールが早く、ステアリングもけっこうクイックなので、雨天時の高速でのレーンチェンジではやや気を使うくらいに動きが俊敏だ。しかし、これがワインディング路では功を奏する。ステアリングを切ると間髪入れずに鼻先がスッと内側に向いてくれるのだ。初期のロールは速めだが、そのあとはしっかりとネバってくれるので不安感はない。エンジンパワーに縛られない下り坂の、しかも細かいコーナーが続くようなシチュエーションではスーパースポーツカーのお株を奪うような走りだって不可能ではない。ブレーキもモーターとの協調制御を行っていないので、ハイブリッドにありがちな違和感がないのもシャシーの好感度を高めている理由のひとつだ。

絶対的な動力性能は軽自動車と大差ない「500ハイブリッド」だが、小排気量の自然吸気エンジンをマニュアルトランスミッションで操る楽しさは、何物にも代えがたい。
絶対的な動力性能は軽自動車と大差ない「500ハイブリッド」だが、小排気量の自然吸気エンジンをマニュアルトランスミッションで操る楽しさは、何物にも代えがたい。拡大
6段MTのシフトセレクターは、位置も操作感も文句なし。リバースギアは、下部の漏斗(ろうと)型のメッキカバーを引き上げてセレクトする。
6段MTのシフトセレクターは、位置も操作感も文句なし。リバースギアは、下部の漏斗(ろうと)型のメッキカバーを引き上げてセレクトする。拡大
ホイールハウスを避けるためか、3ペダルの配置はやや内寄りの印象。もちろん操作に違和感があるほどではなく、軽快に操作できる。
ホイールハウスを避けるためか、3ペダルの配置はやや内寄りの印象。もちろん操作に違和感があるほどではなく、軽快に操作できる。拡大
ステアリングホイールは2スポークのフラットボトム型。表皮にはエコレザーを用いている。
ステアリングホイールは2スポークのフラットボトム型。表皮にはエコレザーを用いている。拡大
サスペンションはフロントがマクファーソンストラット式で、リアがトーションビーム式。短いホイールベースもあって、ハンドルを切るとクルリと向きを変える。
サスペンションはフロントがマクファーソンストラット式で、リアがトーションビーム式。短いホイールベースもあって、ハンドルを切るとクルリと向きを変える。拡大

今のクルマが失ってしまったものがある

現代の基準で見たら、500ハイブリッドは高い水準にあるクルマではない。このあと日本市場にも導入されるフィアットの最新モデル「グランデパンダ」のほうが速いし、快適だし、使い勝手もいいし、さらにコストパフォーマンスにも優れるだろう。そういった尺度で測ったら500ハイブリッドに勝ち目はない。しかし、クルマを自分で動かしている、クルマの操作は楽しい、奥が深いと実感できるのは、間違いなく500ハイブリッドのほうだ。昔のクルマはすべてそうだったじゃないかと言う方も多いだろう。それはそのとおりだと思う。近年、そういうクルマはめっきり少なくなってしまった。500ハイブリッドには昔のクルマにはなかったハイブリッドモーターが装着されているけれど、出力が小さくて作動範囲が限定的なため、500ハイブリッドの魅力を妨げるようなことにはなっていない。

若者のクルマ離れが叫ばれるなか、クルマの魅力を伝えるために、所有する喜びやドライブする楽しさを訴えたり、モータースポーツへの参加を促したりすることももちろん必要だ。しかし、クルマそのものの動かす魅力や楽しさを体験してもらうことも、裾野を広げることにつながるはず。

そう考えていたとき、かつて今尾氏が試乗記に記した冒頭の一文を思い出したのだ。「若者は借金をしてでもこのクルマを買った方がいい」。確かに436万5000円という価格は、同じ輸入車でも正規モデルならひとクラス上のクルマが狙える。日本車であれば、ふたクラス上にも手が届くかもしれない。しかし、それらでは得られない別の魅力が、このクルマには備わっている。500ハイブリッドのようなクルマで育った私は思うし、それを若者にもぜひ味わってほしい。もちろん若者だけでなく、この乗り味を知る、私と同世代のシニアにもオススメです。

(文=新井一樹/写真=向後一宏/編集=堀田剛資/車両協力=カーボックス横浜店)

ボディーカラーは全7種類の設定だが、「アイスホワイト」を除く6色は、いずれも有償のオプションカラーとなる。
ボディーカラーは全7種類の設定だが、「アイスホワイト」を除く6色は、いずれも有償のオプションカラーとなる。拡大
空調はタッチスクリーンでも操作が可能だが、その直下にボタン式のコントロールパネルが配されているため、わざわざこの画面を呼び出して使う必要性は感じられなかった。
空調はタッチスクリーンでも操作が可能だが、その直下にボタン式のコントロールパネルが配されているため、わざわざこの画面を呼び出して使う必要性は感じられなかった。拡大
ラゲッジスペースの容量は183リッター。後席をたためば440リッターまで拡張できる。
ラゲッジスペースの容量は183リッター。後席をたためば440リッターまで拡張できる。拡大
最新のクルマが失いつつある、プリミティブな操る楽しさが感じられた「500ハイブリッド」。運転に興味のある若者にも、昔のクルマを知るベテランにもお勧めしたい。
最新のクルマが失いつつある、プリミティブな操る楽しさが感じられた「500ハイブリッド」。運転に興味のある若者にも、昔のクルマを知るベテランにもお勧めしたい。拡大

テスト車のデータ

フィアット500トリノ ハイブリッド

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3620×1680×1510mm
ホイールベース:2320mm
車重:1090kg
駆動方式:FF
エンジン:1リッター直3 DOHC 12バルブ
モーター:ベルト式スタータージェネレーター
トランスミッション:6段MT
最高出力:65PS(47.8kW)/5000rpm
最大トルク:92N・m(9.4kgf・m)/3500rpm
タイヤ:(前)195/55R16 91V/(後)195/55R16 91V(グッドイヤー・エフィシェントグリップ パフォーマンス)
燃費:5.3リッター/100km(約18.9km/リッター、WLTPモード)
価格:436万5000円/テスト車=450万円
オプション装備:ボディーカラー<イエローゴールド>(13万5000円)

テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:386km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:220.6km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:5.5リッター/100km(約18.2km/リッター、車載燃費計計測値)

フィアット500トリノ ハイブリッド
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