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レクサスES350h(FF/CVT)

比べてみれば圧倒的 2026.10.24 試乗記 今尾 直樹 「レクサスES」がフルモデルチェンジ。8代目となる新型ではボディーがググッと大きくなったほか、デザインも一気に現代的に。さらにトヨタグループでは最新鋭のパワーユニットを積むなど、中身も外身も刷新されている。2.5リッターハイブリッドモデルを試す。
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高級車のオーラ

レクサスの新型ESは、電池式電気自動車(BEV)とハイブリッド車(HEV)の二刀流に変身したところが新しい。今回試乗したのは、HEV、2.5リッター直4+モーターの350hである。駆動方式にはAWDもあるけれど、試乗車はFWDで、車両価格は790万円。坪単価で考えると、破格に安い! あとで計算してみよう。

そう。新型ESの最大の特徴は、この大きくなったボディーにある。スリーサイズは全長×全幅×全高=5140×1920×1555mmで、先代比だと165mmも長く、55mm幅広く、110mmも高い。全高増はフロアに電池を敷きつめるBEVとの共用アーキテクチャーゆえだ。トヨタが新たに開発した2ウェイのGA-Kプラットフォームである。

ホイールベースは+80mmの2950mm。これが後席の広大なレッグルームを生み出している。今回のES350hには設定がないけれど、オットマン付きで、リアシートがリクライニングする後席快適仕様「Rrコンフォートパッケージ」が「ES350e」では選べる。

エクステリアは、ご覧のようにガラリと変わった。まさにカッティングエッジ。1960年代から1970年代に移行した感じ。フロントの造形は基本的にBEVと同じだけれど、HEVでは左右のライトをつなぐように、薄型の冷却用のグリルが設けられている。これがあるだけで、正統派の自動車っぽい。と思ったりするのは先入観のたまものか。

その意味では、リアのデザインのほうが未来的だ。「LEXUS」の発光ロゴと、直線の赤いランプ、その下の縦型のウィンカーの造形が、なぜかは知らねど、筆者にはアメリカ車を思わせる。アメリカ=豊かさ、だとすると、高級車のオーラを放っているのだ。

「LS」と並んで1989年のブランド設立以来のオリジナルメンバーである「レクサスES」。新型は8代目。
「LS」と並んで1989年のブランド設立以来のオリジナルメンバーである「レクサスES」。新型は8代目。拡大
新型は同じシャシーでHEVとBEVの両方を展開できるようになったのが特徴。ボディーの全長は5140mmにも達しており(先代比で+165mm)、こんなに大きなFFベースのセダンは珍しい。
新型は同じシャシーでHEVとBEVの両方を展開できるようになったのが特徴。ボディーの全長は5140mmにも達しており(先代比で+165mm)、こんなに大きなFFベースのセダンは珍しい。拡大
今回の試乗車は2.5リッターハイブリッド「ES350h」のFWD車(790万円)。FWDでBEVの「350e」と同価格でシリーズ最廉価だが、BEV版はCEV補助金の対象(令和7年度は130万円)となっているため、総支払額にはだいぶ差が出る。
今回の試乗車は2.5リッターハイブリッド「ES350h」のFWD車(790万円)。FWDでBEVの「350e」と同価格でシリーズ最廉価だが、BEV版はCEV補助金の対象(令和7年度は130万円)となっているため、総支払額にはだいぶ差が出る。拡大
ボンネットには波打つような形状のプレスラインをあしらうなど、デザインは細部まで凝っている。この写真では上がって下がるサイドの複雑なプレスラインも確認できる。
ボンネットには波打つような形状のプレスラインをあしらうなど、デザインは細部まで凝っている。この写真では上がって下がるサイドの複雑なプレスラインも確認できる。拡大
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未来の装備が現実に

ドアを開けると、さらなる未来が待っている。スターターのボタンを押すと、シートとステアリングホイールがスーッと動いて適当なところで止まるのは、初代「レクサスLS」からの伝統である。わかっちゃいるけど、うれしい心持ちがする。

でもって、眼前のステアリングホイールの造形が新しい。オクタゴンの上半分のメーターナセルのなかに、スエード調素材が用いられ、その内側に液晶メーターが鎮座している。ステアリングホイールの中央パッドにも変形の八角形が用いられている。ゆるやかな造形の反復と、選ばれた素材の織りなすハーモニー。パッドの「LEXUS」のロゴのデザインもいい。シフトレバーが消え、「エレクトロシフトマチック」なる小さなスイッチに変更されたことでセンターコンソールがスッキリしてもいる。

世界初の「レスポンシブヒドゥンスイッチ」も、内装のシンプル&クリーンに大いなる貢献をしている。ダッシュボードになにげなく手を近づけるとアイコンが点灯する、その意味ではシンプルな仕掛けだ。普段は真っ暗で、そこにはなにもない。手を近づけると、スイッチが現れる。おお。なぜか、筆者は1970年代初めのイギリスのSF特撮ドラマ『謎の円盤UFO』を思い出した。ストレーカー司令官、21世紀は猛烈なスピードで未来が現実になっている。

システム最高出力は248PSで、WLTCモードの燃費は25.4km/リッター(先代モデルは218PSと20.6km/リッター)。トヨタの第6世代ハイブリッドを搭載するのは、国内では新型「RAV4」のPHEVに続く2例目だ(HEVでは初)。
システム最高出力は248PSで、WLTCモードの燃費は25.4km/リッター(先代モデルは218PSと20.6km/リッター)。トヨタの第6世代ハイブリッドを搭載するのは、国内では新型「RAV4」のPHEVに続く2例目だ(HEVでは初)。拡大
歴代の「ES」が受け継いできたゆったりとしたキャビンは新型でも健在。「350h」のインテリアカラーはこの試乗車の「ホエシト」のほか、「ブラック」と「ヘーゼル」も選べる。
歴代の「ES」が受け継いできたゆったりとしたキャビンは新型でも健在。「350h」のインテリアカラーはこの試乗車の「ホエシト」のほか、「ブラック」と「ヘーゼル」も選べる。拡大
タッチスクリーンのサイズは14インチ。あまり声高にうたわれてはいないが、新型「RAV4」と同様にトヨタの新しいソフトウエアプラットフォーム「Arene(アリーン)」を採用している。
タッチスクリーンのサイズは14インチ。あまり声高にうたわれてはいないが、新型「RAV4」と同様にトヨタの新しいソフトウエアプラットフォーム「Arene(アリーン)」を採用している。拡大
タッチスクリーンの下には「レスポンシブヒドゥンスイッチ」が搭載されており、手を近づけるとアイコンが表示される(上の写真と見比べていただきたい)。タッチスイッチではなく、しっかりと押し込める。
タッチスクリーンの下には「レスポンシブヒドゥンスイッチ」が搭載されており、手を近づけるとアイコンが表示される(上の写真と見比べていただきたい)。タッチスイッチではなく、しっかりと押し込める。拡大

乗り心地もハンドリングも素晴らしい

ES350hに乗り込んだのは中央道の談合坂PAで、走りだした刹那、その静かさと滑らかな乗り心地に感銘を受けた。レクサス=トヨタ車の乗った刹那の心地よさは世界最高レベルである。と筆者はあらためて思った。

とりわけES350hの、まるでエアサスペンションのような快適さ。ストローク感のある、ふわり、ふわふわの足さばき。しっとり感もある。上級モデルには「AVS」なる可変ダンパーもあるけれど、FDWの350hは純粋な機械式というから素晴らしい。先代で採用したカヤバの「スイングバルブ(極微低速バルブ)ショックアブソーバー」のようなダンパーが使われている、と想像する。

タイヤは前後235/55R19と穏当なサイズの「ダンロップeスポーツマックス」であることがクルマの性格を明瞭に示している。転がり抵抗の低減を重視したこのタイヤ、弱点はトレッド面の硬さにあるようで、路面が洗濯板みたいなところだと、垂直方向の振動を伝えてくる。そういう路面が中央道の大月JCTから富士吉田線に至るトンネルのなかに1カ所だけある。そこを60km/hぐらいで通過したときに、この現象があった。ご参考になれば幸いです。

もっとも、今回気になったのはこのときだけで、FWDのES350hはほとんどの路面で、なかんずく高速巡航は極めて快適だった。スムーズな路面での、のほほんとした、文化系の香りが漂うような乗り心地でもって、緊張感漂う日常を送る都会のビジネスマンたちの心を癒してくれるのではあるまいか。

ハンドリングは、この巨体を考えるとたまげる。河口湖近辺の、ちょっとしたワインディングロードで試しただけですけれど、じつに気持ちよくノーズが入る。全長5m超、ホイールベース3m近い巨体を思うと信じがたい。従来よりも小径になったステアリングホイールはロックトゥロックが2回転ちょっとしかない。それは「バリアブルラックギア」と呼ばれる、可変ギアレシオのステアリングを採用しているからだ。舵角が大きくなると、クイックなギア比で4WSみたいにクイッと曲がる。これは駐車時に便利。舵角が小さいときはスローなギア比になって高速時の安定性に寄与する。

足まわりはフロントがストラットでリアがマルチリンク。上位グレードのような可変ダンパーは備わっていないものの、乗り心地は非常に良好だ。
足まわりはフロントがストラットでリアがマルチリンク。上位グレードのような可変ダンパーは備わっていないものの、乗り心地は非常に良好だ。拡大
液晶式のメーターパネルはスエード調の素材を敷き詰めた台座の上にレイアウトされる。手が触れるところではないが、質感アップに大きく寄与している。
液晶式のメーターパネルはスエード調の素材を敷き詰めた台座の上にレイアウトされる。手が触れるところではないが、質感アップに大きく寄与している。拡大
12.3インチのメータースクリーンは六角形にカットされる。表示レイアウトは多彩に用意されており、ステアリングの左スポーク上のスイッチで簡単に変えられる。
12.3インチのメータースクリーンは六角形にカットされる。表示レイアウトは多彩に用意されており、ステアリングの左スポーク上のスイッチで簡単に変えられる。拡大
ステアリングスイッチにも「レスポンシブヒドゥンスイッチ」を採用。インストゥルメントパネルと同様、こちらもしっかりと押し込める。
ステアリングスイッチにも「レスポンシブヒドゥンスイッチ」を採用。インストゥルメントパネルと同様、こちらもしっかりと押し込める。拡大
ステアリングレバーは断面が六角形になっている。操作時には平面を押し込む感覚が心地いい。
ステアリングレバーは断面が六角形になっている。操作時には平面を押し込む感覚が心地いい。拡大

エンジンとモーターの一体感

もちろんコーナリング性能は可変ステアリングだけによるものではない。深々とロールしたときの姿勢もとても安定・安心感があって心地よい。前:ストラット、後ろ:マルチリンクのサスペンションも、いい仕事をしているのだ。旋回時のアンダーステアを防ぐべく、内輪のブレーキをつまむ「ACA(アクティブコーナリングアシスト)」を装備していることもある。コーナリング能力に比してブレーキは控えめながら、高級セダンという性格を考えると、これで正しいのだろう。車重1830kgの巨体がホットハッチ並みの制動力を得たら、後席はジェットコースターになってしまう。

2.5リッター直4+モーターのハイブリッドは電池が新型「RAV4」のニッケル水素ではなくてリチウムイオンに変更されている。A25-FXS型も、同じ型式のRAV4や「クラウン」用とは最高出力と最大トルクの数値が微妙に異なっている。印象的なのは、モーターのアシストが巧妙なことで、主にエンジンが活躍しているように感じる。ハイブリッド感が薄い。100km/hで巡航中、アクセルを緩めると即座にエンジンが停止し、右足に力を込めると、即座に再始動する。その際、振動とか違和感がまったくない。内燃機関とモーターが一体化している。高回転まで回しても非常にスムーズで、静粛性がものすごく高いわけではないけれど、自然な内燃機関感を醸し出している。そこがとてもいい。

新型ESの初披露は2025年4月の上海モーターショーである。中国と北米が主なマーケットだからこそ、こんなにデッカい。ニッポンで乗るには大陸的大人たる気概が必要な気もする。そこがいいんだよ。と肯定する、そこのあなた。大物です。

最後に計算の答え。レクサスLSのいちばん安価なモデルは「500h」の2WDで、1757万円。ボディーは全長5235mmで全幅1900mm。ついでに車重2290kgである。すなわち、面積およそ9.9平方メートルで、1平方メートルあたり約177万円。1kg約7600円になる。ES350h(FWD)は、1立方メートル当たり、なんと約81万円、1kg約4300円! 断然お得ですよ。

(文=今尾直樹/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=トヨタ自動車)

第6世代のハイブリッドはアクセルを踏み込んだときにエンジン回転だけがビイイーンと先走ることがなく、ごく自然な加速を見せる。
第6世代のハイブリッドはアクセルを踏み込んだときにエンジン回転だけがビイイーンと先走ることがなく、ごく自然な加速を見せる。拡大
シート表皮は本革に近い質感を目指したという合成皮革の「L tex」。BEV版では床下にバッテリーを積めるようになっているため、SUVのような着座位置だ。
シート表皮は本革に近い質感を目指したという合成皮革の「L tex」。BEV版では床下にバッテリーを積めるようになっているため、SUVのような着座位置だ。拡大
後席の足元はご覧の通りの広さで、身長180cmくらいの人でも足が組める。前席とはかなり離れているが、騒音がきっちりと抑えられているので会話に苦労するようなことはなかった。
後席の足元はご覧の通りの広さで、身長180cmくらいの人でも足が組める。前席とはかなり離れているが、騒音がきっちりと抑えられているので会話に苦労するようなことはなかった。拡大
トランクは高さも奥行きもたっぷり。HEVもBEVも同じつくりになっており、9.5インチのゴルフバッグを4個積めるという。
トランクは高さも奥行きもたっぷり。HEVもBEVも同じつくりになっており、9.5インチのゴルフバッグを4個積めるという。拡大

テスト車のデータ

レクサスES350h

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5140×1920×1555mm
ホイールベース:2950mm
車重:1830kg
駆動方式:FF
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:189PS(139kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:235N・m(24.0kgf・m)/4200-5000rpm
モーター最高出力:162PS(119kW)
モーター最大トルク:272N・m(27.7kgf・m)
システム最高出力:248PS
タイヤ:(前)235/55R19 101V/(後)235/55R19 101V(ダンロップeスポーツマックス)
燃費:25.4km/リッター(WLTCモード)
価格:790万円/テスト車=806万5000円
オプション装備:ボディーカラー<ソニックカッパー>(16万5000円)

テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:825km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:263.5km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:16.1km/リッター(車載燃費計計測値)

レクサスES350h
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今尾 直樹

今尾 直樹

1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。

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