日本メーカーのブース紹介【北京モーターショー2010】
2010.04.30 自動車ニュース【北京モーターショー2010】日本メーカーのブース紹介
日本メーカーは、自社ブランドでの中国事業から撤退したダイハツを除く全ての乗用車メーカーが勢揃いし、ハイブリッドや電気自動車(EV)など得意の環境技術をアピールした。しかし、中国メーカーや欧州メーカーの展示ブースで新型車の初公開が相次ぐなか、日本勢は市販車のワールドプレミアはなし。話題づくりの面で、いささか残念感があったことは否めない。
■ハイブリッドやEVが勢揃い
そんななか、相対的に気を吐いていたのが日産だ。プレスデイにはカルロス・ゴーン社長が展示ブースの壇上に立ち、コンパクトカー「マーチ」やEVの「リーフ」を中国初公開した。ゴーン社長は、中国市場における2009年の販売台数の伸び率が40%と、日本メーカーで首位だったことを強調し、「日産は中国におけるナンバーワンの日本車メーカーだ」と気勢をあげた。また、中国政府と協力して、リーフを使った電気自動車の社会実証実験を2011年から始めることも明らかにした。
ホンダは、プレスデイでスピーチした伊東孝紳社長が、「環境・エネルギー技術のトップランナー」を目指すと宣言。展示ブースには、中央の一段高いところにハイブリッドスポーツの「CR-Z」、燃料電池車の「FCXクラリティ」、EVのコンセプトカー「EV-N」を並べ、次世代環境車の多彩な技術を持つことをアピールしていた。また、昨年アメリカで発売したアコードベースのクロスオーバー車「クロスツアー」を、2010年末までに中国に投入することも発表した。
■「FT-86」より「オロチ」が人気
トヨタは、日本メーカーでおそらく最大の展示スペースを確保。日米欧で昨年末からリースを開始した「プリウス プラグインハイブリッド」、2009年の東京モーターショーで注目を集めたFRスポーツのコンセプトカー「FT-86コンセプト」、中国市場に新規投入する高級ミニバン「アルファード」などを前面に出していた。しかし、米国のリコール問題の影響か、プレスデイの演出は全体的に控え目だった。
筆者が興味深かったのは、東京ショーでは黒山の人だかりだったFT-86の周囲がわりと空いていたこと。むしろ、北京ショーに今回初出展した光岡自動車の「オロチ」の方が熱い視線を浴びているように見えた。中国では、スポーツカーはまだ一部のお金持ちのもので、「富のシンボル」としての意味合いが強い。中国の現地メディアの関心も、そんな現状を反映していたのだろう。
マツダは、展示ブースの正面入口にクルマではなく次世代パワートレインの「SKY-G」「SKY-D」を配置することで、低燃費と環境対応の独自技術をアピールした。SKYエンジンは中国にも2012年に投入する。また、超低燃費のコンセプトカー「清(きよら)」や、中国の第一汽車のグループ会社で委託生産するミニバン「Mazda8(MPV)」も展示した。
■優等生的だが、もう一工夫欲しかった
スズキは、北米と日本で発売済みの上級セダン「キザシ」を中国初公開。三菱は、日本で発売したばかりの小型SUV「ASX」(邦名:RVR)を持ち込んだ。スバルは主力の新型「レガシィ」を中心に展示していた。
ドイツメーカーのブース紹介でも触れたように、今回の北京ショーの総合テーマは「エコ」。その意味では、エコカーを前面に出した日本メーカーの展示は実に優等生的なものだった。しかし、クルマを初めて買う人が大半を占める中国では、普通の市民にとってエコカーはまだまだ縁遠い存在。少なくとも現時点では、人々の視線は自分が買える“お買い得”なクルマ、あるいはお金持ちになったら買いたい高級なクルマ、派手なクルマの方に向いてしまう。
そんな現実をふまえて、日本メーカーももう少し中国人の耳目をひくような、演出面の工夫があってもよかったのではないか。展示そのものに遜色はないだけに、ちょっともったいない気がした。
(文と写真=岩村宏水)