スズキ・パレットSW TS(FF/CVT)/パレットX(FF/CVT)【試乗速報】
ハイト軽もオラオラが人気!? 2009.10.08 試乗記 スズキ・パレットSW TS(FF/CVT)/パレットX(FF/CVT)……131万2500円/165万3750円
スズキのハイト軽ワゴン「パレット」ベースの、ちょっとワイルドなカスタムバージョン「パレットSW」が新登場。新型CVTの採用で燃費も向上した“オトコの軽”にスーザン史子が試乗した。
パレットじゃ、カワイすぎ!
「打倒! タントカスタム」を掲げ、新たにスーパーハイト軽戦線に名乗りを上げたのが、「スズキ・パレットSW(スーパーワゴン)」。20〜30代の肉食系男子をターゲットに、ちょっぴり悪羅悪羅(オラオラ)に味付けされた、「パレット」のカスタムバージョンです。
というわけで、両側スライドドアがファミリーにウケているパレットのマイナーチェンジ。2009年4月から始まったエコカー減税対象車となるべく、これまでのトルコンATのみの設定に、新型の副変速機付CVTモデルを追加し、燃費を約10%アップさせたというのがポイント。同時にカスタム路線も加わることになったんです。
もともとパレットは、「スズキ・ワゴンR」からの乗り換えが多いモデル。ところが、カスタムモデルが不在だったせいか、「ワゴンRスティングレー」ユーザーの多くが、ダイハツの「タントカスタム」へと大量に流出。その流れを食い止めるため、是非モノのブルーのイルミネーションもビシッと装備し、「パレットじゃ、カワイすぎるだろ!」という男気溢れるユーザー向けに、ちょっぴりイカツイSWを投入したというわけなんです。
ギャル目線で勝手にほざきますと、女子が求める男子像ってのは、見た目はオラオラ系でも根っからのワルじゃない、実はとっても優しくて頼れる相手。そこんとこをよくわかってるな〜と感じさせるのが、パレットSWのインテリアなんですよね。ブラックのシートにダークグレーを基調としたオトナっぽい雰囲気の中に、ピアノブラック調のドアアームレストが高級感を演出していて落ち着けそう。何より、フロントからリアまでガラス面が広く、部屋のカーテンをサッと開けたような開放感があるのが重要。初対面の相手ならなおさら。「もしかして、車内でイケナイことされちゃうかもぉ〜」という不安が、「この人なら大丈夫だわ」という安心感に変わりそう。
じいちゃんからお孫さんまで
運転席からの視界はかなりイイ。670mmと、ワゴンRの650mmより20mm高いヒップポイントと、ほぼフラットなダッシュボードのおかげで、50インチのワイド画面が目の前にあるかのような錯覚に。見切りの良さという点では、ノーズが短すぎて運転席から前方左右角を確認することはできないけれど、台形のサブウィンドウもつき、細い道での右左折もまったく問題なし。
フロアには運転席と助手席との間に少々段差があるものの、前席がベンチシートになっているから、そのまま移動できるという便利さも。室内は圧倒的な広さ。比較的小柄な人がミラーの位置合わせやサンバイザーを動かす場合は、シートから少し腰を浮かせる状態になって大変だけど、身長163センチの私でも、頭上には30cm近い余裕があり、手を真上に伸ばしてようやく手の平がぴったりつくほど天井が高い。
リアステップは地上から340mmと手頃な高さで、私がシートに座って片足を地面につけてみても、余裕で乗り降りできる。それこそ、じいちゃん、ばあちゃん、お孫さんまで一緒に楽しめる安心設計です。
街なかはNAがベターかも!
まず試乗したのは、パレットSWの上級グレード「TS」のターボエンジン+CVT搭載モデル。エンジンをかけると、アイドリング時はとっても静か。足回りはしなやかで、不快な突き上げは感じられない。車高の高いモデルながらヒョコヒョコしたところがなく、とっても安定しているのにも驚き。走りだしからCVTならではの滑らかな加速感が得られるし、ターボ特有の低音は響くけれど、その音はかなり抑えられている印象。まさに、強さと優しさを両方持ち合わせた、オトナの男らしい味付け。
一方、NAのCVT搭載車は、ターボエンジンの音がないぶん室内はより静か。アクセルを深く踏み込むと、加速音が少々響く程度で、街なかメインで使うならNAがベターかも! それに、天井の高いホールのような室内形状のせいか、音のまわりがとてもいいんですよね。バックモニター付CDプレーヤーからたまたま流れてきた「G線上のアリア」に、ついうっとりしちゃいました。この広さは、音響的にもダテじゃない!
日産開発のCVTがどうして?
今回のマイナーチェンジの目玉は、パレット、パレットSWともに採用となる副変速機付CVTです。トルコンATではなく、CVTに副変速機を搭載し、市販車に採用するのは世界初。前進2段の変速機構と従来のベルト式CVTを組み合わせ、従来のCVTのオーバーオールレシオ(変速比の最低値と最高値の比率を表す値)を、5.75(6段程度)から7.3(7段以上)まで広げることによって、発進時の加速と燃費のアップを実現しているんです。
また、副変速機付きのトランスミッションという点では、目新しいシステムではないにもかかわらず、世界初の採用となったのは、さらに燃費性能を高める必要性が生じたから。価格面や重量面でも制約のある軽自動車では、部品点数が多くなることでのデメリットもあるわけですが、重量が従来とほぼ変わらず開発できたということも大きなメリットだったとか。
ところで、この新型CVT、スズキも開発に関わってはいますが、実は日産とジヤトコが共同開発したシステムなんです。軽自動車用に改良してパレットに搭載しています。
ではなぜスズキのクルマに? そこで明らかになったのが日産ブランドで登場する「ROOX(ルークス)」の存在。スズキ・パレットのOEM車で、今年の12月に登場予定。まだ写真を見ただけですが、フロントのグリル形状が違っていることをしかと確認いたしました!
パレットSWにROOX、そしてタントカスタムと、スーパーハイトカスタム軽、今後は、一気に三つ巴の戦いとなっていきそうです。
(文=スーザン史子/写真=郡大二郎)
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