BMW Z4 sDrive23i(FR/6AT)【試乗記】
納得のいく進化 2009.07.30 試乗記 BMW Z4 sDrive23i(FR/6AT)……579万2000円
「ロードスター」と「クーペ」をひとつにまとめ、リトラクタブルハードトップを採用した新型「Z4」。旧型との違いはいかなるものか? 2.5リッターモデルでその走りを試した。
|
ハードトップ採用の理由
100年以上にわたるガソリン自動車の歴史で、スピードとともに重視されてきたのが快適性である。「より速く、より楽に」が人間の要求なんだからしかたない。その流れは現在も続いていて、たとえばオープンカーではソフトトップに換えてリトラクタブルハードトップを採用したクルマも多い。今年発売された新型車では「プジョー308CC」と「レクサスIS250C」の2台がリトラクタブルハードトップを採用している。
今回試乗した新型「Z4」はまさにソフトトップからの変更である。もっともZ4の場合、他車とは違う事情がある。前回のマイナーチェンジで追加した「クーペ」の販売が今ひとつで、両車を統合させるためのハードトップ化でもあったのだ。ファストバックスタイルのクーペが好きだったひとりとしては残念な裁定だが、決まった以上は従うほかない。
|
ボディはルーフをトランクに収めるために全長が150mm伸び、フロントマスクも今風に整形されているが、雰囲気が変わった感じはしない。旧型はリアオーバーハングが短めだったから、バランスがよくなったように思える。というか、違いはむしろインテリアのほうが大きい。
|
頑固な思想
旧型のシンプル&モダンなシンメトリーデザインは、スポーツカーとしては進みすぎていたのか、新型はドライバー中心の造形に仕立て直され、同時に光り物が増えた。ウルトラワイドなカーナビ画面、iDriveや電動パーキングブレーキの採用もそうだが、ハードトップ化に合わせてラクシャリースポーツへの転進を図ろうとしているようだ。
|
ルーフの開閉は約20秒と、リトラクタブルハードトップとしてはかなり早い。それ自体はうれしいのだが、車両が少しでも動くと作動を止めてしまうのは、どうしてだろうか。短めの信号待ちやノロノロ運転など、開閉の途中で発進しなければならない場面はけっこうある。せめて10km/h以下でもいいから動かせるようにしてほしい。
そういえば電動パーキングブレーキも、他車の多くがアクセルペダルを踏むと自動的にリリースされるのに、新型Z4は手動解除が原則となっている。南ドイツ生まれのオープンカーだから、もっとおおらかな乗り物かと思ったら、予想以上に頑固な思想の持ち主だった。
違いは乗り心地
新型Z4には「sDrive35i」と「sDrive23i」の2グレードがある。今回乗ったのは後者だ。排気量は2.5リッターで、最高出力は204ps、最大トルクは25.5kgmと、177ps/23.5kgmだった旧型2.5iよりアップしているのに、なぜか23iと過少申告をしている。
車重はハードトップ化により100kgを上乗せしている。しかしパワーやトルクがアップしたこともあり、加速が鈍くなったという印象は抱かなかった。自然吸気エンジンならではの回す楽しさやクリアなエンジン音はそのまま。豪快な加速や排気音がウリの35iとは別の種類のドライビングプレジャーが味わえる。
BMWのオープンカーは、全般的に風の巻き込みが多めであり、新型Z4も例外ではない。逆にルーフを閉じてもロードノイズのこもり音などに悩まされることはなく、ノイズの遮断はこの種のボディではかなり優れている。
旧型とあきらかに違うのは乗り心地だ。ランフラットタイヤのコツコツ感が消え、落ち着き感がアップしている。旧型でも不満のなかったボディ剛性はさらにアップしたようで、屋根の開け閉めで乗り心地が変化するようなことはない。ところがハンドリングは、オープンとクローズドでやや違いがみられた。
デフォルトはオープン
ルーフを閉じた状態ではBMWとしては珍しく、ノーズの重さを感じる。ターンインに旧型のような軽快感かなく、立ち上がりでアクセルを開けても旋回を強めてはくれない。ならばと屋根を開けると、BMWらしさ、FRらしさを一気に取り戻す。リア荷重が増えるのでDSC(スタビリティコントロール)の作動機会も減る。こちらがデフォルトであることは明白だ。
DSCは、ワンプッシュでTRC(トラクションコントロール)だけオフになり、長押しで全機能がキャンセルされるが、パワーがありあまっているわけではないので、挙動が大きく変わることはない。
また新型は、シフトレバー脇のスイッチでスロットル、トランスミッション、ステアリングのレスポンスを3段階に変えられる「ダイナミック・ドライビング・コントロール」を備えるが、23iの性格ならノーマルとスポーツの2段階で十分にも思えた。
些細なことばかり書いてきた感もあるが、それは決定的な短所がないためでもある。なんだかんだいってリトラクタブルハードトップはありがたい。一度利便性を知ってしまうと、なかなかソフトトップに戻れないのは、ケータイやエアコンに通じるものがある。もともとBMWはハコ(ツーリングカー)が得意なブランドだから、ハードトップ化は納得できる進化ではないだろうか。
(文=森口将之/写真=高橋信宏)
拡大
|

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
ヒョンデ・ネッソ ラウンジ+(FWD)【試乗記】 2026.6.27 ヒョンデの水素燃料電池車「ネッソ」がフルモデルチェンジ。……といっても多くの方にはなじみがないかもしれないが、デザインが一気にモダンになったほか、満タンからの走行可能距離が25%近くも拡大するなど長足の進歩を果たしている。300km余りをドライブした。
-
アストンマーティンDBX S(4WD/9AT)【試乗記】 2026.6.24 「SUVの形をしたGT」こと「アストンマーティンDBX」が、さらに高性能な「DBX S」に進化。より機敏なフットワークと、よりパワフルなエンジンを得たハイパフォーマンスSUVは、どのような体験を提供してくれるのか? 飛ぶがごとく走る英国の巨獣の実力に触れた。
-
三菱トライトンGSR(4WD/6AT)【試乗記】 2026.6.23 三菱のピックアップトラック「トライトン」のマイナーチェンジモデルが登場。トヨタの新型「ハイラックス」を迎え撃つべく三菱は、シャシーを鍛え上げ、走行性能をさらなる高みへと引き上げている。400km余りをドライブした印象をリポートする。
-
ハーレーダビッドソンCVOストリートグライド3リミテッド(6MT)【レビュー】 2026.6.22 ハーレーダビッドソンのユニークな三輪モデル「トライク」シリーズが大幅に進化。お値段800万円超(!)の最上級モデル「CVOストリートグライド3リミテッド」の試乗を通し、新しくなった乗り味と、受け継がれる独創のファン・トゥ・ライドをリポートする。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.6.20 トヨタからワゴンのようなボディーの新型電気自動車「bZ4Xツーリング」が登場。いわば既存の「bZ4X」のロングボディー版だが、試乗した4WDモデルはよりパワフルになっているなど、長さ以外も結構違う。350km余りをドライブした印象を報告する。
-
NEW
気づけば増えた軽のBEV 多くのメーカーがそこに商機をみるわけは?
2026.6.29デイリーコラム勢いに乗るBYDや新興EMTが、日本国内への軽EV投入を相次いで宣言。ガラパゴス化しているといわれた軽自動車の世界で、国内・海外問わず電動モデル投入の熱が高まっているのはなぜか? その背景を探ってみよう。 -
プジョー5008 GTハイブリッド アルカンターラパッケージ(前編)
2026.6.28思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「プジョー5008」に試乗。まずはスタイリッシュな見た目が目を引く新型だが、国内に導入されるのはマイルドハイブリッドの1.2リッター直3ターボ車のみ。これで大きな車体を満足に動かせるかどうかが気になるところだ。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
第874回:自動運転からワイパーまで! 自動車を支えるメガサプライヤー ボッシュのあくなき挑戦
2026.6.27エディターから一言世界屈指のメガサプライヤー、ボッシュが開発中の新技術を披露! 市街地での高度な運転支援技術に、日本の方言にも対応した対話型AI、サーキット走行のノウハウを教えてくれるコーチング機能等々……興味深いその中身をリポートする。 -
ヒョンデ・ネッソ ラウンジ+(FWD)【試乗記】
2026.6.27試乗記ヒョンデの水素燃料電池車「ネッソ」がフルモデルチェンジ。……といっても多くの方にはなじみがないかもしれないが、デザインが一気にモダンになったほか、満タンからの走行可能距離が25%近くも拡大するなど長足の進歩を果たしている。300km余りをドライブした。 -
これから『webCG』に期待することは? アンケートご協力のお願い
2026.6.26From Our Staff皆さまは日ごろ、自動車情報サイト『webCG』をどのように利用していて、どんな記事やサービスの提供を期待されるでしょうか? webCGに関する意識調査のアンケートに、ご協力をお願いいたします。 -
アルファ・ロメオやDS、マセラティの未来やいかに? ステランティスが発表した新戦略を読み解く
2026.6.26デイリーコラム再起を図るステランティスが、新CEOのもとで新しい次世代戦略を発表。地域主導とブランド構成の再構築を軸とした改革によって、私たちが親しんだアルファ・ロメオやDS、マセラティなどはどうなるのか? 欧州通のジャーナリストが考察する。






























