第15回:『アメリカ、環境保全の公共広告』
2007.09.01 広告のススメ第15回:『アメリカ、環境保全の公共広告』
今回は、アメリカの環境保全の広告を紹介します。日本でも山道などでみかける「動物注意」の標識。3枚の写真にはその看板のそばに、動物が倒れている。クルマにはねられたのだろう。標識には、「動物の飛び出しに注意」とでも書かれているのかと思ったら……。
1)Ever consider that it was you who jumped out in front of him?
「飛び出してきたのは、あなたの方だと考えたことはありませんか?」
動物だって、正面にあなたが飛び出してくれば、ビックリしてしまうことでしょう。
2)Imagine a road running through the middle of your house.
「アナタの家の真ん中に、道路が通っていると想像してください」
自然は動物にとって家。その家の真ん中に人間は勝手に道路をつくり、「動物が飛び出してきた」といっても理由にはならない。
3)When wildness is destroyed its not just the trees that get cut down.
「自然が破壊されて失われるのは、木だけではない」
*Cut downには、「木を切り倒す」と、「ギャング抗争や戦争で、相手を殺し倒す」という意味がある。
ギクリとさせられることが書いてある。自然を破壊することは樹木を伐採するだけでなく、そこに棲んでいる動物たちをも殺すことなのだ。
人間は「動物に注意」などといいながら、心のなかでは動物たちよりも“エライ”といった、優位性を置いている。それを逆の立場にしてみると、こんな広告ができあがるのだ。確かに森は動物たちの住居で、人間や道路のほうが侵入者なのである。動物たちにしてみれば、「人間の飛び出しに注意」しなければならない状況なのだ。
この広告をつくった関係者は、「私たちは、現在バークレーから東に約20マイル。サンフランシスコから45マイルの、コントラ・コスタ郡で活動しています。運がよいことに、カーキーネス海峡に沿った北側は湿地帯に囲まれ、風致地区として保護されています。
私たちは野生の生き物や、景色の良い回廊地帯などを保護するため、この風致地区に接する土地を購入しており、保護活動によって近年、湾岸地域で急速に展開している乱開発を防いでいるのです」と語る。
これは、サンフランシスコ湾地域の環境を守るため、多くの人々から寄付を仰ぐ、ムイル・ヘリテイジ財団のキャンペーンなのだ。海外では自然を保護するための運動が盛んだが、ここに紹介した3枚の写真は、きわめて説得力のあるすぐれた公共広告である。
Muir Herritage Land Trust/USA
アートディレクター:Tony Bennett
コピーライター:Chris Halas
フォトグラファー:Tony Bennett
広告代理店:GMO Hill/Holiday/San Francisco

金子 秀之
早稲田大学商学部卒業。資生堂のアートディレクターとして前田美波里のサマーキャンペーンを担当。1973年博報堂のクリエイティブ・ディレクターとして、サントリーの「ブランディ水で割ったらアメリカン」キャンペーンを手がける。1993年(有)クエスターを設立。広告製作及び海外広告の紹介をして現在にいたる。
-
最終回:がんばる菜食主義者 2007.9.1 「Vegetarians Served Daily.」 アメリカのステーキレストラン「LONGHORN STEAKS」では、菜食主義者が給仕する……? 菜食主義者といっても、動物性タンパク質をまったく口にしない人もいれば、卵はOKとか、魚介類は食べるなど様々だ。とはいえ、わざわざステーキレストランで働くのだろうか。
-
第93回:アメリカで見られるアフリカの動物 2007.9.1 1670年、イギリス人によるアメリカ大陸への、最初の入植が行われた。当時のイギリス国王がチャールスII世であったことから、入植地はチャールスのラテン語名である“カロライナ”と名付けられ、729年に“North Carolina”と“South Carolina”の2州になった。
-
第92回:ランドローバー「大地のサンプル」 2007.9.1 自動車メーカー(ディーラー)のダイレクトメールといえば、クルマの小冊子やカタログや、オイル交換割引券が入っているもの。しかし、クロスカントリーモデルで有名なランドローバーのダイレクトメールには、同社ならではのユニークなアイテムがついていた。
-
第91回:“隙間”があれば大丈夫 2007.9.1 「カンヌ国際広告祭」に「Direct」と「Media」という新しい部門ができて、2004年で3年目をむかえた。このカテゴリーは、広告そのものを評価するのではない。媒体の使い方がユニークであるとか、出演した特定のタレントによってキャンペーンが予想以上の効果をあげたとか、販売促進につけた景品が面白いなど、広告に付随する効果を評価する賞である。
-
第90回:南アのフォルクスワーゲン「お別れ」キャンペーン 2007.9.1 新車では手に入らないクルマの広告キャンペーン!? フォルクスワーゲンのワンボックス「トランスポーター3」(T3Bus)の生産が終わった南アフリカで、なぜかT3Busの広告キャンペーンが行われた、そのワケは?
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。