ジープ・チェロキー/グランドチェロキー/ラングラー【試乗記(後編)】
聞くと忘れる。見ると憶える。(後編) 2003.05.18 試乗記 ジープ・チェロキー/グランドチェロキー/ラングラー 都会の真ん中でオフロード体験「Jeep EXPERIENCE Tokyo 2003」が、東京台場で開かれた。『webCG』記者による参加報告、後編。(前編はこちら) 拡大 |
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チェロキーの受難
グランドチェロキー・リミテッドV8に乗っている。空は厚い雲に覆われ、ときおり雨が降る。東京お台場の特設オフロードコースは、泥濘の度を増した。
横に転がらんばかりのバンクや、ノーズを打つんじゃないかと心配になる急勾配、急傾斜、そして滑り落ちそうな丸太橋。リポーターの気弱なココロはキリキリ痛むが、しかしクルマのなかは、物理的に安楽である。ラクシャリーな室内にいながら、前後リジッドの足まわり、ジープいうところの「ソリッドアクスル」を、ひどく心強く感じる。
グランドチェロキー2003年モデルには、豪華版「リミテッド」に、テスト車の4.7リッターV8SOHC16バルブ搭載「リミテッドV8」(495.0万円)と、4.0リッター直列6気筒OHV12バルブの「リミテッド」(435.0万円)が用意される。また、廉価版「ラレード」は、V8から直6になり、400万円を割る384.0万円のプライスタグが付けられた。
グランドチェロキーのステアリングホイールを握りながらのコース終盤。交互に小山が設定された場所で、前行くチェロキーが“亀の子”のようになっている。前左輪、後右輪と対角線上に接地しているのだが、反対の対角線、前右輪、後左輪を空転させて、前へ進めない。何度かバックしてトライを繰り返すが、突破できない。見かねたスタッフがワラワラと寄ってきて、哀れなチェロキーを押し出した。
3種類の4WDシステム
ジープの4WDシステムについては、別の機会に詳しく解説するが、ごくおおまかに紹介すると、
・ラングラー:「コマンドトラック」パートタイム4WD
・チェロキー:「セレトラック」フルタイム4WD
・グランドチェロキー: 「クォドラトラックII」(直6モデル)/「クォドラドライブ」(V8モデル)いずれもオンデマンド4WD
となる。ジープは、なんと3種類ものコンセプトが異なる4輪駆動システムをラインナップするのだ。
グラチェロ(と略してみました)のリミテッドV8は、もっとも手の込んだ「クォドラドライブ」と呼ばれるシステムをもち、これは前後輪間、前輪間、後輪間、それぞれに「ジャローターカプリング」という差動装置を備える。ジャローターカプリングとは、オイルポンプと多板クラッチを組み合わせたユニットで、つまりグランドチェロキーのV8モデルは、前後左右どれか1輪がグリップしていれば、他の3輪にトラクションを逃がすことなく、動けるわけだ。
「このシステムは、4WDシステムの知識が少ないオーナーや、モード切り替え操作などにあまり興味を示さないオーナーにも、路面状況を気にせず運転に専念できる安心感と気楽さを与えます」という広報資料通り、臨時ドライバーたるオフロード初心者に−−つまりリポーターのことだが−−何ら危機感を感じさせることなく、チェロキーにとっての難所を走破した。
ジープの“売り方”
平成大不況のニッポンにおいて、ジープブランドは堅調な売れ行きを見せている。つまり、販売台数を落としていない。
「景気はよくないですが、輸入車全体の販売台数はそれほど減っていません。高価格車から低価格モデルへの移行は顕著ですが」と話すのは、ダイムラークライスラー日本のジョン・D・タンジェマン・クライスラー部門副社長。
バイスプレジデントは、「ジープを買うということは、“本物が好き”であるとのイメージをオーナーに与えます」と、試乗前のブリーフィングで力説した。ジープを買うと、もれなくライフスタイルがついてくるのかしらん。
試乗の合間に、日本市場における“ジープの売り方”をうかがうと、「レネゲードのようなスペシャルモデルの投入」「ディーラーネットワークとクオリティ向上」そして「Jeep Experienceのようなプロモーション活動の推進」を挙げた。営業努力の王道である。
トヨタや日産からもライバル車が登場していますが、と水を向けると、「ジープは“オリジナル”である強みをもっています。伝説的な性能をもち、かつ本物志向です」と、ブランドイメージに自信を示すのであった。
I agree.
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孔子の言葉
さて、チェロキーを中核とするジープラインナップのなか、好不況に関係なく、コンスタントに売れ続けるモデルが「ラングラー」である。
2375mmという短いホイールベースのため、細かい凹凸が連続する「サスペンションバンプス」では、舌を噛みそうな細かく激しい突き上げで気の弱いドライバーを怯えさせたが、軽快な身のこなしと、「ジープに乗ってる!」という実感が楽しい。
ソフトトップの「スポーツ」(5MT/4AT=272.0/278.0万円)と、固い屋根がつく「サハラ」(4AT=314.5万円)の2種類がカタログに載り、2003年モデルから、ついにオートマチックが4段化された。
ひと通り試乗車をドライブし、最後にトライしたのが、5MTのラングラー・スポーツ。副変速機は、もちろん「4L」(4WD-Low)に入っている。
おそらく“通”のヒトにとっては「何をいまさら」なのだろうけど、マニュアルモデルにもかかわらず、まったくエンストしないことにビックリ! スティックシフトを1速に入れておけば、ガスペダルに右足を載せないでも、ユルユル、ユルユル……と、ナメクジのような速度でドコまでも行く。面白いので、試しに「ウォーターハザード」ことサイドステップ付近まで水が来るプールに、ステアリングホイールを握るだけで挑戦すると、こともなげに進む。が、あまりに遅いのでセカンドに入れても、やはりこともなげに進む。2速で、普通のオートマ車のクリーピングに相当しようか。
試乗の前に、タンジェマン副社長は、孔子の言葉を引用した。
「聞くと忘れる。見ると憶える。実践すると理解する」
その通りだった。
(文=webCGアオキ/写真=高橋信宏/2003年5月)
・ジープ・チェロキー/グランドチェロキー/ラングラー【短評(前編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000013284.html

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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