レクサスIS300h“Fスポーツ”(FR/CVT)
継続こそ力なり 2026.04.15 試乗記 「レクサスIS」のビッグマイナーチェンジモデルが登場。もはや何度目か分からないほどの改良だが、長年にわたってコツコツとネガをつぶし続けてきただけあって、スポーツセダンとしてひとつの完成形といえるレベルに達している。“Fスポーツ”の仕上がりをリポートする。手入れを怠らず20年
2005年の日本デビューから間近で見てきたし、一時はカンパニーカーながら自分で乗っていたせいか、年明け早々にまたしてもレクサスISがマイナーチェンジしたというニュースを聞いても、どこがどう変わったのかという興味より先に「まだやるんだ。頑張るなあ」と、感心するというか驚くというか、まるで定年を迎えた同窓会のオジサンたちのような言葉が漏れるのが正直なところだ。「かえって若返ったんじゃないのか?」とちょいと持ち上げることもオジサン仲間の礼儀である。
レクサスのプレスリリースには「1999年の初代モデル以降、四半世紀にわたって世界約40の国と地域で130万台を販売、コンパクトFRスポーツセダンとしてクルマを操る楽しさを追求してきました」とあるが、ご存じのように日本では初代は「トヨタ・アルテッツァ」であり、ISの登場は2005年の2代目モデルからである(それでももう20年余り)。「GS」や「SC」とともに日本市場を含めたレクサスブランドの本格展開と同時に発売されたセダンだが、その同期生も姿を消して久しく、他のトヨタ/レクサス自前の後輪駆動乗用車も既に生産終了または終了が決まっているモデルばかり(FCEVの「ミライ」と「クラウン セダン」を除けば)。今や孤軍奮闘という立場にあるのがISである。
ISは「後輪駆動用Nプラットフォーム(ゼロクラウン世代)」と呼ばれるものを採用しており、2013年には現行型にモデルチェンジし、この際にホイールベースが70mm延長されたが基本プラットフォームは変わらず、その後も“フルモデルチェンジ並み”のマイナーチェンジを繰り返してきた。トヨタ/レクサスには新世代の後輪駆動用GA-Lプラットフォームがあるが、今となってみればそれを採用しなかったのが長生きの理由といえるかもしれない。
今やハイブリッドの「300h」のみ
さすがにそろそろフルチェンジして電気自動車に生まれ変わるのではないかといううわさもあったISながら、今回のマイナーチェンジの内容を見ればまだしばらくは現役を続けるとみていいだろう。セダンというだけで肩身が狭い昨今ゆえ、月販台数は多くても4桁には届かない状況ながら(ここしばらく年1万台未満)、それでも比較的コンパクトなRWDセダンに対する需要は底堅いとの判断だろう。
ただし新しいISはおなじみの2.5リッター4気筒エンジンによるハイブリッドの「300h」のみとなった。V6やV8など通常のガソリンエンジン搭載モデルは2025年いっぱいですべて生産終了。ラインナップは一気に整理された。300hにはスタンダードモデルと“バージョンL”、専用の内外装と派手めのリアスポイラーを装備する“Fスポーツ”、さらに特別仕様車として「“Fスポーツ”モードブラックV」の4グレードがそろうが、パワートレインはすべて共通である。すなわち、最高出力178PS/6000rpmと最大トルク221N・m/4200-4800rpmを生み出す2.5リッター4気筒エンジンにモーター(143PS/300N・m)を組み合わせたおなじみのハイブリッドシステムであり、トータルで220PSのシステム最高出力も従来と変わらない。
一新されたインストゥルメントパネル
シャープで精悍(せいかん)な今どきのフロントデザインに刷新されているが、ボディーのディメンションも事実上変化なし。ただし“Fスポーツ”には新形状のリアスポイラー(既にダックテール状になっていたトランクリッドの上に)などを装備し、さらにアグレッシブなスタイルに仕立てられている。
顔つきを見なければ新型と判別しにくい外観に比べ、明らかに一新されたと分かるのはインストゥルメントパネルである。センターのタッチスクリーンは12.3インチに大型化され、その下に空調スイッチ類が並ぶシンプルなデザインに変わっている。センターコンソール上面とスタートスイッチベゼルには新たに「Forged Bamboo(フォージドバンブー)」と称するパネルが採用されている。いわゆる樹脂含有カーボンファイバーかと思えば、これは竹の繊維を配合した新素材(東海理化の「BAMBOO+」という製品らしい)という。正直、黒っぽすぎて分かりにくいのが残念ではあるが、導入当初は日本独自のグローバルプレミアムブランドを目指して「L-finesse(エルフィネス)」など志高いコンセプトを掲げていたレクサスは、この種のチャレンジをもっと取り入れるべきと思う。もちろんさまざまな挑戦はあったものの、思ったように売れないといつの間にか尻つぼみになってしまうのがこれまた残念である。
ちなみに電子プラットフォームも最新世代となり、渋滞時支援機能付きの「レクサスセーフティーシステム+」が搭載されている。
間違いのない定番メニュー
“Fスポーツ”とはいえ、パワーユニットは2.5リッターハイブリッドだから、もちろん「IS500」のようなパワーは望むべくもないが、実用上はまったく不満はない。むしろ実用域では敏しょうなレスポンスと余裕のあるトルクのおかげで実に扱いやすいし、低中速での加速は鋭いといえるほどだ。残念なのは、相変わらずエンジンが始動する際の音の“落差”である。改良を積み重ねてきたISはモーター駆動領域が拡大されたこともあって、普通に走る限りは非常に静かだが、だからこそ急加速が必要になった場合などに突然ブーンとかかるエンジン音(音量と言うよりも音質)がちょっと気になる。熟成を重ね、洗練されているISの唯一の弱点といっていいだろう。
初代モデルの滑らかだがしなやかではない(ツッパリ感があった)乗り心地も今は昔の話。「NAVI・AI-AVS」(電制可変ダンパーはリニアソレノイド式に変更された)を装備する“Fスポーツ”はまったく硬派ではなく、滑らかかつ適切に引き締まった、レクサスのセダンとしてふさわしい乗り心地を備える。目新しさを追うのではなく、長年地道に手を加えてきたからこそ、顧客がこぞって注文する名物料理のようなものかもしれない。赤いシートや黒いスポイラーはちょっと気恥ずかしいが、このISならば長く乗れるはずである。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=トヨタ自動車)
テスト車のデータ
レクサスIS300h“Fスポーツ”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4720×1840×1435mm
ホイールベース:2800mm
車重:1720kg
駆動方式:FR
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:178PS(131kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:221N・m(22.5kgf・m)/4200-4800rpm
モーター最高出力:143PS(105kW)
モーター最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)
システム総合出力:220PS(162kW)
タイヤ:(前)235/40R19 92Y/(後)265/35R19 94Y(ブリヂストン・ポテンザS001L)
燃費:17.6km/リッター(WLTCモード)
価格:635万円/テスト車=682万0800円
オプション装備:“Fスポーツ”レッドブレーキキャリパー(5万5000円)/三眼フルLEDヘッドランプ<ロー&ハイビーム>+LEDフロントターンシグナルランプ(7万7000円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム(26万5100円)/寒冷地仕様<LEDリアフォグランプ、ヘッドランプクリーナー、ウインドシールドデアイサー等>(2万8600円)/アクセサリーコンセント<AC100V・1500W、ラゲッジルーム内>+外部給電アタッチメント(4万5100円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:712km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:309.4km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:13.9km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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