ダイハツ・ソニカRSリミテッド(FF/CVT)【ブリーフテスト】
ダイハツ・ソニカRSリミテッド(FF/CVT) 2006.07.28 試乗記 ……145万9500円 総合評価……★★★★ 2005年東京モーターショー出展の「SKツアラー」が、「ソニカ」となってデビュー。開発コンセプトである“爽快ツアラー”は、現実となっているのか? そしてターボエンジンと新開発CVTの実力は?
![]() |
堅実な若者がターゲット
一見すると四角い箱型の軽自動車の典型であるが、よく見ていくと全高は低めで、ドアハンドルの処理などにも高級感があり、全体に安物感を排斥する努力が散見される。しかし「ムーヴ」や「タント」「ムーヴラテ」なども擁する豊富な陣容の中では、何がどう違うのか選ぶのに迷うほどだ。
リリースによれば「爽快ツアラー」をコンセプトとしているようだが、ダイハツの流儀としては、眉目秀麗な目立ちたがり屋ではなく、一歩引いた上で地味過ぎない、堅実な考えをする若者をターゲットとしているような気がする。じっくり時間をかけて見比べていくとここに至る、そんな不思議な雰囲気をもっている。サーフボード型ウィンドウは、近くで見ると単に平面をビジュアル処理しただけに見えるが、実際に走っている姿を少し離れて見送るような時に、ちゃんと立体的にみえる。これはなかなか非凡なクルマだと思う。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「ソニカ」は2006年6月に発表されたダイハツの新型軽自動車で、実質的には「MAX」の後継車種となる。軽ハイトワゴン全盛の中、1470mmと低い車高で居住空間よりも軽快な走りをウリとし“爽快ツアラー”を謳う。主に装備の違いによる3種のグレードはFFと4WDが設定され、どれもターボ付きの直3エンジンが搭載される。これに組みあわせられるトランスミッションは、伝動損失を減少させたという新開発CVT。これによりFFモデルは10・15モードが23.0km/リッターという低燃費が実現された。
(グレード概要)
テスト車の「RSリミテッド」は最上級グレード。エクステリアにはサイドストーンガード、ドアミラーターンランプ、フロントフォグランプなどを装着。インテリアにはオーディオコントロールなどのスイッチが配されるMOMO製ステアリングホイールが採用される。さらに、RSリミテッドのみATセレクターがゲート式となり、7段のアクティブシフトも備わる。タイヤは15インチとなり、大径フロントベンチレーテッドディスクブレーキが奢られる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
MOMO製ステアリングホイールの向こうに3つのメーターがあり、ほど近い位置にシフトレバーを配置。このポジションがなによりも優先されており機能的でもある。インパネは中央部にナビ画面(オプション)、そして上からオーディオと空調のコントローラーと、シンプルな構成ですっきりまとまっている。もう何台も作ってきて手慣れた処理を感じさせる秀作だ。ダッシュの棚に物を載せる可否はともかく、つい載せたくなる場所でもあるから窪みとか段差、蓋付きトレーなどがあれば便利か。
(前席)……★★★★
低いフロアにより乗り込みが容易。シート地はふっくらソフトな感触で、座り心地も良好。ちょっとしたサイドの盛り上がりは座面も背面も共に横方向のサポートを助ける。横方向のサイズもたっぷりと採られている。その結果かサイドブレーキの居場所がなくなり、足踏み式になったのは必然かもしれないが、2度踏みリリース方式は感心しない。同じ操作でまったく逆の仕事をさせるのは間違いの元。また反復使用できないことから緊急時の役にたたない。
(後席)……★★★★
前席同様、低いフロアは乗り込みを容易にしている。サイドシルの盛り上がりも邪魔にならない範囲。座面は比較的高く設定されており、足元には余裕がある。背面も角度が寝過ぎてなくて良い。それでいてボディ形状がボックス型のため、ヘッドクリアランスも十分。サーフボード型ウィンドウはドア後端が高く、中の住人にとっては囲まれて守られている感じがする。ピラーの位置も適当で、パッドがあれば頭を休められるだろう。
(荷室)……★★★
特記するほど広くはないが狭くもない。本格的に使おうと思えばリアシートが折り畳めるタイプゆえ、広さはあまり問題にならない。バックレストを垂直位置で固定できれば、ダンボール箱など四角い荷物の収納が便利になるだろう。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
エンジンを吹かすと、ヒーン、ヒーンという甲高い音が耳についた。CVTベルトとプーリーからと思われるが、あるいは先にエンジン回転を下げてCVTを回すという新考案のリダクションギアによるものかもしれない。いずれにせよテスト時は通常よりも加減速を繰り返すので、この手の音が大きくなるのだが、町中で一定速走行に移ればこの回転帯を外れ静かになる。3気筒ターボエンジンはターボ過給が低い回転から開始され、ピークらしき波を持たずにスムーズに盛り上がる。CVTはあまりエンジン回転を上下させずに、速度上昇を変速機に委ねるのが省燃費運転のコツ。速度が上がるほど静かになる感覚を体得しよう。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
低重心は低いフロアに足を踏み入れた時から感じる。ルーフラックに重量物を積んだ時のような上体がグラッと傾く感覚はない。全体にボディも軽く軽快で無駄な動きを感じない。電動パワーステアリングは、最近の小型車より歴史が古いため、操舵フィールはより煮詰められている。フリクション感はないし概ね自然で作動もスムーズだ。あと少し落ち着きがあれば言うことなし。サスペンションはダンピングがしっかりしているのがダイハツ車の特徴。乗り心地もまずまず良好だった。
(写真=高橋信宏)
![]() |
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2006年7月14日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2006年式
テスト車の走行距離:1929km
タイヤ:(前)165/55R15(後)同じ(いずれもブリヂストン ポテンザRE030)
オプション装備:6スピーカーパック(2万1000円)/クリアブルークリスタルメタリック塗装(2万1000円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(5):山岳路(3)
テスト距離:268.6km
使用燃料:24.7リッター
参考燃費:10.9km/リッター

笹目 二朗
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。