レクサスGS450h“version L”(FR/CVT)【試乗速報】
日本の高級車の道 2006.03.29 試乗記 レクサスGS450h“version L”(FR/CVT) ……821万9750円 「レクサスGS」に、最強にして最上級のハイブリッドモデル「450h」が追加された。思うように販売が伸びていないレクサスブランドだが、本命のパワーユニットの登場は起爆剤となり得るだろうか。4.5リッターの加速、2.0リッターの燃費
ハイブリッド車に乗るたびに思う。ガソリンエンジン車は、なんてガサツなんだろうと。「シビックハイブリッド」のあとにノーマルのシビックに乗ったら、まるで騒々しい雑踏に放り出されたような気がした。静かさとスムーズさに関しては、ハイブリッド+CVTの独擅場だ。ならば、それは「プレミアム」にこそふさわしいはずである。トヨタがハイブリッド車をレクサスの最上級車種に位置づけているのはゆえなきことではない。
「レクサスGS」の本命がこの「450h」である。「アリスト」の後継となるGSには、当初4.3リッターと3.5リッターの2種類のエンジンが与えられていた。4.3リッターは長年の熟成を経て高級車の心臓としての威厳を獲得していたけれど、もとより新味はなかった。新開発の3.5リッターはスポーティで快活な気分を味わわせてくれたが、むしろ「IS」でその真価を発揮した。
450hの名は、「4.5リッター車に匹敵する加速性能」を持つハイブリッドカーを意味するという。「ハリアーハイブリッド」が北米レクサスでは「RX400h」だから、GSに搭載されたハイブリッドユニットが今のところ世界最強ということになるだろう。それでいて燃費は2リッター車並みと謳われていて、公表されたデータでは10・15モードで14.2km/リッターとなっている。
内外装の主張は控え目
外観では、これ見よがしにハイブリッドであることを主張してはいない。リアに「450h」、サイドに「HYBRID」と控えめに記されるだけである。ただ、プレミアムライトブルーと名付けられたボディカラーは450h専用なので、この色を選んだ場合はすぐに識別できる。運転席に乗り込んでも、他のグレードとそれほど変わらない。エンジン始動はもともとボタンで行われるし、セレクターレバーの意匠も同じなのだ。ただ、スタートボタンを押して浮かび上がるメーターパネルには、左端にタコメーターの代わりにハイブリッドシステムインジケーターが備えられていた。「POWER」「ECO」「CHARGE」と色分けされ、走行状態によって針が上下する。半分以上がPOWERのエリアとなっているところに、このハイブリッドシステムの性格が表れている。
トヨタのハイブリッドの通例で、モーターのみで音もなくするすると発進する。そして、気づかぬうちにエンジンが始動してトルクを伝え始めるのも同様だ。しかし、いったんアクセルペダルを踏み込むとインジケーターの針はたちまちPOWERのエリアに飛び込み、素晴らしいレスポンスでリニアな加速が始まる。この感覚はハリアーハイブリッドでも味わったものだが、さらにパワフルでスムーズなのだ。瞬く間に恐ろしいスピードに達するが、加速が鈍る兆候はまったく感じられない。高速道路での追い越しは、すこぶる楽だと想像できる。
発進加速と高速走行の両立のために2段変速式リダクション機構が用いられていて、LoギアとHiギアが自動で切り替わるのだが、運転していてそれを感知することはない。430に比べて車重は250キロ増加しているが、制動力に不安を感じることもなかった。もちろんブレーキング時にはエネルギーの回生が行われるが、油圧ブレーキとの協調制御は至って滑らかである。気になったのは、コーナリング時にパワーをかけていくと、かなり早い段階でタイヤが鳴き始めることだ。これは、標準のランフラットでもノーマルタイヤでも同じだった。
ハイテクでプレミアム
弱点があるとすれば、まず荷室だ。ハイブリッドシステムのエネルギー倉庫であるバッテリーは後席の背後に搭載されており、その分トランクルームの奥行きは犠牲になる。もちろん、バックシートを倒しての荷室拡大など、できようはずがない。4人乗り合わせてゴルフ場へ、という機会の多い向きには不便だろう。
もうひとつは、価格である。430の50万円増しで680万円というプライスタグが付く。今回試乗したのは豪華仕様の“version L”で、770万円だ。プリクラッシュセイフティシステム、ドライバーアシストブレーキコントロール、レーンキーピングアシストなどのハイテク装備を総動員して、豪勢に価格を押し上げる。燃費のよさで価格差を埋めようとしても無駄だろうし、そんなことを考えるユーザーもいないはずだ。
ハイテクを積み重ねることで新たなプレミアムを目指すのが日本の高級車の道なのだとすれば、「全部盛り」には現在の到達点が示されているという点で意義があるのかもしれない。これは皮肉でも反語でもない。欧州の古豪、強豪に立ち向かうためには日本発の発想が必要なはずだ。そのために、プレミアムのためのハイブリッドシステムは強力な武器になるのだと思う。
(文=NAVI鈴木真人/写真=郡大二郎/2006年3月)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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