スバル・インプレッサスポーツワゴン1.5i Gパッケージ(FF/4AT)【ブリーフテスト】
スバル・インプレッサスポーツワゴン1.5i Gパッケージ(FF/4AT) 2005.11.26 試乗記 ……153万8250円 総合評価……★★★★ 2005年6月、「インプレッサ」がフェイスリフトを受け、スバルが進める航空機をイメージした「スプレッドウインググリル」に変更された。ベーシックグレードのワゴンに試乗。
![]() |
秋葉原にショールームを
インプレッサといえば、スパルタンなWRXを思い浮かべるだろうが、実は販売台数でいくと半数以上が1.5リッターモデルなのだ。さらにそのうち9割がワゴン。販売サイドでは「インプレッサ=1.5リッターワゴン」である。
売れている理由も明白だ。若者が手を出しやすいであろうこのセグメントでは、価格面でライバルに対して大きなアドバンテージがある。「トヨタ・カローラフィールダー」「日産ウイングロード」がそれぞれ153万3000円、149万3100円(1.5リッターベーシックグレード+4AT)に対して、インプレッサスポーツワゴンは135万4500円。さらにオートエアコン付きと、標準の装備にも不満はない。それ以前に語られるべきルックスも、ターゲットを若い人に絞っているせいか、デザインもあか抜けていて食いつきがよさそうだ。積載量を意識したユーザーよりは、ワゴンスタイルに惹かれる人をターゲットにする。やはりスバルというブランドは、ニッチなマーケットを狙うのが得意で、WRXの人気に便乗しているとはいえ、この“素”のスポーツワゴンも、居場所をうまく探し当てたようだ。
露出の機会さえ増えれば、ライバルたちを出し抜くことができるほどの実力はもっている。うまく若者にアピールすることが大事だろう。そう、たとえば最近なら秋葉原あたりにショールームを構えてみるのも、マニア受けするスバルは成功するかもしれない。
![]() |
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
現行「インプレッサ」は2000年8月に発売された2世代目。しかし毎年のように各部の改良を行い、数度のフェイスリフトを受け、進化を続けている。2005年6月に行われたマイナーチェンジで、現在スバルブランドが進めている共通アイデンティティである、航空機をイメージした「スプレッドウインググリル」のフロントマスクに変更された。スポーツワゴンは、従来2リッターのNAユニットもあったが、現在は1.5リッターと2リッターターボの2種のみ。
(グレード概要)
「1.5i」はラインナップ中唯一のNAモデルで、その名の通り1.5リッターエンジンを搭載する。スポーティなWRXとエクステリアを異にする、プレーンなデザインのセダン/ワゴンである。駆動方式はFFと4WDの2種があり、さらにどのグレードにもMTとAT両方が用意される。1.5iはベーシックグレードで、上級「1.5i-S」はバケットシートやリアディスクブレーキなどが装着され、スポーティとなる。試乗車の「Gパッケージ」は人気装備をパッケージオプションとしたもの。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
Gパッケージに装着される本革巻きステアリングホイールは、シルバーリング付きのレッドルミネセントメーターと共に、スポーティな演出に一役買う。さらに感触も良く、頻繁に触れる部分だけにちょっと得した気分になる。チルトはできるがテレスコピックが付かないところが残念。フロアの4ATはゲート式であるが、N→D→3が一直線上に並んでいる。頻繁にあるNとDの行き来は、目視せずにできるよう、切り方を変更してほしいところだ。
(前席)……★★★★★
今回のマイナーチェンジによって、ベージュの内装が加わった。ライフスタイルワゴンとしては、この追加は正解だろう。ライバルにはない、バケットタイプのシートも美点である。多少硬めの感触ではあるが、適度なサイドサポートとともに、座り心地は悪くない。運転席に付くシートリフターの可動幅が大きく、女性ドライバーでも位置決めはしやすいはずだ。
(後席)……★★★
前後長があまりない座面と、立ち上がった背もたれで、窮屈な姿勢を強いられる。可倒式シートなのでしょうがないところか。また後席用のドリンクホルダーがないあたり、ワイワイ家族向けではないかもしれない。後席中央シートには標準でヘッドレストが備わらず、2点式のシートベルトとなる。5人乗りなら5人分の安全装備があるべきで、こういうところは省略しないほうがいい。
(荷室)……★★★★
セダンにはない6:4分割可倒式リアシートや、ハッチゲートのおかげで、荷物の積み込みは簡便。しかし、スタイリングを重視した「スポーツワゴン」ゆえに、荷室容量に過度な期待はできない。リアシートを倒せば奥行きは170cmほどになるが、左右リアストラットタワーの張り出しが荷室を犠牲にしている。乗り味と引き替えということか。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
エンジンの振動が少なく、音も静かな水平対向ユニットは好印象。ただしトルクは物足りなく、高速道路の入口などの坂道で、変速せずに登ることは難しい。燃費は落ちるだろうが、ATのモードを「スポーツ」にするほうが自然に走ることができる。スバルのラインナップ中、インプレッサにしか採用されない1.5リッターエンジンは、主力エンジンと違っておいてきぼりの感がいなめない。もう少し開発に力を入れてくれるとうれしいところだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
このクルマで語るべきは価格よりも、秀逸なハンドリングかもしれない。なにせ上級「WRX」ゆずりのシャシーを持ち合わせているわけであるから、ライバルの「カローラフィールダー」「ウイングロード」とは一線を画す。サスペンションはそれほど硬くないが、シャキッとした乗り心地。ステアリングホイールには路面からの情報が十分に伝わって、ドライビングの楽しみが味わえる。コーナリング時のライントレース性能は、FFとしてはすばらしいデキだ。
(写真=荒川正幸)
【テストデータ】
報告者:webCG本諏訪裕幸
テスト日:2005年8月23〜25日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2005年式
テスト車の走行距離:5462km
タイヤ:(前) 195/60R15(後)同じ(いずれもブリヂストン ポテンザRE88)
オプション装備:ルーフスポイラー&HDDロービームランプ(7万8750円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(5):山岳路(2)
テスト距離:349.3km
使用燃料:39.6リッター
参考燃費:8.8km/リッター

本諏訪 裕幸
-
ホンダ・アコードe:HEV Honda SENSING 360+(FF)【試乗記】 2025.10.10 今や貴重な4ドアセダン「ホンダ・アコード」に、より高度な運転支援機能を備えた「Honda SENSING 360+」の搭載車が登場。注目のハンズオフ走行機能や車線変更支援機能の使用感はどのようなものか? 実際に公道で使って確かめた。
-
ホンダ・プレリュード(FF)【試乗記】 2025.10.9 24年ぶりに復活したホンダの2ドアクーペ「プレリュード」。6代目となる新型のターゲットは、ズバリ1980年代にプレリュードが巻き起こしたデートカーブームをリアルタイムで体験し、記憶している世代である。そんな筆者が公道での走りを報告する。
-
日産リーフB7 X(FWD)/リーフB7 G(FWD)【試乗記】 2025.10.8 量産電気自動車(BEV)のパイオニアである「日産リーフ」がついにフルモデルチェンジ。3代目となる新型は、従来モデルとはなにが違い、BEVとしてどうすごいのか? 「BEVにまつわるユーザーの懸念を徹底的に払拭した」という、新型リーフの実力に触れた。
-
アストンマーティン・ヴァンキッシュ クーペ(FR/8AT)【試乗記】 2025.10.7 アストンマーティンが世に問うた、V12エンジンを搭載したグランドツアラー/スポーツカー「ヴァンキッシュ」。クルマを取り巻く環境が厳しくなるなかにあってなお、美と走りを追求したフラッグシップクーペが至った高みを垣間見た。
-
ルノー・カングー(FF/7AT)【試乗記】 2025.10.6 「ルノー・カングー」のマイナーチェンジモデルが日本に上陸。最も象徴的なのはラインナップの整理によって無塗装の黒いバンパーが選べなくなったことだ。これを喪失とみるか、あるいは洗練とみるか。カングーの立ち位置も時代とともに移り変わっていく。
-
NEW
マツダ・ロードスターS(後編)
2025.10.12ミスター・スバル 辰己英治の目利き長年にわたりスバル車の走りを鍛えてきた辰己英治氏。彼が今回試乗するのが、最新型の「マツダ・ロードスター」だ。初代「NA型」に触れて感動し、最新モデルの試乗も楽しみにしていたという辰己氏の、ND型に対する評価はどのようなものとなったのか? -
MINIジョンクーパーワークス(FF/7AT)【試乗記】
2025.10.11試乗記新世代MINIにもトップパフォーマンスモデルの「ジョンクーパーワークス(JCW)」が続々と登場しているが、この3ドアモデルこそが王道中の王道。「THE JCW」である。箱根のワインディングロードに持ち込み、心地よい汗をかいてみた。 -
航続距離は702km! 新型「日産リーフ」はBYDやテスラに追いついたと言えるのか?
2025.10.10デイリーコラム満を持して登場した新型「日産リーフ」。3代目となるこの電気自動車(BEV)は、BYDやテスラに追いつき、追い越す存在となったと言えるのか? 電費や航続距離といった性能や、投入されている技術を参考に、競争厳しいBEVマーケットでの新型リーフの競争力を考えた。 -
ホンダ・アコードe:HEV Honda SENSING 360+(FF)【試乗記】
2025.10.10試乗記今や貴重な4ドアセダン「ホンダ・アコード」に、より高度な運転支援機能を備えた「Honda SENSING 360+」の搭載車が登場。注目のハンズオフ走行機能や車線変更支援機能の使用感はどのようなものか? 実際に公道で使って確かめた。 -
新型「ホンダ・プレリュード」の半額以下で楽しめる2ドアクーペ5選
2025.10.9デイリーコラム24年ぶりに登場した新型「ホンダ・プレリュード」に興味はあるが、さすがに600万円を超える新車価格とくれば、おいそれと手は出せない。そこで注目したいのがプレリュードの半額で楽しめる中古車。手ごろな2ドアクーペを5モデル紹介する。 -
BMW M2(前編)
2025.10.9谷口信輝の新車試乗縦置きの6気筒エンジンに、FRの駆動方式。運転好きならグッとくる高性能クーペ「BMW M2」にさらなる改良が加えられた。その走りを、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか?