スバル・インプレッサ スポーツワゴン1.5R S/Aパッケージ(FF/4AT)【試乗記】
真面目なファミリーカー 2006.08.24 試乗記 スバル・インプレッサ スポーツワゴン1.5R S/Aパッケージ(FF/4AT) ……170万1000円 2006年6月26日にマイナーチェンジされた「インプレッサ」に、新エンジンを搭載した「1.5R」が加わった。そのFFモデルに試乗、新エンジンのフィールに絞って報告する。新エンジン「EL」の登場
スバル・インプレッサといえば、WRCの強烈なイメージゆえ、目立つウィングを備えたスポーツモデルを思い浮かべがちだが、市街地ではファミリーカーとして活躍しているスポーツワゴンの姿が目につく。その使われ方を見ると、ユーザーからはワゴンというより、大きめのカーゴスペースを持つ5ドアハッチバックと捉えられているようだ。今回マイチェンとともに追加された新エンジン「EL」型1.5リッターモデルに試乗する機会をえた。
「EL」型と呼ばれる新エンジンも、もちろんスバルが得意とする水平対向には変わりがないが、長らく使われてきた「EJ」と同じ1.5リッタークラスながら、完全に新しいエンジンだ。言い忘れたが「EJ」型もベーシック・エンジンとして「1.5i」に搭載されて生き残っている。
先代の「EJ15」型はSOHCであったが、「EL15」と呼ばれる新しい1.5リッターユニットはDOHCを採用。また、ボア・ストロークが77.7×79.0mmとEJ15型(85.0×65.8mm)に対して、ボア・ストローク・レシオが逆転しロングストローク化されている。さらに、スバルの1.5リッターエンジンとしては初めて、2リッターエンジンには採用済みの可変バルブタイミング機構「AVCS」(吸気側)や、4-1集合配管の等長エグゾースト・マニホールドを備えたことが新しい。
この結果、出力およびトルクは、「EJ15」と比較して10psと0.2kgm向上し、110ps/6400rpmと14.7kgm/3200rpmを発生している。最高出力の発生回転数位は5200rpmから6400rpmに高まっているが、最大トルクの発生回転数は逆に4000rpmから3200rpmへと低くなっている。メーカーでは中低回転域のトルクが高まったことにより、扱いやすく、また実用燃費が向上したと謳っている。
良好なエンジンフィール
最大の関心事は、メーカーが謳うようにエンジンのドライバビリティが向上しているかどうかにあるだろう。時節がら真っ先に燃費に注目が集まる。
今回のテストではおよそ700kmを走り、平均燃費はちょうど10.0km/リッターだった。そのうちの300kmほどが高速道路区間で、あとは朝晩の通勤と撮影というパターンだ。最良だったのは空いた高速道路を多用して移動した400kmほどのルートで記録した11.5km/リッター。最悪だったのは、都内の移動を含む撮影に使ったときの7.7km/リッターだった。
撮影区間を除くおよそ400kmのルートは、テスターがいつも使うテストメニューで、この区間の平均燃費は10.1km/リッターだった。この燃費については、1.5リッタークラスの最新エンジンが残した数値としてはいささかの失望を禁じえなかった。決してほかと比較して劣っていたというわけではないが、メーカーの広報資料を読んで、もっとよい燃費を期待していたのだ。後述するように中低回転域のトルクが高まったことにより、実用域では高回転まで引っ張ることは少なかったので、今回記録したものより10%ほどよい数値を期待していたのだ。ガソリン代が高騰するなか、さらなる燃費向上策を希望しておきたい。
新エンジンはたいへん扱いやすいユニットだ。その扱いやすさは、低い回転域からも力強いことで印象づけられたものだ。ファミリーカーにとっては、中低回転域の使いやすさこそが最も望まれる「性能」だからだ。市街地はもちろん、ちょっと活発に走ってもこの好印象は変わらなかった。
1.5Rのトランスミッションは4ATのみだが、新エンジンとATとのマッチングも良好で、右足の動きによく反応して変速してくれた。個人的にはATのサルーン(スポーツカーはその限りではないが)に乗ったら、変速操作は完全にATに任せきり、ドライバーが自ら積極的にレバーを動かすのは邪道だと信じている。そうした観点から見ても、このATには隔靴掻痒の思いはなかった。
リアシートのスペース拡大を望む
一言でいって、このインプレッサ1.5R、特にスポーツワゴンは、「まっとうで真面目な」ファミリーカーであった。市街地から高速まで良好なダンピングの効いた乗り心地と、ドライバーにとっての良好な視界、同クラスの5ドア・ハッチバックを凌ぐ広いカーゴスペースなどの美点は、家族の快適な移動手段として文句のないものだろう。S/AパッケージまたはAパッケージを選ぶと、リアにもディスクブレーキが備わる(1.5Rは後輪はドラム)ほか、16インチ・アルミ・ホイールに205/50R16タイやの組み合わせになる。個人的には、1.5Rの標準モデルが装着している175/70R14タイヤでも充分だと思う。
よくできたファミリーカーではあるが、ひとつだけ苦言を呈しておく。リアシートには合格点は与えられない。それはシートのできについてだ。座面は平坦かつクッションがスポンジーで節度がないのだ。子供からは文句は出ないだろうが、大人にとっては快適な空間ではないだろう。サイドウィンドウの視界は広く、天井も高いので、本来なら快適な空間になるはずで、これは残念なことだと思う。デザイン上あるいは構造上の制約があってしかたがないのだろうが、せめてスポーツワゴンだけでも、リアシートのスペースを拡大し、シートを上質なものにしてほしいと感じた。
このS/Aパッケージ付きに限って言えば、このパッケージだけに装着されるフロントのバケット型シートのバックレストがさらなる追い打ちをかける。目の前にそびえ立つ巨大なバックレストが後席乗員の前方視界を大いにスポイルするからで、しばらく乗り続けていたらテスターは閉所感を感じた。
レガシィクラスのワゴンほどの大きさは必要としないが、5ドアハッチバックは好まないというファミリーマンにとっては、コンパクトなサイズ(全長:4465mm)のインプレッサ・スポーツワゴンは、ちょうどよい選択といえるだろう。
(文=別冊単行本編集室伊東和彦/写真=峰昌宏/2006年8月)

伊東 和彦
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