ローバー25(CVT)/ローバー・ストリートワイズ(CVT)【試乗記】
「小英帝国」の密かな悦び 2005.02.19 試乗記 ローバー25(CVT)/ローバー・ストリートワイズ(CVT) プレス向け試乗イベント「JAIA試乗会」で、2005年7月に導入が予定されている「ローバー25」「ローバー・ストリートワイズ」にいち早く乗ることができた。二玄社編集顧問大川悠と『NAVI』編集委員鈴木真人が、概要を報告する。
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テレンス・コンラン風
鈴木:日本で販売されるローバー車は「75」のサルーンとツアラーのみという状態が続いていましたが、この7月からラインナップが拡充される予定です。今回はBセグメントの「25」とそれをベースにした「ストリートワイズ」に試乗することができました。この25は、前身である「ローバー200」とはかなり違うんですか?
大川:10年くらい前、200のイギリス試乗会に行ったんですよ。結構気に入って、知り合いに勧めて買わせた覚えがあります。なにしろ、ローバーオリジナルのKエンジンがとても気持ちがよかったんです。それと、いわゆるセグメントBにしては味わいがあった、深みがあった。「フォルクスワーゲン・ポロ」とか「オペル・コルサ」とかは、それなりにちゃんとできているんですが、基本的には実用のアシなわけです。でも200は、実用性よりもむしろ「様式」がウリだったんですね。
鈴木:このローバー25も、インパネにウッドを使ったりして独特な雰囲気があります。
大川:ウッドもそうですが、メーターまわりとか細かいスイッチ類が、イギリスのコンテンポラリーデザイン、いわゆるテレンス・コンラン風なんです。
鈴木:コンランのものって、特に女性に今ウケていますよね。
大川:ドイツのカッチリしたものとか、日本のカワイイ系のものに比べて、いい感じがしました。
鈴木:日本では「トヨタ・ヴィッツ」も出ましたし、「日産マーチ」とか「スズキ・スイフト」とかもいい出来で、激戦区になっていますね。
大川:どのクラスでも同じですが、輸入車の魅力というのは「日本車じゃないこと」なんです。「イギリス車であること」が、ローバ−25の魅力なんです。
鈴木:資金難から上海汽車の子会社になりそうですが、工場は移転しないでイギリスで作り続けるみたいですね。やはりそこは譲れないところなんでしょう。
大川:ただ、ハードウェアについて悪いところをいえば、いくらでもありますよ。CVTの完成度が低いところとか。
鈴木:最近あまり見ない、CVTらしいCVTでしたね。古典的で(笑)。
日本人が発想しないクルマ
鈴木:25の上屋を変えたモデル、ストリートワイズも導入されることになりました。プラットフォームやドライブトレインは共通で、車高を上げて樹脂製のバンパーなどを装着しています。いわゆる都市型SUVということなんですが……。
大川:ちょっと理解しにくいところがありますね。でも、ということは要するに、似ているものがないということになるわけです。
鈴木:日本人が発想しないクルマですね。バケットシートを4つつけたSUVライクなクルマなんて、ちょっと考えつきません。
大川:オートサロンにしか出てこないでしょうね(笑)。だからこそ、かけがえのないクルマということなんです。
鈴木:たぶん、SUVとしての能力はあまりたいしたことはないんでしょう。少し車高が高いだけで。
大川:でも、クリアランスがあるということは、ちょっとした雪の時なんかにずいぶん違うんですよ。
鈴木:オマケの機能ということでは、ありがたいです。あくまでも、あの形と内装を気に入った人のためのクルマではありますが。
MGローバーの車種が一気に拡充
鈴木:今までは日本で買えるローバーは75だけだったんですが、25とストリートワイズに加えて、コンパクトセダンの「45」も導入される予定です。それから1.4リッターのローバー最小モデル「シティローバー」、これはインドのタタ社が製造しているクルマですね。「コマースCDV」という3ドアハッチも導入されるようです。75のリムジンやV8モデル、それにMGのスーパースポーツ「Xパワー」も入ってきますから、MGローバーのラインナップが一気に広がりますね。
大川:それは朗報ですが、ちょっと心配なのは、MGローバーはしばらく資金不足だったので、次世代のクルマの開発が滞ってはいないか、ということです。ただ、今あるモデルは登場してからずいぶん時間がたっていて、熟成が進んでいるでしょうね。
鈴木:去年工場を見学したんですが、最近ではあまり見られない光景がありました。今はどこの工場でもロボットがクルマを作っているんですが、MGローバーでは工員さんがたくさんいて、手作りでクルマを組み立てているんですよ。なんだか、ベントレーの工場に雰囲気が似ていました。値段は十分の一なのに。
大川:ブリティッシュワールドがこの値段で手に入る、そう「小英帝国」の悦びなんです。そこにMGローバー最大の価値があるんです。
鈴木:もちろん、英国趣味ということでは「ジャガー」という確固とした存在があるわけです。でも、この値段で同じ世界を垣間見ることができるというのは、大きな価値ですね。
大川:ジャガーを持っている人は、その隣にコンパクトな25を置くのもいいでしょう。MGローバーの各車はずいぶん長くフルチェンジをしていませんが、そのおかげで無国籍にならずに済んでいるとも言えます。
鈴木:値段はまだ発表されていませんが、たぶんリーズナブルなものになるんでしょう。
大川:とにかくスタイルがありますから、それを気に入ればお買い得だと思います。
鈴木:逆に言えば、英国趣味を持っていない人は気にしなくてもいいクルマです(笑)。
大川:それでいいんです。この世界が好きな人にとっては、大きな価値があるんですから。
(まとめ=NAVI鈴木真人/写真=荒川正幸/2005年2月)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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