ルノー・メガーヌRS(6MT)【ブリーフテスト】
ルノー・メガーヌRS(6MT) 2004.11.15 試乗記 ……378.0万円 総合評価……★★★★★ ルノーのモータースポーツ部門たるルノー・スポールの手でターボチューンが施された「ルノー・メガーヌRS」。“お尻”が魅力のフレンチハッチは、どんなクルマになったのか? 自動車ジャーナリスト森口将之がインプレッション。 |
40オトコが打ちのめされる
おとなっぽいクルマだと思った。今までのホットハッチが大なり小なり備えていた子供っぽさが、このクルマにはない。エンジンは静かで滑らかで扱いやすいうえ、ハイパワーの前輪駆動車には付きものといえたトルクステアはなく、乗り心地は予想以上に快適。身のこなしは凪いだ海のようにおだやかだった。
でも、つまらないわけじゃない。加速は圧倒的だし、吹け上がりや音は文句なく心地よい。ステアリングは正確で、コーナリングスピードは高く、ブレーキは信じられないほど効く。そういった仕事を、これみよがしにやるのではなく、当たり前のようにあっさり片づける。そんなしぐさに、“オトナ”を感じたのである。
20年前だったら、刺激がすくなすぎると思ったかもしれない。でも今の自分に、冷静と情熱を兼ね備えた「メガーヌRS」は刺さりまくった。しかも、フロントサスペンションが普通のメガーヌと別物だったり、生産は元アルピーヌのディエップ工場で行われたりと、クルマ好き歴20年以上の心をくすぐるネタも、しっかり携えている。
大きなエアインテークや2本出しマフラーが、さりげなく自己主張するエクステリアしかリ。オレンジのアクセントが、唐辛子みたいにピリッと効いたインテリアしかり。デザインから走りまで、すべてが40代のホットハッチ好きに照準を合わせたかのようなメガーヌRSに、すっかり打ちのめされてしまった。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2002年のパリサロンでデビューを果たした2代目メガーヌ。通称メガーヌII。ルノーのCセグメントカーとして、「フォルクスワーゲン・ゴルフ」「オペル・アストラ」「トヨタ・カローラ」などと、覇を争う。
日本への導入は2004年1月にスタート。ボディ形状は、3または5ドアハッチバック、パワートレインは1.6リッター+4AT、または2リッター+4ATが用意された。2004年6月に「ワゴン」を追加。同年10月、2リッターモデルに6段MT仕様を加えるなど、バリエーションの拡大を図る。本国を走る「クーペ・カブリオレ」「セニック」「グランドセニック」も、追って導入されるという。
6段MT仕様の追加と同時に発表されたのが、ターボユニットを積むホットバージョン「メガーヌRS」。F1を手がけるルノーのモータースポーツ部門、ルノー・スポールが開発、元アルピーヌのディエップ工場で生産されるスペシャルモデルだ。当初は3ドア/左ハンドルのみだが、2005年春に5ドア/右ハンドルが追加される予定。
(グレード概要)
エクステリアには、大きなエアインテークをもつバンパー、リアスポイラーなどを装着。専用サスペンションにより、車高はノーマルより10mm低い。インテリアは、メーターやシートベルト、ABCペダルなどに専用品を採用。革張りのバケットシートやステアリングホイールを備え、スポーティと高級感を両立させたという。
エンジンは、2リッター直4DOHC16バルブをツインスクロールターボで過給し、最高出力224ps/5500rpm、最大トルクは30.6kgm/3000rpmを発生。ターボユニットながら、2000rpmで最大トルクの90%を発生する扱いやすさも自慢である。トランスミッションは6段MTが組み合わされる。
パワーアップにあわせてシャシーも強化。フロントサスペンションに、ステアリング精度を高めるダブルジョイントサスペンションを採用したほか、トルクステアを抑えるためのジオメトリー変更など、細部に渡るチューニングが施された。ブレーキは、フロントにブレンボ製4ポッドキャリパーを装着する。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★★
他のメガーヌと共通のインパネはダークグレーのシングルトーンに変更。シルバーだったメーターのリングやセンターパネルはブラックに変わり、クールで落ち着いた雰囲気だ。そこに本革巻きステアリングとシフトレバーに入ったオレンジのステッチ、書体からして別物のメーター、アルミ製ペダルなどが、絶妙なスパイスを加えている。このサジ加減のうまさはさすがルノーだ。装備レベルは今までの最上級グレード「2.0プレミアム」と同等で、RSが走りだけを追求したモデルではないことを教えてくれる。
(前席)……★★★★★
オレンジ色のシートベルトとレザーのステッチが鮮烈な前席は、他のメガーヌよりもむしろソフトな座り心地。スポーツモデルらしく、サイドの張り出しは大きめだが、それよりも座面や背もたれの沈み込みによってサポートが得られる感じだ。メガーヌ3ドアの前席には、世界初の「アンチサブマリンエアバッグ」が座面に仕込まれているが、それによって座り心地が悪くなったりはしていない。ホットハッチらしからぬ優しい感触は、弟分の「ルーテシアRS 2.0」と共通するものだ。
(後席)……★★★★
広さは5ドアと同じ。一部のメディアでは“プラス2”という表現もあるが、実際はそんなに狭くない。身長170cmの自分が前後に座ると、ひざの前には15cmもの空間が残るし、頭が天井に触れることはない。
折り畳み方は、座面を起こしてから背もたれを倒すダブルフォールディング方式。背もたれだけを倒す方式のライバルと比べると、座面を高めにできるおかげで、快適性は上だ。
(荷室)……★★★
こちらも5ドアと共通。ただし、奥行きはあるが浅めで、とくに手前はスロープしたリアゲートのために高さが限られる。5ドアなら不満になるところかもしれないが、スポーツクーペっぽい雰囲気の3ドアRSでは、その点はあまり気にならなかった。役得(?)である。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
ツインスクロール式ターボチャージャーと空冷式インタークーラーを備えた2リッター直列4気筒エンジンは、最高出力224psと、ヨーロッパ車としてはかなりハイチューン。ところが走り始めると、静かさと扱いやすさに驚かされる。ターボの立ち上がりは2000rpmあたりからと低く、ジワジワ盛り上がっていく性格。もっともその後の加速はかなり強烈で、ウェット路面では簡単にホイールスピンを起こすほどだ。さらに、まわす楽しさも自然吸気エンジン並みに備える。4000rpmあたりからは緻密なメカニカルサウンドと太いエキゾーストノートが適度なボリュームでキャビンに流れ込み、乗り手を刺激しながらレッドゾーンまでストレスなく吹け上がっていく。トランスミッションは、同時に5ドアの2リッターにも設定された日産製6段MT。シフトのストロークは適度に短く、ルノーらしいしっとりした感触を返してきてくれた。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
ステアリング系をストラットから切り離した「ダブルアクスルサスペンション」の効果は絶大。サブフレームにクロスメンバーを追加したおかげもあって、ステアリングは剛性感が圧倒的に高まり、電動アシストっぽい感触がほぼ消えた。コーナーでは、ハイパワーの前輪駆動車ありがちなトルクステアが感じられないことに驚く。リアのグリップも高い。とにかくよけいな動きがないので、ドライビングに集中できた。ブレンボ製パーツをおごったブレーキの、目の覚めるような効きもすばらしい。それでいて、ひとつひとつの動きはおだやかで、乗り心地も硬めながら快適なのだ。
これには、タイヤサイズが、本国仕様の225/40R18から225/45R17へインチダウンされたことも大きいだろう。乗り味を無視してまで大径ホイールを組み合わせるクルマが多いなか、インポーターの良識に感謝したくなった。
(写真=郡大二郎/2004年11月)
【テストデータ】
報告者:森口将之
テスト日:2004年10月12日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:--
タイヤ:(前)225/45R17(後)同じ(いずれもコンチネンタル コンチスポーツコンタクト2)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(2):山岳路(8)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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