ボルボEX30クロスカントリー ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)
いまどきのマルチプレイヤー 2026.02.24 試乗記 ボルボの電気自動車「EX30クロスカントリー」に冬の新潟・妙高高原で試乗。アウトドアテイストが盛り込まれたエクステリアデザインとツインモーターからなる四輪駆動パワートレイン、そして引き上げられた車高が織りなす走りを報告する。力強いアウトドアテイスト
天気予報士が「東京都内での今日の最高予想気温は7℃。前日よりも9℃低い予想です」と述べ、「昨日との寒暖差にくれぐれもご注意を」と繰り返したその朝、帽子に手袋、スノーブーツとそれなりの重装備で降り立った北陸新幹線・上越妙高駅の駅前ローターリーは、除雪が行き届き、路面に雪はなかった。気温は3℃。空気は凛(りん)とし風は冷たいが、日差しがあるので過ごしやすい。
まわりは雪景色なのに路面は基本ドライコンディション。ところどころは消雪パイプからの水がたまった状態になっている。いまどきの雪国にありがちなそうした風景のなか、上越妙高駅を後に、まずは「EX30クロスカントリー」のノーズを黒姫山方面に向けた。
導入時に「都市部におけるEX30の快適な走行性能や機能性をそのままに、ボルボがこれまで培ってきたクロスカントリーの伝統を引き継ぎ、キャンプやスキーなどのアウトドアアクティビティーにも最適なBEV」と紹介されたEX30クロスカントリーは、先に上陸した後輪駆動モデル「EX30シングルモーター」の最低地上高を20mm引き上げ、前後にモーターを積む四輪駆動パワートレインを採用。ホイールアーチのエクステンションや前後にマットブラック仕上げパネルを追加し、ワイルドなSUV風味をまぶしている。
ベースとなったEX30をアーバンテイストと紹介するなら、こちらは明らかにアウトドアテイスト。前後に備わるマットブラック仕上げのパネルには、スウェーデンの北極圏にある標高2103mのケブネカイセ山脈の地形図からインスピレーションを受けたというユニークなアートワークが入り、フロントにはその位置を示す緯度と経度「67°54'0"N,18°31'0"E」が刻まれている。いちいち心憎い演出だ。ちなみに今回の冬道ドライブで目指す先の黒姫山の標高は、2053mである。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
現代的な北欧風味のインテリア
EX30クロスカントリーのインテリアはクリーンでシンプル。基本的にはEX30のデザインを踏襲している。運転席の前にメーターパネルはなく、12.3インチと大型のセンターディスプレイに多くの情報表示を集約。量産車ではほかでお目にかかれないサウンドバータイプのharman/kardonのプレミアムサウンド・オーディオシステムをダッシュボードに置き、個性と先進性を巧みにバランスさせた。
しかし、エントリーモデルなのでというエクスキューズはあるかもしれないが、速度計をはじめとする走行関連の情報がセンターディスプレイにしか表示されないのは不便である。速度とヘッドランプやウインカーの点灯、目的地までの経路案内といった最低限の情報は、ヘッドアップディスプレイなどを通じて視線移動の少ないドライバーの目の前で確認したいところだ。
ウール30%、再生ポリエステル70%を配合したテイラードウールブレンド素材と、リサイクル素材およびバイオ由来素材からなる「ノルディコ」のコンビネーションシートは、すべての電気自動車でアニマルフリーを推進するボルボらしいこだわりである。ただ、デザインや質感は申し分ないが、後席は座面が小さく高さも不足気味で、つま先の置き所がない点も残念。これはクロスカントリーが、ではなく、EX30シリーズに共通するポイントだ。
北欧のモデルらしく手袋をつけたままスイッチを操作できたり、ぶつかっても安心、クルマを何台かルーフに乗せてもつぶれなかったりする(昔そんなCMがあった)機能的で頑丈なボルボのイメージは電動化を掲げた洗練の波に飲み込まれたが、立派さや華やかさをいたずらに追わない最新のEX30クロスカントリーもまた、現代的にアップデートされた北欧イメージに合致するから不思議だ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
4輪が路面をしっかりとつかむ
EX30クロスカントリーは、フロントに最高出力156PS、最大トルク200N・m、リアにシングルモーター車と同じ最高出力272PS、最大トルク343N・mのモーターを搭載する「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」のみがラインナップされる。このパワートレインは車名からもわかるように四輪駆動車「EX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」に準じたものだが、一充電走行距離は60km短い500km(WLTCモード)である。
アウトドアテイストのエクステリアデザインと電動四輪駆動の組み合わせは、クロスカントリーを名乗る最新モデルにふさわしいものだ。今回は多くのシーンがドライ路面であったが、しっかりとしたボディーと、少し硬めの足まわり、そして後輪側が少しパワフルなパワートレインがもたらす直進安定性はなかなか印象的だ。
しかし、そうした何気ない日常での走りを後方に吹き飛ばすのが、このツインモーターである。アクセルペダルに乗せた右足の力を強めれば、0-100km/h加速3.7秒のスポーツカー顔負けとなる加速性能を体感可能だ。「レンジ」「標準」「パフォーマンス」の3種類から選択できるドライブモードを最も戦闘力の高い(そのぶんバッテリーの減りも当然早いが)パフォーマンスモードにした際の加速力は、大げさではなくシートに体が押しつけられんがばかり。怒涛(どとう)のアグレッシブさだ。
そんなシーンでも前後のモーターがつかさどる四輪駆動は効果的で、路面をしっかりとグリップしながら車両を前へ前へと押し出す。今回の車両は、降雪地域での走行を前提に235/50R19サイズのスタッドレスタイヤ「ノキアン・ハッカペリッタR3 SUV」を履く。欧州育ちのこのタイヤは前後方向の安定性が高い。冬用タイヤにもかかわらずドライ路面では、ツインモーターの大パワーを受け止めていた。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
硬質だけどちょっとほわっと
回生ブレーキの利きは「OFF」「低」「高」の3段階から選べる。アクセル操作だけで完全停止に至るワンペダルドライブが実現するのもEX30クロスカントリーの特徴だ。ちなみに回生ブレーキの利きとは別にクリープの有無も選択可能。ドライバーの運転スタイルに合わせた設定ができるのはありがたい。
ワインディンロードの下りでは「高」を選び、アクセルとステアリング操作だけの走行をしばし満喫。正確にどれぐらいとはリポートできないが、こうしたシーンでは、回生ブレーキによるバッテリーへの充電も期待できる。しっかりとした接地感を伝えてくるハンドリングはクイックでもダルでもなく、クロスカントリーというオフ寄りの車名にマッチしたもの。ソリッドでありつつ悪くない乗り心地も、マルチプレイヤー的なクロスカントリーの個性だろう。
ただ、道中小さな集落に差しかかり、地元の人しか通らないような道に入り込んだシーンでは、ボディーサイズのわりに大きな回転半径がEX30クロスカントリーの使い勝手をスポイルしているように感じた。このクラスで5.5mという回転半径は、いかに前後のオーバーハングが切り詰められていても、路地を曲がるたびにストレスとなる。
話を四輪駆動と雪上に戻せば、さんざん探してごく短いセクションで試せた雪道では、十分なトラクションと20mmアップした最低地上高の恩恵を確認することができた。ゲレンデに向かう雪道で過去何度か痛い目にあっているドライバー(私だ)にとってはたかが20mm、されど20mmである。ありがたさが身に染みる。
シャープでよりスポーティーな走りは、車高の低いシングルモーターやツインモーター パフォーマンスに譲る。しかし元来ボルボは、安心・安全のうえに成り立つ硬質だけどちょっとほわっとした走りが味なんじゃなかった? と、「V70」どころか最後の後輪駆動車「740」あたりの走りを記憶しているベテラン勢は、クロスカントリーのほうに懐かしきボルボらしさを感じるかもしれない。
(文=櫻井健一/写真=佐藤靖彦/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
ボルボEX30クロスカントリー ウルトラ ツインモーター パフォーマンス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4235×1850×1565mm
ホイールベース:2650mm
車重:1880kg
駆動方式:4WD
モーター:永久磁石同期電動機
フロントモーター最高出力:156PS(115kW)/6000-6500rpm
フロントモーター最大トルク:200N・m(20.4kgf・m)/5000rpm
リアモーター最高出力:272PS(200kW)/6500-8000rpm
リアモーター最大トルク:343N・m(35.0kgf・m)/5345rpm
タイヤ:(前)235/50R19 103R XL/(後)235/50R19 103R XL(ノキアン・ハッカペリッタR3 SUV)
一充電走行距離:500km(WLTCモード)
交流電力量消費率:161Wh/km(WLTCモード)
価格:649万円/テスト車=671万2750円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション ボルボ・ドライブレコーダー<スタンダード>(17万3250円)/UV&IRカットフィルム(4万9500円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:9119km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

櫻井 健一
webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD) 2026.8.22 DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】 2026.8.21 メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。
-
マツダCX-5 L(4WD)【試乗記】 2026.8.19 マツダの販売の中軸を担うミドルクラスSUV「CX-5」が、3代目にフルモデルチェンジ。その完成度にはどうしても期待してしまうところだが、実車の仕上がりはどうだったのか? 絶対に失敗の許されない、マツダの基幹車種の実力に触れた。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(FWD)【試乗記】 2026.8.18 クルマの進化か、充電インフラの進化か、それともCEV補助金拡充の効能かは定かではないが、ようやく日本の電気自動車(BEV)も普及期を迎えつつある。ことに「bZ4Xツーリング」は豊かな一充電走行距離と優れたドライバビリティーが自慢のトヨタの最新作だ。FWDモデルの仕上がりをリポートする。
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【試乗記】 2026.8.17 BMWの新世代電気自動車の第1弾である「iX3」がいよいよ日本の道を走り始めた。さすが「ノイエクラッセ」をうたうだけあって、内外装だけではなく、運転感覚もまた新しい。「Mスポーツ」グレードの仕上がりをリポートする。
-
トヨタRAV4アドベンチャー(前編)
2026.8.23思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「トヨタRAV4」に試乗。ご存じのとおり今やトヨタの屋台骨を支えるSUVであり、先代モデルではグローバルでの年間販売台数が100万台に到達。世界で最も多く販売されるトヨタ車の6代目だ。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
DS N°8エトワールAWD(4WD)
2026.8.22試乗記DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。 -
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】
2026.8.21試乗記メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。 -
これは“ヨーロッパ版軽自動車”か? 欧州の新自動車規格「M1E」とニッポンの軽の可能性
2026.8.21デイリーコラム欧州で検討されている、新たな小型電気自動車(BEV)規格「M1E」。手ごろなBEVの普及と域内自動車産業の保護を目的としたこの規格は、軽自動車という独自の小型車を育んできた日本にとってもチャンスとなるのか? 新たな自動車規格の展望と可能性を考察する。 -
FCEVで世界一の販売台数 「ヒョンデ・ネッソ」にみる水素の可能性と普及へのカギ
2026.8.20デイリーコラムフルモデルチェンジしたヒョンデの燃料電池車(FCEV)「ネッソ」は、1014km(参考値)の一充填走行距離を実現したという。進化したゼロエミッションの走りを味わいながら、ヒョンデが目指す水素社会の可能性とFCEVの未来について考えてみた。 -
第292回:350SEが運ぶのは幸福か、それとも究極の不幸か…… 『星の時 4K』
2026.8.20読んでますカー、観てますカーブラジルの女性小説家クラリッセ・リスペクトルが1977年に発表した小説を、女性監督スザーナ・アマラウが1985年に映画化した伝説の作品。「メルセデス・ベンツ350SE」がもたらす運命の瞬間を謎めいた手つきで描き出す。















































