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BYDシーライオン6(FWD)

三日会わざれば 2026.02.23 試乗記 高平 高輝 「BYDシーライオン6」は満タン・満充電からの航続可能距離が1200kmにも達するというプラグインハイブリッド車(PHEV)だ。そして国内に導入されるBYD車の例に漏れず、装備が山盛りでありながら圧倒的な安さを誇る。300km余りのドライブで燃費性能等をチェックした。
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半分はPHEV

2025年、テスラを抜いて世界最大のEVメーカー(テスラ約164万台に対してBYD225万台)となったBYDが、12月に国内発売したPHEVの第1弾がSUVのシーライオン6だ。日本では初のPHEVだが、本国では以前からPHEVもラインナップしており(BYDは現在いわゆる新エネルギー車のみ生産)、2025年の世界販売台数約460万台の半数がPHEVである。日本仕様のシーライオン6にはFWDと前後2モーターのAWDが発表されているが、AWDはこの3月からデリバリーが始まる予定である。

「DM-i(デュアルモードインテリジェンス)」と称するプラグインハイブリッドシステムは、このFWD仕様の場合、最高出力98PSと122N・mを生み出す1.5リッター4気筒エンジンと197PSと300N・mのモーター、そして容量18.3kWhのリチウムイオン電池(得意のリン酸鉄系)からなるが、ガソリンエンジンは基本的に発電用で、できるだけモーターで走行するシリーズハイブリッドである。ただし高速での巡航など、一定条件下ではエンジンが直接駆動する場合もあるという。WLTCモードのEV走行換算距離は100km、ハイブリッド燃費は22.4km/リッターと発表されており、合わせて1200kmもの航続距離を誇るという。しかもレギュラーガソリン仕様だ。

価格はFWDが398.2万円(AWDは448.8万円)と装備満載のPHEVとしてはびっくりするほど安い(日本勢のPHEVと比べると150万円ほどの価格差あり)。PHEVであるから補助金が期待できるのだが、そんな金などあてにしないと言わんばかりの価格設定である。ちなみに日本仕様はモノグレードでこの試乗車もオプションはなし。“オールインクルーシブ”で400万円切りである。

今回の試乗車は「BYDシーライオン6」のFWDモデル。2026年3月にはAWD車のデリバリーも控えている。
今回の試乗車は「BYDシーライオン6」のFWDモデル。2026年3月にはAWD車のデリバリーも控えている。拡大
ボディーの全長4775mmは日本のPHEVである「トヨタ・ハリアー」や「三菱アウトランダー」と同じくらいだ。
ボディーの全長4775mmは日本のPHEVである「トヨタ・ハリアー」や「三菱アウトランダー」と同じくらいだ。拡大
BYDの海洋シリーズ(シーライオンは英語でアシカ)に共通のオーシャンXフェイスを採用。カイヨウというよりは「カイエン」という感じも少々。
BYDの海洋シリーズ(シーライオンは英語でアシカ)に共通のオーシャンXフェイスを採用。カイヨウというよりは「カイエン」という感じも少々。拡大
タイヤサイズは前後とも19インチ。この試乗車はインドネシアのタイヤメーカーであるGiti(ジーティー)の「ジーティー コントロールP10」を履いていた。高い静粛性やグリップ力が売りのハイパフォーマンスタイヤに属するようだ。
タイヤサイズは前後とも19インチ。この試乗車はインドネシアのタイヤメーカーであるGiti(ジーティー)の「ジーティー コントロールP10」を履いていた。高い静粛性やグリップ力が売りのハイパフォーマンスタイヤに属するようだ。拡大

実用的ではあるが

ハイブリッドモードを選んでいても発進は当然モーター駆動である。実用域ではなかなかたくましく、かつ静かに加速する。高速道路の合流などでフル加速すると、まずエンジンが大きくうなり声を上げ(始動するとそれなりに耳につく)、その後にスピードがついてくるという具合で、まるでCVT車のようなタイムラグがあってダイレクトさに欠けるものの、それ以外の場面ではドライバビリティーに不満はない。0-100km/h加速は8.5秒と発表されているが、実際1940kg(車検証値)の比較的大柄なボディーを持て余すことはなく、普通に走る限りは思った以上に身軽な感じである。

Bレンジやシフトパドルは備わらないが、回生ブレーキの強さはセンタースクリーン上で2段階に調整できる。もっともスタンダード/ハイのどちらを選んでも減速度には大きな違いはなく、しかもホーム画面から階層を掘り下げたところにスイッチがあるせいであまり使う気にはならない。ちなみにシートヒーター/ベンチレーターのスイッチもちょっと深い階層にあって二度手間だ。機能は盛りだくさんでコントロール類もスマートに配置されているようだが、実際のきめ細かな使いやすさという点ではいまひとつといえる。ただし、すでに知られているようにBYDの日進月歩の勢いというか、年次改良ではなく月次ではないかというほどのスピード感は段違いである。こういう点も素早くバージョンアップされると思われる。

BYDのプラグインハイブリッドシステム「DM-i」はモーターが主役でエンジンがアシストのコンセプト。EV走行とシリーズハイブリッド走行を基本に、高速道路での巡行時などにはエンジンが発電しつつ駆動にも参加するシリーズ・パラレルモードも使う。
BYDのプラグインハイブリッドシステム「DM-i」はモーターが主役でエンジンがアシストのコンセプト。EV走行とシリーズハイブリッド走行を基本に、高速道路での巡行時などにはエンジンが発電しつつ駆動にも参加するシリーズ・パラレルモードも使う。拡大
ダッシュボードには合皮のソフトパッドが張られるなど、価格を考慮するとインテリアの質感は優秀。他のBYD車とは異なりセンターの15.6インチタッチスクリーンの回転機構が省かれている。
ダッシュボードには合皮のソフトパッドが張られるなど、価格を考慮するとインテリアの質感は優秀。他のBYD車とは異なりセンターの15.6インチタッチスクリーンの回転機構が省かれている。拡大
合皮のシートはブラックとブラウンの落ち着いた色調が好ましい。ヒーター&ベンチレーション機能、電動調整機能なども完備する。
合皮のシートはブラックとブラウンの落ち着いた色調が好ましい。ヒーター&ベンチレーション機能、電動調整機能なども完備する。拡大
後席はリクライニング機能を装備。ヒーターがないのは寂しいが、開発速度が段違いのBYDゆえ、市場からの声があれば次の改良では搭載されるかもしれない。
後席はリクライニング機能を装備。ヒーターがないのは寂しいが、開発速度が段違いのBYDゆえ、市場からの声があれば次の改良では搭載されるかもしれない。拡大
10スピーカーからなるインフィニティのサウンドシステムを装備する。
10スピーカーからなるインフィニティのサウンドシステムを装備する。拡大

なんだか無国籍料理風

アッパーミドルサイズのボディー(全長は4.8m弱、全幅ほぼ1.9m)を持つゆえに室内スペースは申し分なし。リアシートの足元も広く着座姿勢も自然である。インテリアはシートもダッシュまわりもソフトなレザー(合皮らしい)で仕立てられており、センターコンソール周辺にはピアノブラックパネルをあしらうなど、トレンドが満遍なく取り入れられている。ダッシュ中央のタッチスクリーンは15.6インチサイズ、センターコンソール前方にはスマホのワイヤレスチャージャーが2基も備わっている。

いかにもライバルを徹底的に研究している様子だが、そのせいでむしろ特徴がなくなり、どこのブランドか分からない、いささか個性が薄い風情もある。このほうが世界市場で広く受け入れられるのかもしれないが、何でもそろっている反面、デザインもどこかフュージョン料理のようだ。とはいえ、プレミアムオーディオシステムやパノラマサンルーフも標準装備でこの価格なのだから、文句を言う筋合いではないと納得させられる。

駆動用リン酸鉄リチウムイオンバッテリーの容量は18.3kWhで、WLTCモードのEV走行換算距離は100kmを誇る。デフォルトではバッテリー残量が25%を下回らないようにエンジンが逐次発電する。
駆動用リン酸鉄リチウムイオンバッテリーの容量は18.3kWhで、WLTCモードのEV走行換算距離は100kmを誇る。デフォルトではバッテリー残量が25%を下回らないようにエンジンが逐次発電する。拡大
センターコンソールのスイッチ類はすっきりシンプルなレイアウト。EVモードとハイブリッドモードを任意に切り替えるスイッチもある。
センターコンソールのスイッチ類はすっきりシンプルなレイアウト。EVモードとハイブリッドモードを任意に切り替えるスイッチもある。拡大
Qi規格のスマートフォンのワイヤレスチャージャーを2つ装備。どちらも出力15Wまで対応している。
Qi規格のスマートフォンのワイヤレスチャージャーを2つ装備。どちらも出力15Wまで対応している。拡大
巨大なパノラミックサンルーフも標準装備だ。もちろんブランドにもよるが一般的には20万円以上のオプションだろう。
巨大なパノラミックサンルーフも標準装備だ。もちろんブランドにもよるが一般的には20万円以上のオプションだろう。拡大

額面どおりではないけれど

乗り心地はまずまず。可変ダンパーなどを持たないコンベンショナルなサスペンションのSUVとしては及第点といえるだろう。路面が荒れている場所や高速道路ではタイヤのドタバタ感が気になる場面もあり、もう少しフラットさが欲しいと感じるが、これまた他のSUVのレベルを研究し尽くしているなと思わせる。標準装着のGiTi(シンガポール本社のインドネシア企業。ジーティーと呼ぶらしい)というブランドのタイヤにはなじみがなく、このクルマだけでは判断するのが難しい。ちょっと重い感じがするが、取り立てて問題があるわけではない。

いささか期待外れだったのは燃費である。走りだす際には1000kmを超える航続距離が表示されていて期待が高まったが、いつもよりは山道走行が少なかったにもかかわらず、満タン法での数値はモード値よりはだいぶ低く11km/リッター弱にとどまった。シーライオン6は任意の区間燃費をオンボード表示する機能がなぜか備わらず(直近50kmの平均燃費は表示される)、データをさらに集めないとどこが不得手なのかはっきりしないが、大柄なSUVとはいえ(さらにレギュラーガソリンとはいえ)もう少し伸びてもいい。実用的なSUVとして使い倒す人にはかなり魅力的と思われるシーライオン6だが、大きなウリである実用燃費が額面どおりでないのは痛い。日常が電動走行の範囲内で済む人向け、と見るべきなのかもしれない。

(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=BYDオートジャパン)

総距離317.5kmを走行した今回の満タン法燃費は10.8km/リッターと少々期待外れな結果。計測終了時点で残りのEV走行可能距離が55km、エンジン走行可能距離が503kmと表示されていた。
総距離317.5kmを走行した今回の満タン法燃費は10.8km/リッターと少々期待外れな結果。計測終了時点で残りのEV走行可能距離が55km、エンジン走行可能距離が503kmと表示されていた。拡大
「セーブ」モードを使うとバッテリーをどれだけキープして走るかを任意に設定できる(25%~70%の範囲)。
「セーブ」モードを使うとバッテリーをどれだけキープして走るかを任意に設定できる(25%~70%の範囲)。拡大
「シーライオン6」はトリップ間の平均燃費や電費は表示できないが、直近50km走行分のエネルギーデータはこんなにも細かくチェックできる。
「シーライオン6」はトリップ間の平均燃費や電費は表示できないが、直近50km走行分のエネルギーデータはこんなにも細かくチェックできる。拡大
荷室の容量は425~1440リッター。後席の跡地がフラットなところなどには、ライバル車を研究し尽くし、ここが劣っているとは言わせないという姿勢が感じられる。
荷室の容量は425~1440リッター。後席の跡地がフラットなところなどには、ライバル車を研究し尽くし、ここが劣っているとは言わせないという姿勢が感じられる。拡大

テスト車のデータ

BYDシーライオン6

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4775×1890×1670mm
ホイールベース:2765mm
車重:1940kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:98PS(72kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:122N・m(12.4kgf・m)/4000-4500rpm
モーター最高出力:197PS(145kW)
モーター最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)
タイヤ:(前)235/50R19 99V XL/(後)235/50R19 99V XL(ジーティー・ジーティー コントロールP10)
ハイブリッド燃料消費率:22.4km/リッター(WLTCモード)
EV走行換算距離:100km(WLTCモード)
交流電力量消費率:153Wh/km(WLTCモード)
価格:398万2000円/テスト車=398万2000円
オプション装備:なし

テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:4129km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:317.5km
使用燃料:29.1リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:10.8km/リッター(満タン法)

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