アルファ・ロメオ・ジュリア クアドリフォリオ エストレマ(FR/8AT)
ほしいならお早めに 2026.02.17 試乗記 「アルファ・ロメオ・ジュリア」に設定された台数46台の限定車「クアドリフォリオ エストレマ」に試乗。アクラポビッチ製エキゾーストシステムの採用により最高出力を520PSにアップした、イタリア語で「究極」の名を持つFRハイパフォーマンスモデルの走りを報告する。正真正銘“究極のジュリア”
ジュリア クアドリフォリオは、500PS超の2.9リッターV6ツインターボを積んだ、Dセグメントスポーツセダンだ。2015年に世界デビューして、2017年に国内発売となった。以来、細部のアップデートはあったものの、日本仕様についてはエンジンスペックにいたるまで変わらず、つくり続けられてきた。
デビュー時は「BMW M3」や「メルセデスAMG C63」がライバルとされたが、今はどちらも4WDとなり、さらにC63にいたってはプラグインハイブリッド化された。いっぽうのクアドリフォリオは後輪駆動。ほかのジュリアや「ステルヴィオ」を見ればおわかりのように、使える4WDがないわけではないが、ジュリアはあえて後輪駆動を守っているわけだ。
そんなジュリアのトップモデルを今回あらためて連れ出したのは、2025年11月に限定車として登場したエストレマの取材車が用意されたからである。エストレマとは、英語のエクストリーム(究極、過激の意)に相当するイタリア語だ。ジュリアの同名限定車は2022年にもあったが、クアドリフォリオベースは初。トップモデルベースなのだから、正真正銘、これぞ“究極のジュリア”といえるだろう。
エストレマの外観的特徴は、近年のスポーツモデルのトレンドである“ブラック化”である。通常の足もとはガンメタホイールに赤ブレーキキャリパーの組み合わせだが、エストレマではブラックで統一されて、しかもホイールは軽量タイプ。リアの「GIULIA」バッジもダークカラーとなっている。内装ではシートが、武闘派のスパルコ社製カーボンバケットから、適度にソフトで快適性も高いヒーター付き電動スポーツレザーシートに交換されている。
ちなみに、今回の軽量ホイールやスポーツレザーシートは、2024年11月から2025年6月の期間限定で受け付けられたカスタマイズプログラム「Design Your Quadrifoglio」でも用意されていたメニューのようだ。
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フェラーリの手になる2.9リッターV6
……といった内外特別装備はともかく、カーマニアにとっての今回最大のポイントはエンジンだ。名門アクラポビッチのチタンエキゾーストシステムを装備して、最高出力が従来の510PSから520PSに上積みされているのだ(最大トルクは変わらず)。日本法人のステランティス ジャパンが、合計46台の限定車のために取材車を用意したのは、このエンジンをアピールする意味もあるだろう。
ただ、本国の資料によると、この“520PS+アクラポビッチ”は日本では初見だが、欧州では2023年6月の仕様変更時に採用されたエンジンチューンのようだ。当時は欧州に加えて北米と中国にも、同チューンが導入されている。このときの仕様変更モデルは同年11月に日本でも発売になっているものの、適用されたのは全面液晶化されたメーターやメカニカルLSDといった部分だけで、エンジンは従来チューンから変わらなかったのだ。
相変わらずローダウン加減がドンピシャのジュリア クアドリフォリオの、今回の取材車は左ハンドルだった。エストレマは計46台の限定数のうち、左ハンドルが19台、右が27台となっている。スポーツレザーシートは見てのとおり、快適性とホールド性が両立したタイプで、シートヒーターだけでなくステアリングヒーターも同時追加されるのが、この時期の取材にはありがたかった。
それにつけても、2.9リッターV6ツインターボだ。ジュリア クアドリフォリオ最大の仮想敵はM3のはずだが、敵が直6ならこっちはV6。アルファも戦前から1960年代までは直6も手がけたが、1980年代以降はV6がお家芸である。もっとも、この2.9リッターV6の基本設計も生産もフェラーリだが、かつてのフィアットやランチアなど、イタリアの同胞にフェラーリがエンジンを供給した例はいくつもある。なので、これも由緒としては申し分ない!?
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引き締まった古典的な味わい
そんなV6ツインターボの存在感はエストレマでも濃厚だが、2017年の発売直後の「いつでもいったるぞ!」的な荒くれ感と比較すると、明らかに洗練された。それは、つまらない優等生になったという意味とはちがう。
クアドリフォリオ専用の「Race」モードではアクラポビッチサウンドがさく裂。低回転から湧き出るトルクはいかにも今風だが、4000rpm以上で音とレスポンスが上乗せされて、あからさまにクライマックスめいてくるのがたまらない。エストレマならではの10PS分を体感するのは困難だが、5000rpm、6000rpmと力感と勢いを積み増しながら、7000rpm強のリミットまで、勢いがまったく衰えず、しかし鋭く回り切るのは快感というほかない。
ただ、不敵な振動をたたえていたアイドリングが明らかに滑らかになったことと、あらゆる回転域でまったくよどみない点が、洗練された印象の主因だろう。聞けば、この2.9リッターV6ツインターボの最新仕様は、アクラポビッチに加えて、燃料噴射システムにも改良が入っているとかいないとか……。
洗練された印象はシャシーも例外ではない。専用の電子制御可変ダンパーの減衰は、“DNA”を冠するドライブモードで、標準の「Normal」とエコモードにあたる「Advanced efficiency」では柔らかく、スポーツモード相当の「Dynamic」を選ぶと少しハードに、クアドリフォリオ専用のRaceではさらに硬くなる。
いずれも素直に引き締まった古典的な味わいであることは変わりなく、超クイックなステアリング設定もそのままだ。しかし、アシの動きは明らかに滑らかになり、そしてフラット感が増している。微小域からしっかり減衰が利くようになったからか、コブシひとつ分の操舵でもスパッと向きを変えるステアリングが、ときに悪目立ちしてしまうクセもほぼ感じなくなった。
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今や希少な怪力FR車
ソフトなモードでは、舗装の修正パッチのような凹凸もシュワピタと吸収してフラット姿勢を保ってくれるのが美点だ。しかし、絶対的にハードなバネに減衰が追いつかないケースもあり、大きなウネリが連続すると上屋の動きもどうしても大きくなってしまう。
こうした場合は、DNAをDynamicに切り替えて減衰を一段ハードにすると、上屋の動きは減少する。そのぶん突き上げがズシズシ響くようになるのは否定しないが、無粋に跳ねることはなく、目線もことさら上下しない。
Raceではアシはさらにハードになるも、明確なアクセルとブレーキング操作で相応の入力をすれば、フットワークにはきちんと血が通うのがいい。以前に感じた低速域でのカックンブレーキ的なクセがほぼ解消されているのは、取材車が左ハンドル車だったからだろうか。
面白いのはDNAドライブモードダイヤル中央のダンパーの絵が描かれたボタンを押すと、DynamicとRaceでのダンピングが、それぞれ一段階ずつソフトになることだ。どのモードも得意不得意が比較的はっきりしているので、これは意外なほど有用な機能だと思った。ただ、デフォルトがソフトなNormalとAdvanced~で逆にハードにする機能がないのは残念。個人的にはDynamicの標準となるちょい硬めのダンピングが、いちばんクアドリフォリオらしく、強いていえばオールラウンドだと思うからだ。
最大トルク600N・mという怪力を、このサイズのFR車で御するのは今や希少体験というほかないが、けっしてテールハッピーではなく、濃厚な接地感と常に前に押し出すトラクションが失われないのは素晴らしい。そこにはメカニカルLSDとトルクベクタリングの効果もあるだろうが、マセラティやジープにも使われる「ジョルジョ」プラットフォームの高い潜在能力も無関係ではないだろう。
そんなジュリア クアドリフォリオにも生産終了のウワサがつきまとうようになっている。ほしいなら、お早めに。
(文=佐野弘宗/写真=花村英典/編集=櫻井健一/車両協力=ステランティス ジャパン)
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テスト車のデータ
アルファ・ロメオ・ジュリア クアドリフォリオ エストレマ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4635×1865×1435mm
ホイールベース:2820mm
車重:1710kg
駆動方式:FR
エンジン:2.9リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:520PS(382kW)/6500rpm
最大トルク:600N・m(61.2kgf・m)/2500rpm
タイヤ:(前)245/35ZR19 93Y/(後)285/30ZR19 98Y(ピレリPゼロ コルサ アシンメトリコ)
燃費:--km/リッター
価格:1447万円/テスト車=1470万6070円
オプション装備:メタリックペイント<ヴェズヴィオグレー>(10万円)/ETC車載器(1万6060円)/フロアマット<Alfa Romeo>(6万0060円)/ドライブレコーダー<V263A>(5万9950円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:5008km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(5)/山岳路(3)
テスト距離:397.8km
使用燃料:45.4リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:8.7km/リッター(満タン法)/7.2km/リッター(車載燃費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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