第134回:「2004バーゼル&SIHH時計通信」(その3)“マジでポルシェな時計登場!
2004.06.04 小沢コージの勢いまかせ!第134回:「2004バーゼル&SIHH時計通信」(その3)“マジでポルシェな時計登場!
■アナログでデジタル!?
もう一つの大きなトピックスは、あのポルシェ・デザインが複雑時計の世界に初参入したことだ。そう、新作「インジーケーター」。まだプロトタイプで「市販は来年か?」ってレベルだけどね。
複雑時計ってのは「永久カレンダー」とか「ミニッツリピーター」とかの機能を備える機械式時計のこと。価格レベルは1000万円とか2000万円!! と超お高い、いわば「宝飾メカニズム付き腕時計」。インジケーターは、前代未聞の画期的な複雑機能を付け加えた。
それは「デジタル機械式クロノグラフ」(!?)。通常、機械式クロノグラフってのは、ストップウォッチ機能を針でアナログ表示するものだけど、インジケーターは最長10時間をデジタル表示……つまり「1時間55分」とか「4時間49分」とかを数字で表示する。しかも機械的メカニズムでだ。
「クオーツでやりゃいいじゃん!」なんて子供なことはいわないよーに。コレを実現するために、約400個ものパーツが使われている「歯車大王」なのであーる。バカバカしくも面白い。ある意味、メカオタクなポルシェには超ふさわしいモデルかもしれない。
■いかにも“ポルシェっぽい”
このモデルには、さらに超重要なポイントがあって、それは新たに「ポルシェAG」の資本参加を受けたことだ実はこれまで、ポルシェ・デザインは100万円以下の“カンタンな”機械式時計しかつくっていない。しかもムーブメントは他社製で、ケースのみ自前&自前デザインというお手軽な手法だった。
ところがどっこい、今回、複雑時計づくりに参入するに当たり、新たに「エテルナ」という機械式時計メーカーを買い取り、さらに「PLH」という新たな会社を興し、「ポルシェAG65%、従来のポルシェ・デザイン35%」の比率で出資してるのだ。要は純スポーツカーメーカーであるポルシェが、直接機械式時計づくりに本格参入したことに他ならない。しかもトヨタF1さながら、「シャシーからエンジンまで」という超本格体制でだ。
ラッキーにも、新会社のCEO、ERNST・F・SEYRさんって人にインタビューできたんだけど、この方、元々ポルシェ・デザイン創設者であるアレクサンダー・ポルシェの友人。そう、ポルシェ一族の仲間なのだ。おまけに、元ラリー・ドライバーであるうえ、プライベートで飛行機会社も経営してたという超エリート。ついでに顔もイイ。
でね、インジケーターはこの方が自ら企画&デザインをしたそうで、発想の原点は「飛行機で残り時間を見るとき、針よりデジタルの方が見やすいでしょ」だってさ! くぅ〜、エリート・パイロットならでのセリフですなぁ。俺もいってみてー。
ってなわけで、直接クルマっぽくはないけど、マインドが実に“ポルシェっぽい”「インジケーター」。オタクくさいキライはあるけど、現場に「カレラGT」を展示して、「inspird by carreraGT」ってキャッチコピー書かれてたのにもうなずける。時計業界のクルマ化、ますます進行してますぜ!
(文と写真=小沢コージ/2004年6月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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