第451回:日本も学べる(?)中国自動車事情 新婚さん、“すてきなカーライフに”いらっしゃ〜い!?
2012.06.11 小沢コージの勢いまかせ!第451回:日本も学べる(?)中国自動車事情新婚さん、“すてきなカーライフに”いらっしゃ〜い!?
何でも、自動車熱が高まる中国には「新婚夫婦を対象にした自動車メディア」があるのだとか……?
現地で話を聞いてきた、小沢コージのリポート。
クルマ売るなら新婚さん!?
新車ネタも飽きたので(?)、今回はちょい“暇ネタ”を。
この4月に取材してきた北京ショーで、不肖・小沢が一番驚かされたコレ! 『新婚购车指南』というサービスだ。
直訳すると“新婚さん向けクルマ選び”ってことになる。ショーへのブース出展は、今年が初。「そんなの、本当にウケるの!?」と思ったら、今年の2月にはウェブサイトもオープンしていて、中国の大手ポータルサイト『新浪』から3000組、他からも1万組のリクエストがあったという。
驚きの大好評。今回の北京ショーでも何組かカップルをアテンドしたというのだが……。なぜそんなにウケるかって? まずは何より、「圧倒的な潜在需要があるから」なのだ。
「中国では、年1000万組のカップル、つまり2000万人(!)の“新婚さん”が生まれます。結婚するとクルマを買うというケースが多いですから、それだけでも大変多くの需要につながるんです」とは、若き編集長の曹リリーさん(31歳)。
なんと驚きの1000万組!! その1割でも100万台。ぶっちゃけ、小さな国なら一国分の需要になる。
実は曹さんは、既存の『中国汽車市場』という自動車メディアの編集部員で、自身も2011年に結婚している。その後、「クルマ選びで悩むことがとても多かったので、この新しい媒体を思いついた」そうな。
的を絞ったサービス
サービスの内容は、「『日産ティーダ』を買うのか、それとも『栄威(ロンウェイ)350 』を買うべきか?」といったクルマ選びがメインだが、それ以上に、お金の工面もポイントとなっている。
「結婚するとクルマが欲しくなるものですが、一番のネックは家賃です。二人で住むので賃料は高くなり、クルマが買えなくなってしまう。そこで、田舎の家を借りるか、あるいは親の家に同居するか……そういうアドバイスもします。中国では、男が部屋代を出し、女性はクルマを提供するというケースもあるんですよ」。
なるほど。そんな相談にまでのるのか。そのほか、クルマを多数集めて一斉試乗会を開くこともあるそうだ。
その車両の評価は、意外に細かい。「外観」や「パワー」や「セーフティー」など、5つの項目ごとに、それぞれ100点満点の評価が行われる。「明日は6組の方が来られますが、たいていその場で(購入するモデルを)決めますよ」と曹さん。
一瞬、俺は「これは中国だけの現象じゃないか」と思ったが……「いや、日本でもアリかも?」と思えた。
周りを見たところで、クルマが必要とされるのは、結婚したてのときよりもむしろ、結婚して子供ができた時だ。「新婚购车指南」じゃなくて、「子育てクルマ選び指南」はアリかもしれないのだ。
日本だったら「子育てファミリー」
もちろん日本の場合、クルマ情報が氾濫しているので単純に「デザイン○点、居住性○点、安全性○点」といってもユーザーには響かない可能性はある。
だが、実際にクルマを買う段になって、各ディーラーを回るのは面倒なもの。例えば、「週末どこか郊外のショッピングモールで、トヨタ、日産、ホンダにスズキ、フォルクスワーゲンなどの主要ブランドがそろった、赤ちゃんのいる新婚向けの大試乗会」というのは十分アリだ。そこでチャイルドシートやらカンタンなカーケアグッズやら値引き情報、納車タイミングまで一度にわかったとしたら……。
最近は、大手スーパーマーケットの店先で軽自動車を売ってたりするし。調べたところ、日本の婚姻件数は年間60〜70万件。その半分が子供を授かったとして30万件チョイ。中国よりはだいぶ少ない気はするが、子育てこそクルマが欲しくなるタイミングなのは事実だし、引っ越しも含めて新車購入をアピールするのはアリかもしれない。
いやいや、まったく。中国侮れません……と考えるのは、オオゲサ過ぎますかね? マジな話、小沢コージも日本で“楽しい子育てクルマ選び”のイベントがあったら協力しますぜ。全力で!(笑)
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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