第453回:今後のメルセデスはますますデザインに走る!? 「CLSシューティングブレーク」発表会&新型「Aクラス」欧州試乗!
2012.07.27 小沢コージの勢いまかせ!第453回:今後のメルセデスはますますデザインに走る!?「CLSシューティングブレーク」発表会&新型「Aクラス」欧州試乗!
「CLS」はワゴンで決まり!
いやはや変わる変わるとは思ってたけど、ますます変わってきた気がしますぜ。世界のメルセデス・ベンツ! 今回スロベニアで行われた新型「Aクラス」試乗と、ロンドンからクルマで数時間のところにある、歴史あるサーキット、ブルックランズで行われた「CLSシューティングブレーク」のワールド発表会に行ってきたんだけど、これがもう、とにかくなりふり構わぬアピールぶり。
まずはCLSシューティングブレークだけど、驚いたのは発表会場に堂々と他ブランドのシューティングブレークを置いていること。といっても、直接のライバルではなく“先達(せんだつ)”のモデルだ。そもそもこのジャンルが、狩猟を前提としたイギリスのスノッブな自動車カルチャーから生まれたことをフィーチャーしてるんだろうけど、それにしてもアストン・マーティンのシューティングブレークを並べてるなんて、他の発表会じゃ聞いたことないッス。
それとプレゼンテーションで面白かったのは、動物の例えバナシだ。「馬とカバを一緒にして、美しいデザインが生まれると思いますか?」だって(笑)。それだけチャレンジングなデザインだとアピールしているわけだけど、確かにCLSシューティングブレークを見て、俺もちょっと考え変わった部分はありました。
最初は、ブレークっていうかワゴンの一種だってことにとらわれて、ガンコオヤジよろしく「カッコだけのワゴンかよ!」と訝(いぶか)しく思っていたのも事実。なんというか、ベンツ版「アルファ156スポーツワゴン」みたいなイメージよね。ついついナンパに走ってしまったメルセデス、オマエもか! みたいな(笑)。
で、まあ、大筋はその通りだろうけど、実際のところ、CLSシューティングブレーク、実にカッコ良いわけですよ。特にリアのマッチョなフェンダーとリアまわりのトロンとした傾きのマリアージュが◎。ちょっとデカダン系のデザインで、ぶっちゃけセダンより全然カッコいい!
拡大 |
拡大 |
そもそも、「CLS」は初代の方が華奢(きゃしゃ)で全然良かったと思っていて、2代目はゴージャスだけど、ちょっと大味だなぁ……と思ってたのがほどよく打ち消された感じ。
ラゲッジルームの容量もマジなワゴン並みにデカいし、リアシートには身長176cmの俺が余裕で乗れる。見た後は「もしやCLS買うならシューティングブレーク!?」なんて現金にも思っちゃった次第。つくづく、七難隠すはナイスデザイン! なんちゃってね(笑)。ちなみに日本導入時期は未定です。
新型「Aクラス」は未来への種まき!?
一方、新型「Aクラス」に関しては、「やはり時代は変わった。メルセデスって実は割とラテン的なメーカーだったんだな」って感じ。
というのも、結構しつこく問いただしたわけですよ。試乗会が行われたスロベニアで、若きプロダクトマネージャーのゲルト・サイラーさんに。「伝統のサンドイッチ構造を本当に捨ててもいいんですか?」と。
すると実にケロっと「われわれの目的は若返りです。今のAクラスオーナーの平均年齢は50代。これを30〜40代に持っていきたいのです」とあっさり&きっぱり。まるで過去を引きずっていない。
っていうか、彼ら、このAクラスの投入が“世界征服”のビッグチャンスになると思ってるフシがある。大前提として、「Cクラス」や「Eクラス」を買うような“リッチ層”は、意識が固定化した40代以上。なおかつ、その志向は世界各国で違っていて、共通の憧れや願望というものはほぼない。
一方、いわゆる「Aクラス」を買うような若年層――具体的には20代前後のユーザー――は、インターネットの浸透などにより、アメリカ、ヨーロッパ、アジアのいずれにおいても、共通の美意識なり憧れを抱いている。
そのAクラスのいる“プレミアムコンパクトセグメント”は、今後10年でほぼ倍になる見通し。具体的には657万台が1062万台になると、ダイムラーは踏んでいる。地域でいうなら、アメリカはもちろん中国をはじめとするアジアを含むグローバル全般。Aクラスは世界中でナンバーワンになるつもりなのだ!!
さらに、このAクラスでプレミアムの味を覚えた層は、そのままCクラス→Eクラス、ことによったら「Sクラス」と買い換えを続ける可能性を秘めている。まさに今後成長するグローバル自動車市場における“種まき”であり、それだけにこれだけ躍起になっているわけだ。そういう視点をさしおいて、「旧型がどうだ?」「もしや失敗だったのでは!?」なんて議論は全く要らないわけですよ。
「1シリーズ」や「ゴルフ」とガチンコ
肝心の「Aクラス」の走りだが、とにかくスポーティー&上質の一言。今回公道で乗ったのはピークパワー156hp、ピークトルク250Nm(25.5kgm)を発生する新型1.6リッター直噴ターボ搭載の「A200」。ギアボックスはメルセデス独自の最新型デュアルクラッチ式「7G-DCT」。プラットフォームとエンジン、ギアボックスは基本「Bクラス」と共通だが、テイストまで同じと思ったら大間違い。
ステアリングはBクラスとは段違いのしっかり感&ナチュラルフィーリングで、とてもFFとは思えない。FRの駆動方式をとるライバル「BMW 1シリーズ」を相当研究したとみた。
一方、加速力は十分だが、スペックの割に実感としてのトルクは薄め。メルセデス・ベンツならではの、高級車らしいセッティングがなされた結果なのかもしれない。
乗り心地は思っていたより硬め。だが、タイヤの仕様が違うAMGモデルだと気にならなくなってくる。ここはセッティングによって変わってきそうだ。
そしてスペース。リアシートは、格別に広いというわけではないが「1シリーズ」と同等で、身長176cmの俺がキチンと乗った状態でヒザにコブシ1個分余る。ラゲッジ容量は341リッター。「フォルクスワーゲン・ゴルフ」が確か350リッターだから、“FFプレミアム”としては上出来で、ちょいデカ目のFR車であるBMW 1シリーズよりはスペース効率がいいようだ。ちなみに空気抵抗の目安になるCd値は0.27で、クラス最小だとか。
そのほか衝突を回避するための「コリジョン・プリベンション・アシスト」などハイテク安全デバイスも満載で、徹底的にライバルを研究しつつメルセデスらしさも出していこうという作戦らしい。
とにかく「CLS」しかり、「Aクラス」しかり、なりふり構わずライバルに勝ちに来たという感じ。しかも伝統の味わい以上に、デザインで勝負にきているという。新たなる仁義なき戦いの始まりなんですな。おそらく……。
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
第454回:ヤマダ電機にIKEAも顔負けのクルマ屋? ノルかソルかの新商法「ガリバーWOW!TOWN」 2012.8.27 中古車買い取りのガリバーが新ビジネス「WOW!TOWN」を開始。これは“クルマ選びのテーマパーク”だ!
-
第452回:これじゃメルセデスには追いつけないぜ! “無意識インプレッション”のススメ 2012.6.22 自動車開発のカギを握る、テストドライブ。それが限られた道路環境で行われている日本の現状に、小沢コージが物申す!?
-
第451回:日本も学べる(?)中国自動車事情 新婚さん、“すてきなカーライフに”いらっしゃ〜い!? 2012.6.11 自動車熱が高まる中国には「新婚夫婦を対象にした自動車メディア」があるのだとか……? 現地で話を聞いてきた、小沢コージのリポート。
-
第450回:あえて言います「ハチロク、残念!」 Apple製品になり損ねた、奇跡のスポーツカー 2012.4.24 小沢コージが「トヨタ86」に試乗。ちまたで大人気のスポーツカーでも、これだけは言わせてもらいます!?
-
NEW
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
NEW
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
NEW
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。






























