ホンダ・ステップワゴン スパーダS(4AT)【ブリーフテスト】
ホンダ・ステップワゴン スパーダS(4AT) 2003.08.07 試乗記 ……224.5万円 総合評価……★★★ 「こどもといっしょに……」のキャッチコピー(とリーズナブルな価格)で、世の親御さんをとらえた「ステップワゴン」。他社の追従激しいなか、フェイスリフトと新グレード追加でリフレッシュ!![]() |
雰囲気は違っても
ホンダ「ステップワゴン」というとTVCFの影響か、“子供を乗せて走るクルマ”というイメージが強い。しかし、今回のマイナーチェンジで追加された「スパーダ」は、フロントグリルやインテリアのデザインからもわかるように、従来のステップワゴンのイメージとはまた別の雰囲気に仕上げられている。
とはいえ、シンプルで機能的なデザインは従来どおり。たくさんの乗員と荷物を載せて走る場合でも、広い居住スペースは確保されており、乗り心地も悪くない。ピープルムーバーとしての素質は十分である。
運転についても、直進安定性は高く、直線的なボディゆえ取りまわしも楽。これに、運転する楽しさが加わると、文句ないのだけれど……。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1996年5月に初代がデビューした、5ナンバーサイズの3列シートミニバン。現行モデルは、2001年4月にフルモデルチェンジした2代目で、ボディを若干広げ、シートアレンジに工夫が凝らされるなどした。
03年6月5日にマイナーチェンジが行われ、“5ナンバーミニバン”の枠を破る2.4リッターエンジン+5AT搭載モデルと、内外装をスポーティに演出した新グレード「スパーダ」を追加。2列目ベンチシートや、電動スライドドアがオプション設定されるなどの改良も施された。市場での人気は依然として高く、マイチェンモデルは発売から1ヶ月で、約1万2000を受注したという。
(グレード概要)
グレード体系は、マイナーチェンジで変更され、「B」と「G」は2リッターモデルのみの設定。追加された2.4リッターのベーシックグレードは「24L」となる。スポーティグレードの「スパーダ」は、2リッター版が「スパーダS」、2.4リッターモデルは「スパーダ24T」と呼ばれる。
スポーティグレードの「スパーダS」は、内外装に差別化が図られた。フロントマスクは、専用メッシュグリルとマルチリフレクター4灯式ヘッドライト、エアロフォルムバンパーを装着。ほかに、テールゲートスポイラーや、専用色を使ったリアコンビネーションランプを採用し、精悍なイメージを謳う。
インテリアは、自発光メーター、3本スポークステアリングホイール、黒木目調パネルを採用。シート生地には、毛足の長いファー調トリコットが使われる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
「精悍でスタイリッシュな新タイプ」という位置づけのスパーダらしく、室内はブラック基調の落ち着いた雰囲気。なかでも、ブラックの木目調パネルがアクセントになっている。大型でシンプルなデザインのメーターもスポーティな印象だ。運転席のスイッチで操作できるパワースライドドアは、このモデルに標準装着される。ただし、スライドドアが助手席側にしかないのは何かと不便だった。
(前席)……★★★
ブラックのトリコット地シートは一見スポーティだが、座ってみるとソフトにからだを受けとめる心地よい感触である。スパーダ専用の3本スポークステアリングホイールもまた、スポーティの演出に一役買っている。運転席まわりには、大型インパネポケットやドアポケット、ドリンクホルダー、コインホルダーなど、収納スペースが充実。小物の置き場には困らなかった。
(2列目シート)……★★★★
ステップワゴンの2列目シートには、「バタフライシート」と「ベンチシート」(Bを除くメーカーオプション)が用意される。前者は、左のシートが長距離バスの補助席のように畳めることに加え、独立してスライドするタイプ。後者は、6:4に個別スライドし、座面に厚みをもたせたシートである。いずれの場合も、乗車定員は8人である。
試乗車は、標準のバタフライシート仕様で、シートを回転せず3列目と対座にできるのが特徴だ。フロアから着座位置まで十分な高さがあるため、足を自然な姿勢に保てるのはうれしい。スライドドア側の一人がけシートは“補助席”扱いだが、使わないときに畳んでおけるので、3列目のアクセスはとても簡単だ。
(3列目シート)……★★★
サードシートも、“緊急用”としての性格が強い3列目としてはクッションが厚く、座り心地がいい。レッグルーム、ヘッドルームは十分に確保される。
(荷室)……★★★
フロアがフラットなステップワゴンでは、荷室も地上高が低く抑えられており、荷物の出し入れは便利だ。荷室面積も広く、3列目を使っている状態でも、50cm近い奥行きが確保される。スクエアで背の高いボディにより、幅、高さとも十分だ。サードシートの収納は、シートバックを寝かせてから、全体を横に跳ね上げるタイプだが、ワンタッチ……とはいかないのが玉にキズ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
マイナーチェンジでは、2.4リッターエンジンが追加されたが、5ナンバーボディで名をはせたステップワゴンでは、メインとなるのはやはり2リッターエンジン。加速時にはやや大きめのノイズを発するものの、2000rpm以下の低回転域から常用域まで、必要十分なトルクを発揮する。カメラマン&機材と『webCG』の編集部員を乗せて箱根の山を走ったが、2リッターでも力不足は感じない。インパネシフトの4段オートマチックに、これといった仕掛けは見られないが、とくに不満はない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
スポーティを反映してか、やや硬めの乗り心地を示す。道路状況によっては、ゆっくりと上下動を繰り返すこともあるが、概ねフラットな印象である。2列目、3列目シートでは、リアアクスルから路面の凹凸が伝わってくるが、それでも十分合格点が与えられる。高速走行時の直進性は高く、安心してステアリングを握ることができた。
一方、コーナリングはアンダーステアが気になる。とはいえ、ロールスピードはよくチェックされており、乗員が不安に感じることはないだろう。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2003年7月8日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:2390km
タイヤ:(前)195/65R15 91S(後)同じ(いずれもヨコハマ ASPEC)
オプション装備:AM/FMチューナー付きCDプレーヤー/ディスチャージヘッドライト/15インチアルミホイール(13.5万円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1):山岳路(4):高速道路(5)
テスト距離:378.4km
使用燃料:48.6リッター
参考燃費:7.8km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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