「なぜ、温度が下がるの?」
2002.11.26 クルマ生活Q&A エンジン「なぜ、温度が下がるの?」
スカイラインGT-Rなどに使われている「ナトリウム封入バルブ」を、排気側に使うと、排ガスの温度が下がるといいます。どうしてですか?(山口県・TH)
お答えします。金属ナトリウム封入バルブは、排気バルブ自体を冷却します。この冷却装置の仕組みは簡単でありながら効果があります。エンジンの吸排気に使われているポペットバルブ(茸型弁)の軸(ステム)が中空になっていて、その中に約50から60%のナトリウムが封入されています。
このナトリウムは90度くらいで液化して流動性のよいものになります。バルブが上下に動くときに内部のナトリウムが拡散して熱をシリンダーヘッドへ逃がして冷却するのです。
燃焼したときの排気バルブは1000度以上の高温にさらされます。もちろん、高出力なクルマほどバルブが高温にさらされます。そのため、ナトリウム封入バルブで排ガスの温度を下げ、ノッキングを低減し、排気バルブの破損を防ぐのです。
金属ナトリウムは非常に酸素と結びつきやすいものです。余談ですが、ワタシは、アルファロメオ・ジュリアの「ナトリウム封入バルブ」を不用意にも切断したことがあって、切ったとたんに白い粉が出てきました。これは、金属ナトリウムが一瞬にして酸化してしまったからなんですね。THさんは、けっしてマネしないでください。

松本 英雄
自動車テクノロジーライター。1992年~97年に当時のチームいすゞ(いすゞ自動車のワークスラリーチーム)テクニカル部門のアドバイザーとして、パリ・ダカール参加用車両の開発、製作にたずさわる。著書に『カー機能障害は治る』『通のツール箱』『クルマが長持ちする7つの習慣』(二玄社)がある。