「同じエンジンでも、駆動方式で出力に違いがあるのはなぜ?」

2012.04.21 クルマ生活Q&A 松本 英雄 エンジン

6気筒エンジン搭載車に乗りたいと思い、カタログを眺めていたところ、日産の「スカイライン」と「ティアナ」では、基本的に同じ2.5リッターのV6エンジンなのに、最高出力と最大トルクが異なることに気付きました。双方のもっとも大きな違いは駆動方式だと思うのですが、FRの「スカイライン」のほうがFFの「ティアナ」より出力とトルクが大きいのは、なにか理由があるのでしょうか。

双方の2.5リッターV6エンジンですが、「スカイライン」は「VQ25HR」、ティアナは「VQ25DE」を搭載しています。質問にあるように基本設計は同じですが、最高出力および最大トルクは、「スカイライン」用が225ps/6400rpm、26.3kgm/4800rpmであるのに対して、「ティアナ」用は185ps/6000rpm、23.7kgm/4400rpm。圧縮比を見ると「スカイライン」用は10.3で使用燃料は無鉛プレミアムガソリン、いっぽう「ティアナ」用は9.8でレギュラーガソリンですから、スカイライン用のほうが高くチューニングされています。

なぜこうした違いがあるのかというと、同じ排気量のエンジンを積んだセダン同士とはいえ、「スカイライン」と「ティアナ」ではキャラクターが異なるからです。「スカイライン」は伝統的に走りを重視しており、加えて先代(V35)からはプレミアムセダンと位置付けられています。いっぽう「ティアナ」は、より居住性や実用性に重きを置いています。それゆえに「スカイライン」は駆動方式にFRを、「ティアナ」はFFを採用しているのです。

一般的に、FRとFFでは、FRのほうが高負荷に耐えられます。つまり、高出力・大トルクを受けるのに適しているのです。また、トランスミッションの形式も両車では異なります。「スカイライン」はプラネタリーギア(遊星歯車)を使ったATで、「ティアナ」はベルトを使ったCVTですが、前者のほうがやはり高負荷に耐えられるのです。これらの違いは、FFやCVTといったメカニズムを採用した大排気量車や超高性能車が存在しないことを思えば、おわかりいただけるでしょう。
以上、長くなりましたが、スカイライン用エンジンのほうが出力もトルクも大きいのは、こうした理由によるものです。

松本 英雄

松本 英雄

自動車テクノロジーライター。1992年~97年に当時のチームいすゞ(いすゞ自動車のワークスラリーチーム)テクニカル部門のアドバイザーとして、パリ・ダカール参加用車両の開発、製作にたずさわる。著書に『カー機能障害は治る』『通のツール箱』『クルマが長持ちする7つの習慣』(二玄社)がある。