「スポーツマフラーは本当にいい?」
2001.05.05 クルマ生活Q&A その他「スポーツマフラーは本当にいい?」
スポーツマフラーに換えると抜けがよくなり回転が上がると言いますが、その反面、低回転域でのトルクが細くなるとも聞きます。 また、排気抵抗も重要だとも聞きます。メーカーがきちんとした設計にもとづいて装着したマフラーをむやみに交換するべきではないのでしょうか?(KMさん)
お答えします。たしかに交換すれば効果がでるとは一概には言えません。というのは、「抜け」がよくなりすぎると、爆発力が弱くなるからです。
エンジンのパワーは、空気の吸入量にかかっています。スムーズな吸入をして残留ガスを少なくし、効率よく排気することがパワーアップにつながります。マフラーを太くすると排出ガスが出やすくなるので、インテークバルブから空気がたくさん入り、エンジンが高回転まで回るようになります。これが一般的な考えかたです。
ところが、その反面、回転が低い領域では、排気効率がよくなると(慣性でひっぱる力が弱くなるので)排出ガスの流速が遅くなってしまいます。結果、エンジン内部の燃焼室に燃え残りのガスが溜まってしまいます。
残留ガスが多くなると、新しい空気がシリンダー内に入りにくくなり、混合気の量が減るので爆発力が弱まってしまいます。そのためトルクが出にくくなります。体感的には「力がない」という状態です。ドライバーはアクセルを多く踏み込むことで無駄にガソリンを消費することにもなりかねません。
原理的にはこのように長所と短所があるのですが、最近、純正オプションとして発売されている「スポーツマフラー」はよく考えられています。低回転域でのトルクが少々犠牲になりますが、高回転までスムーズに回ってくれます。選ぶ際には極端に太いものは避けるのが賢明かもしれません。

松本 英雄
自動車テクノロジーライター。1992年~97年に当時のチームいすゞ(いすゞ自動車のワークスラリーチーム)テクニカル部門のアドバイザーとして、パリ・ダカール参加用車両の開発、製作にたずさわる。著書に『カー機能障害は治る』『通のツール箱』『クルマが長持ちする7つの習慣』(二玄社)がある。