三菱ディオン TURBO NAVIパッケージ(4AT)【試乗記】
堅実な1台 2002.08.10 試乗記 ディオン TURBO NAVIパッケージ(4AT) ……228.0万円 三菱の5ナンバーミニバン「ディオン」のマイナーチェンジで追加された、1.8リッターターボを積む「ディオンターボ」。フェイスリフトに加え、パワーアップに合わせてボディ、足まわりが強化されたモデルに、webCG記者が試乗した。シャープな顔
三菱の、5ナンバー3列シートを持つミニバン「ディオン」。2000年1月29日のデビュー当初は、159.8万円からの低価格がウケて、2月の登録台数は3827台、3月は8803台と好調な滑り出しだった。しかし、「例の事件以来、売れ行きが激減しまして……」と語るエンジニア氏の顔は、暗い。実際、2001年7月の“例の事件”以来、販売台数は1000台弱/月と、大きく落ち込んだ。
なんとかお客を取り戻さねばということで、デビューから1年半を経た2002年6月7日、ディオンに初のマイナーチェンジが施された。黒一色のグリルで愛想に乏しかったフロントマスクは、グリルがボディ同色に、ヘッドランプはツリ目に変更され、シャープな顔になった。インテリアはグレードごとに、シートカラーとトリムがカラーコーディネートされた。
マイナーチェンジで新しく追加されたのが、1.8リッターターボを積む「ディオン TURBO」である。「ランサーセディアワゴン」で使われる1.8リッター直4DOHC16バルブターボを搭載し、ライバルと三菱のヒトが名指しするホンダ「ストリーム」の2リッター直4より11psと3.4kgmハイパワーな、165ps/5500rpmと22.4kgm/3500rpmのアウトプットを得た。リポーターは「ステップワゴン」こそライバルと思っていたが……。スリーダイヤモンドは最近、レディコミで人気の桜沢エリカさんの漫画を使った「ミセス ディオン」の広告を展開している。ストリームの名を挙げたのは、従来の「安さで勝負」路線から、女性をメインターゲットに据えた「ちょっと、オシャレ」路線に転じたいから、かもしれない。
マイナーチェンジでは、NAモデルには4段ATに替わり、CVT(無断変速機)が採用されたが、ターボは従来通りの4段AT。FFに加え、4WDもラインナップする。
神奈川県は箱根で開かれた試乗会と、その後広報車をお借りして、ディオンターボに試乗した。
ユーザーフレンドリー
テスト車は、DVDナビゲーション搭載の「ナビパッケージ」。ディオンターボは、ベーシックな「ターボ」と「ターボ ナビパッケージ」の2種類。後者には、なぜかディスチャージヘッドランプがオプションに含まれるのに加え、AM/FMラジオ付きMDプレーヤーが備わる。ただ、ナビゲーションはセンターコンソールに装着されるため、小物入れが減ってしまうのが難点。手近に財布などを入れるスペースが見あたらず、ハンドル右側のフタを開けたらヒューズボックスだった……。
ターボのインテリアは、オフブラック基調の落ち着いたたたずまい。シート中央にブルーのファブリックでアクセントを加え、スポーティを演出する。センターパネルやステアリングホイールには、ダークブルーの木目調パネルを採用した。ちなみに、NAのベーシックグレード「VIE」はグレーで統一。ターボと価格が同じ上級モデル「エクシード」は、木目調パネルを使う、ゴージャスなブラウン系のインテリアとなる。
高めのシートに座ると、あたりまえだが視界良好。ボンネットの両端が目に入るのは、取りまわしの気遣いを軽減するのでうれしい。サイドミラーに映るショルダーラインが真っ直ぐだから、駐車場で枠線に合わせるのもラクチン。「気負わず乗れることも、コンセプトです」というエンジニア氏のコトバ通り、ユーザーフレンドリーなつくりである。
シートは、3列目の折り畳み機構がイイ。ヘッドレストとアームレストを外して背もたれを前に倒し、そのままシート全体を後ろへひっくり返すと、荷室の深みにすっぽり収まる。平らなラゲッジスペースができあがるのだ。「7人乗り」に現実味の沸かない独身リポーターの意見で恐縮ですが、常に満員で走るわけじゃないから、普段は5人乗りワゴンとして使うこともできて、便利だと思う。
228.0万円と199.8万円
1人乗りの空荷で走ると、ディオンターボは速い。撮影でロケ地まで移動中、4リッターW8エンジンを積むフォルクスワーゲン「パサートW8」(275ps/6000rpm、37.7kgm/2750rpm)を、肩肘張らずに追走できるくらい速い。まあ競争してるワケじゃないからですが。2000rpmもまわせば力強いトルクが感じられ、多人数乗車時の実用性も高そうだ。
ターボエンジン搭載に伴って、特にサスペンションの取り付け部など、ボディ剛性が強化された。足まわりは、サスペンションのダンピング最適化、リアスタビライザーのサイズを拡大し、ロールを抑える設定に変更されている。乗り心地はやや硬めだが、フラットで安心して乗っていられるもの。高速道路で横風を受けても、しっかりしたハンドリンと合わせて、フラフラするようなことがない。
ディオンターボは、ナビパッケージだと車両本体価格228.0万円だが、ノーマルだと200万円を切る199.8万円。ライバルのストリームの2リッター廉価モデル「iL」は、189.8万円だが、上述したようにパワーもトルクもディオンの勝ち。多人数乗車もアリのミニバンは、トルクに余裕がある方がいい。ボディ強化などハードウェアも熟成され、5ナンバーミニバンとしてかなり堅実な1台じゃないでしょうか。
(文=webCGオオサワ/写真=清水健太/2002年8月)

大澤 俊博
-
BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ(FR/8AT)【試乗記】 2025.10.20 「BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ」と聞いて「ほほう」と思われた方はかなりのカーマニアに違いない。その正体は「5シリーズ セダン」のロングホイールベースモデル。ニッチなこと極まりない商品なのだ。期待と不安の両方を胸にドライブした。
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
NEW
開幕まで1週間! ジャパンモビリティショー2025の歩き方
2025.10.22デイリーコラム「ジャパンモビリティショー2025」の開幕が間近に迫っている。広大な会場にたくさんの展示物が並んでいるため、「見逃しがあったら……」と、今から夜も眠れない日々をお過ごしの方もおられるに違いない。ずばりショーの見どころをお伝えしよう。 -
NEW
レクサスLM500h“エグゼクティブ”(4WD/6AT)【試乗記】
2025.10.22試乗記レクサスの高級ミニバン「LM」が2代目への代替わりから2年を待たずしてマイナーチェンジを敢行。メニューの数自体は控えめながら、その乗り味には着実な進化の跡が感じられる。4人乗り仕様“エグゼクティブ”の仕上がりを報告する。 -
NEW
第88回:「ホンダ・プレリュード」を再考する(前編) ―スペシャリティークーペのホントの価値ってなんだ?―
2025.10.22カーデザイン曼荼羅いよいよ販売が開始されたホンダのスペシャリティークーペ「プレリュード」。コンセプトモデルの頃から反転したようにも思える世間の評価の理由とは? クルマ好きはスペシャリティークーペになにを求めているのか? カーデザインの専門家と考えた。 -
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。