トヨタ・アルテッツァRS200 Zエディション(6MT)【ブリーフテスト】
トヨタ・アルテッツァRS200 Zエディション(6MT) 2001.06.14 試乗記 ……315.2万円 総合評価……★★悲しい現状
1998年10月に、国産久々の“小型FRスポーツセダン”として鳴り物入りのデビューを果たしたアルテッツァ。話題騒然だった発売当初から比べると、このところ販売成績も一段落気味。というわけで、再び話題、商品性を高めるべくカンフル剤が打たれた。
今度のマイナーチェンジのメインメニューは、一部装備のさらなる充実や、インテリア質感の向上、そして“ホッテストバージョン”である「RS200」6MT仕様のファイナルギアレシオの変更など。具体的には、ディスチャージ式ヘッドランプのオプション新設定やクロノグラフメーターの配置変更、柔らかな質感の“ソフトフィール塗装”を施したダッシュボードの新採用。最終減速比は、4.100から4.300にローギアード化された。
当初から希望の多かった駆動ギア比の見直しを今ごろになって行なった理由は、「加速騒音試験への合致を考慮して決定した初期モデルのギア比が、後になってもう1ランク落としても基準をクリア出来ることがわかったため」とのこと。ただし、2速と3速間が離れ気味で、せっかくの6段MTの良さを生かしきれない……というウイークポイントは、結局そのまま。
これは、RS200の販売台数が限られるため、欧米輸出仕様であるレクサスIS200のギアボックスを、国内専用車たる4気筒モデルも使用せざるをえない、という悲しい現状ゆえである。つまり、日本ではサードで走行音の測定をするが、ヨーロッパの加速騒音試験ではセカンドとサードポジションの合計値の平均を採用するために、これ以上3速をローギアード化して2速に接近させると、今度は欧州基準が通過できないのだ。ちなみに、4.3000のファイナルギアは、AT車で使われていたものだ。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1998年8月に、FRスポーツセダンとしてデビュー。国内では、同じ2リッターながら、直4と直6のエンジンが用意される。組み合わされるトランスミッションは、MTはどちらも6MT、オートマチックは、前者が5AT、後者が4ATである。直4モデルの方がスポーティで、(なぜか)上級モデル扱いとなる。欧米のレクサスブランドでは、IS200、IS300として、2、3リッターの直6モデルがラインナップされる。
(グレード概要)
RS200には、ベーシックグレードほか、エアログリル、フォグランプ、オーディオを充実するなどした「Zエディション」、さらにパワーシートを備え、本革仕様も選べる「Lエディション」がある。価格はそれぞれ、243.0万円、253.0万円、277.0万円。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
「プレミアムセダン」を謳うわりに安っぽかったダッシュボードまわりの質感は、前述の新塗装が施されたことでかなり向上した。RS200の6MT車専用クロノグラフメーターは、センターが速度計からタコメーターに変更された。メカニカルな雰囲気が強く好印象。なんで最初からこうしなかったの?
(前席)……★★★
側面衝突時の頭部への衝撃を緩和させる「カーテンシールド・エアバッグ」をLエディションに標準装備、テスト車のZエディションとベーシックグレードは、7.0万円のオプション設定となる。ちなみに輸出仕様車には全車標準装備だ。欧米でのトヨタ高級販売チャンネル「レクサス」のブランドを冠するための配慮である。
(後席)……★★★
全車の両外側席に、ISOFIX対応チャイルドシート固定用のキャッチを内蔵したのがマイナーチェンジでのニュース。後席乗員用のカーテンシールド・エアバッグの設定は、まだ行なわれていない。
(荷室)……★★★
燃料タンクを床下配置としたことで、FR車としては外観から想像できる以上の容量を確保。トランクスルー機能はセンターのアームレスト部分のみが室内へと貫通できる、いわゆる“スキーバッグタイプ”を採用する。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★
RS200のマニュアル車では、ファイナル比のローギアード化により従来型よりも多少活発な加速感が得られるようになった。ただし、フライホイールダンパーが“悪さ”をして、エンジンの回転落ちが鈍いのが気になるところ。セカンドからサードへのステップ比が大きいなど、基本的な弱点は、依然としてそのままだ。2リッター「3S-G型」ユニットは、もはや「過去のエンジン」の感が強い。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
一時期アルテッツァには、「より強力なエンジン」「よりハードな脚」を奢った“Rバージョン”追加の噂があった。結局それは立ち消えになったようだが、RS200 6MT車には今回、そうした思想を受け継いだ専用チューンの脚が採用された。開発陣は乗り心地の悪化を心配するが、幸い快適性はさほど損なわれていない。そのうえでハンドリングはよりソリッド感を増した。大きな差ではないが、スポーツ派には「より好まれそうな仕様」といっていい。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:河村康彦(テストデータはwebCG)
テスト日:2001年6月11日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:1023km
タイヤ:(前)215/45ZR17/(後)同じ(いずれもブリヂストン Potenza RE040)
オプション装備:LEDハイマウントストップランプ付きリアスポイラー(3.0万円)/ディスチャージヘッドランプ+ヘッドランプクリーナー(9.7万円)/DVDナビゲーションシステム+CDオートチェンジャー+MDプレーヤー+8スピーカー+ラジオ(42.5万円)/アサイド&カーテンエアバッグ(7.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(6):山岳路(2)
テスト距離:292.5km
使用燃料:43.9リッター
参考燃費:6.7km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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