トヨタ・プレミオ1.8X EXパッケージ(4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・プレミオ1.8X EXパッケージ(4AT) 2002.05.16 試乗記 ……234.4万円 総合評価……★★★無印良品的
歴史と伝統ある「コロナ」の名をついに捨て、サブネームから独立した名前に昇格した「プレミオ」。日本市場のみをターゲットとしたセダンということで、ボディサイズも5ナンバー枠に納められた。4.6mの全長は従来の“コロナプレミオ”と同寸。ただし時代を反映して(?)全高は一挙に60mmもアップした。
カタログスペック上でもう一箇所目だつのが、2700mmと従来より120mmも延長されたホイールベース。実はコロナプレミオのホイールベースは、現行カローラよりも短かったのだ。今回のパッケージング見直しにより、ようやく「カローラの兄貴分」としてふさわしいシャシーを得た。双子モデルであるアリオンとは、エンジンフード、トランクリッド、フロントフェンダー、リアドア……と多くのアウターパネルを別デザインとしている。とはいえ、パッと見の印象で、両者はさほど異なっているとは思えない。「異なる販売チャンネルでセールスを行うために必要な方策」とトヨタでは言うが、こうした戦略はこれからも本当に不可欠なのだろうか?
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
プレミオ/アリオンは、2001年12月25日から販売が開始されたトヨタのミディアムセダン。プレミオはコロナ、アリオンはカリーナの後継モデルとなる。ターゲットがやや若いアリオンは、ドアハンドルやグリルはボディ同色。対するプレミオは、メッキ調の“光りモノ”を使用する。5ナンバー枠内のサイズながら、長いホイールベースによる広いキャビンと豊富なシートアレンジを実現。特にリアシートは、荷室との隔壁をなくすことで、背もたれを大きく後にリクライニングできるようになった。エンジンは、いずれも1.5、1.8、2リッターの3種類。FFのほか、1.8リッターモデルには4WDも用意される。
(グレード概要)
プレミオは排気量によって小さい順に「F」「X」「G」と分けられ、1.8X“EXパッケージ”は、1.8リッターの最上級モデル。EXパッケージは、2リッターと1.8リッターモデルに用意される“豪華版”。アルミホイールが標準となり、トリム、シート地が、ファブリックながらより滑らかなエクセーヌ調となる。空気清浄器たる「エアピュリファイヤー」が天井にビルトインされるのも、EXパッケージならではだ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
外観部分ではオリジナリティ演出のため、多くの個所で異なるデザインを採用するプレミオとアリオンだが、インテリアは基本的に共通。ダッシュボードまわりの質感は不満のないレベル。全グレードにわたって木目調パネルを随所に用いるほか、グローブBOX内部にまで植毛を施すなど、お父さんの高級感をくすぐる作戦が巧みだ。
(前席)……★★
従来のコロナプレミオと全長/全幅を一にする新型プレミオだが、全高だけは60mmアップ。合わせてヒップポイントを45mm高めたことで着座姿勢はグンとアップライトに変わった。要するに「大きな現行カローラ」的パッケージングを採り入れた。Aピラーの死角が少なくワイパーも視野に入らないので視界は良好。「周囲がよく見えない」ミニバンから乗り換えると、セダンの良さを再認識させられる。
(後席)……★★★★
ワゴン顔負けの多彩なシートアレンジがプレミオ/アリオンの大きな売り物。けれども、ユーティリティ性が高いだけが特徴というわけではない。基本的な後席居住性が極めて高いのも、このクルマの大きなウリ。なかでも見逃せないのが、ロングホイールベース化によって実現された、ゆとりのレッグスペース。最大20度までリクライニング可能なシートバックも、このクラスのセダンの常識を超えた装備と言える。
(荷室)……★★★★
外板プレスの成型形状がアリオンとは微妙に異なるトランク部分だが、機能はもちろん同一。VDA法で462リッターという容量も同じ。リアシートはクッション、シートバック共に、全グレード6:4での分割機構が与えられ、ステーションワゴンに迫るユーティリティの高さがジマン。ちょっと残念なのは三角状に張り出したホイール/サスペンションハウス。どうせデッドスペースになるなら、四角く成型した方がより扱いやすかったかも。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
シリーズの中堅どころである1.8リッター車に搭載される1ZZ-FE型エンジンは、現行セリカと共にデビューした新世代の直4ユニット。軽量/コンパクトが特徴のこの心臓、今回さらにブラッシュアップ。1.5リッターと共にいわゆる“超”低排出ガスの基準をパスした(平成12年基準排出ガス75%低減レベル)。量販モデルでの実現だけに高い評価に値する。一方、トランスミッションはごく一般的な4段ATに“据え置き”。このクラスに5段ATを求めるのは贅沢に過ぎるのだろうか?
(乗り心地+ハンドリング)……★★
プレミオのフットワークテイストも、アリオン同様極めて“無印良品”的な印象だ。ことさらにケチを付けたくなる部分がないかわりに、これといって感動するような部分も見当たらない。ただし、路面によっては予想していたよりも上下Gを強めに感じた。燃費を意識する高めのタイヤ空気圧が、影響を及ぼしているのかもしれない。ボコボコとした低周波ノイズがセダンとしてはやや強めなのは、このクルマがワゴン風の多彩なシートアレンジを売り物としていることに影響がありそう。リアシートとトランク間の開口部が、大きな“共鳴箱”を形成するためと想像できる。
(写真=トヨタ自動車広報写真)
【テストデータ】
報告者:河村康彦
テスト日:2002年1月10日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:--km
タイヤ:(前)195/65/R15 91S(後)同じ
オプション装備:2灯式マルチリフレクターディスチャージヘッドランプ(4.5万円)/DVDボイスナビ付きワイドマルチAVステーション&バックガイドモニター&TVアンテナ(29.9万円)/音声案内クリアランスソナー(4.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(6):高速道路(2):山岳路(2)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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